運命とは強く儚くて

文字の大きさ
上 下
92 / 154
テオとカレル

1

しおりを挟む


「…起きるか…」

早朝、いつも通りにカレルを起こさないよう起床し朝練へと向かう。

手早く身支度を整えて寝室を出ると既にジュダが待っていた。

自分は幼い頃からの鍛錬もあって早起きが染み付いているが、ジュダもこれまでとは。

確かに早めに寝させてはいるが…と本人に聞いてみた所、「元からすぐ起きてしまう」らしい。
ジュダの過ごしていたところはスラムの中でも荒くれ者が多い地区だったというし、仕方がないのかもしれない。

「ジュダ、おはよう」

「…おはよう」

教えた通りに髪を整え、着替えてきただろうジュダを撫で、手を繋いで部屋を出る。
途中、厨房でパンをもらって2人で食べながら鍛錬場へ向かった。

「よう、ジュダ坊」

「おはようさん」

ジュダは近衛隊の男達から可愛がられている。
きゃっきゃと子供らしくはしゃいだりはせず、人見知りが激しいジュダだが、一生懸命ついてきたり才能を見越して気に入られたのだろう。
それに、慣れれば可愛いものなのだ。

「じゃあジュダ、無理はダメだよ。着いてこられる範囲でおいで」

「…はい…!」

外周を始めた隊員に混じって自分も走る。
このコースを走って何年になるだろう、最初こそ少しキツいと思っていたが父の訓練に比べれば楽だったし今となってはあまり苦に思わない。

…たが若い陽者には適わないとつくづく思う。
あまり隠者陽者と言いたくは無いが、体のつくりが根本から違うのと、やはり若さには勝てないと思う。

走っている最中、横を見ると外周を囲む森の高い木からジュダがこちらを見ていた。
あの子はよくあそこにいてこちらを観察する。

すると次の周回では隣のコースを走っていたりする。体が小さいからか長くは追いつけないがフォームは悪くない、身軽で足の回転も速い。

将来有望だ。


走りが終わり、暑くなって皆上裸になったりしている。
自分も上裸になっていた時期があったが、カレルに止められた。正直、ほかの隠者のように柔らかいわけでもない。むしろ筋肉がある方だと思う。やたら傷も多いから心配する意味は分からない。

「テォ…は、母上…どうぞ」

「ありがとう、ジュダも飲んだ?」

水の入った入れ物を手渡してくれるジュダの頭を撫でてくすぐったい呼び名に口角が上がる。

テオとカレルではなく父上と母上と呼ばせるようにして数日、少しづつ慣れてきてくれた。
俺もカレルも名前で構わないのだが、立場上こういった呼び名でお互い慣れておかないと困る。

仕方ないっちゃ仕方ない。

「今から皆は筋トレするけど、ジュダはあんまりしないこと、いいね?…隣においで、見てるから」

まだ3つだというのに過度に負荷をかけると成長が止まる。
負荷をかけるのは10代半ばからだ。それまでは様子見で技術を磨くのが良いと思う。

ジュダが隣で柔軟と簡単な鍛錬をしているのを見守りながら自分は筋力のトレーニングを行う。

ジュダには無理なく体幹を鍛える為に、片足水平立ちを目を瞑ってさせてたり、飛び上がる練習など、身軽な今だからこそ身につけられるものばかりだ。

それが終われば剣術稽古。
近衛隊の見習いたちの指導をしつつ、ジュダのナイフね 捌きを見る。

他の隊員達も快く相手をしてくれるので助かっているし、ジュダにもいい刺激になるだろう。





「お腹すいたね」

「うん」

すっかり太陽も登りきり、火照った体を蒸しタオルで拭きながら部屋に戻るとカレルが朝食の支度をしていた。

「2人ともおかえり。…朝ごはんにしようか」

ジュダと2人で空腹を埋めるべくいち早く席に着いた、
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

処理中です...