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テオとカレル
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しおりを挟む「ジュダ、大事な話」
夜、焚き火を囲んで星空を眺めている中、頃合いを見てカレルが切り出す。
なんだろう、というようにぴんと背筋を伸ばして真剣な面持ちのジュダと目を合わせて彼が言葉を続けた。
「大事な事だからもう一度聞きたいんだ。…ジュダは、城で暮らしたいかい?…私やテオを家族と思いたい?」
「うん」
金色の瞳が真っ直ぐカレルと俺を捉えてしっかりと頷く。
「…俺とカレルもジュダを愛してる、けどもしかしたら沢山仕事を優先するかもしれない。一緒にいられない日もあるかもしれない…それでもいい?」
本当ならどちらかが仕事を減らしてまだ幼いジュダとしっかり向き合うべきなのかもしれない。
けれど俺たちは責務を全うしたい。
我儘だけれど、ジュダを大切にしていることには変わりないということを伝えるとジュダが小さく頷く。
「…かえってくる?…」
その言葉に直ぐに頷けない。近衛隊よりも命懸けの仕事は減ったとはいえ、エディ様や皇帝、デニス様の身代わりになることもあるかもしれない。
もちろん、死にたくはない。…ジュダとカレルを残していきたくはない。
「もちろん、テオは強いからどれだけ遅くなっても必ずジュダの元に帰ってくるよ」
言葉選びに困っていると優しく肩を叩いてくれたカレルが代わりにそんなことを言ってくれる。
「…ちゃんとまってる…たんれんと…べんきょ…してまってる」
…がんばる、から…と小さな手を握りしめながら訴えかけるジュダを思わず抱きしめる。
「ジュダ、大好き」
小さくて頼りないけれど、ポカポカと温かいジュダの体を抱きしめると小さな腕で抱き締め返してくれて、その上からカレルが包み込んでくれる。
温かい。
「…生きて帰る理由ができたね」
「そうだね。…私はいつだって君には生きて帰って欲しいよ」
「それはそうだけど」
小屋の狭いベッドで、真ん中ですやすや眠るジュダを見ながら2人、そんなことを話す。
「…ある意味、カレルが母上って呼ばれた方が良いかもね」
「そうかな?…どうしてだい?」
苦笑しながらジュダの布団をかけ直したカレルの手つきを指さす。
「それ。…俺は母親が早くにいなかったからよく分からないけど、何となく母親ってそんな感じかなって。」
「なるほど。…私はどちらでも良いと思うよ、両方父でも母でも。…いや、それだとどちらがどちらか分からないな」
「名前はだめなの?」
「身内間ではいいけれど、立場も立場だから良いふうに思わない人もいるかもしれない。…特にジュダは元貧民街の孤児だ。それをつつかれてしまうとジュダが辛いだろう」
「確かに…頭の硬い連中が山ほどいるのも確かだからね。…ジュダには引き出しを沢山作ってあげたいんだ。俺は武術や馬術くらいしか教えてあげられないけど…この子が望むなら何でもやらせてあげたい」
「私達と同じように、デニス様の近くに使えることにのるだろう。今は遊び相手として、お目付け役として、将来は近侍として。その為に武術は必須だろう。私も教養や学問くらいだからね…私が持っている知識はこの子が望むのなら全て与えてあげたいよ」
「そうだね…」
3人でぎゅっとまとまっているからか、ジュダが子供体温で温かいからか段々とウトウトしてしまう。
「おやすみ」
額にキスを落とされ、カレルが微笑む。
ほら、やっぱり母だ。なんて思って目を閉じた。
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