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テオとカレル
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しおりを挟む「…起きるか…」
早朝、いつも通りにカレルを起こさないよう起床し朝練へと向かう。
手早く身支度を整えて寝室を出ると既にジュダが待っていた。
自分は幼い頃からの鍛錬もあって早起きが染み付いているが、ジュダもこれまでとは。
確かに早めに寝させてはいるが…と本人に聞いてみた所、「元からすぐ起きてしまう」らしい。
ジュダの過ごしていたところはスラムの中でも荒くれ者が多い地区だったというし、仕方がないのかもしれない。
「ジュダ、おはよう」
「…おはよう」
教えた通りに髪を整え、着替えてきただろうジュダを撫で、手を繋いで部屋を出る。
途中、厨房でパンをもらって2人で食べながら鍛錬場へ向かった。
「よう、ジュダ坊」
「おはようさん」
ジュダは近衛隊の男達から可愛がられている。
きゃっきゃと子供らしくはしゃいだりはせず、人見知りが激しいジュダだが、一生懸命ついてきたり才能を見越して気に入られたのだろう。
それに、慣れれば可愛いものなのだ。
「じゃあジュダ、無理はダメだよ。着いてこられる範囲でおいで」
「…はい…!」
外周を始めた隊員に混じって自分も走る。
このコースを走って何年になるだろう、最初こそ少しキツいと思っていたが父の訓練に比べれば楽だったし今となってはあまり苦に思わない。
…たが若い陽者には適わないとつくづく思う。
あまり隠者陽者と言いたくは無いが、体のつくりが根本から違うのと、やはり若さには勝てないと思う。
走っている最中、横を見ると外周を囲む森の高い木からジュダがこちらを見ていた。
あの子はよくあそこにいてこちらを観察する。
すると次の周回では隣のコースを走っていたりする。体が小さいからか長くは追いつけないがフォームは悪くない、身軽で足の回転も速い。
将来有望だ。
走りが終わり、暑くなって皆上裸になったりしている。
自分も上裸になっていた時期があったが、カレルに止められた。正直、ほかの隠者のように柔らかいわけでもない。むしろ筋肉がある方だと思う。やたら傷も多いから心配する意味は分からない。
「テォ…は、母上…どうぞ」
「ありがとう、ジュダも飲んだ?」
水の入った入れ物を手渡してくれるジュダの頭を撫でてくすぐったい呼び名に口角が上がる。
テオとカレルではなく父上と母上と呼ばせるようにして数日、少しづつ慣れてきてくれた。
俺もカレルも名前で構わないのだが、立場上こういった呼び名でお互い慣れておかないと困る。
仕方ないっちゃ仕方ない。
「今から皆は筋トレするけど、ジュダはあんまりしないこと、いいね?…隣においで、見てるから」
まだ3つだというのに過度に負荷をかけると成長が止まる。
負荷をかけるのは10代半ばからだ。それまでは様子見で技術を磨くのが良いと思う。
ジュダが隣で柔軟と簡単な鍛錬をしているのを見守りながら自分は筋力のトレーニングを行う。
ジュダには無理なく体幹を鍛える為に、片足水平立ちを目を瞑ってさせてたり、飛び上がる練習など、身軽な今だからこそ身につけられるものばかりだ。
それが終われば剣術稽古。
近衛隊の見習いたちの指導をしつつ、ジュダのナイフね 捌きを見る。
他の隊員達も快く相手をしてくれるので助かっているし、ジュダにもいい刺激になるだろう。
「お腹すいたね」
「うん」
すっかり太陽も登りきり、火照った体を蒸しタオルで拭きながら部屋に戻るとカレルが朝食の支度をしていた。
「2人ともおかえり。…朝ごはんにしようか」
ジュダと2人で空腹を埋めるべくいち早く席に着いた、
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