87 / 154
テオとカレル
2
しおりを挟む「うま…」
「大丈夫、俺の相棒だからね…怖がっていると馬も不安になるんだよ」
テオにそう言われるとシャキッと背筋を直して愛馬であるトニトの首を撫でるジュダ。
艶やかな黒い毛並のトニトはテオの相棒だ。
歳を感じさせないスピードに利口さを併せ持ついい馬とテオ自身も誇りに思っている。
自分の馬に荷物を乗せながら2人の様子を見守る。
これ程子供を愛しいと思うことが来るとは、自分でも驚いている。
何より驚いているのがテオの適応度だ。
ジュダはかなりの人間不信だったはずなのにテオにだけは直ぐに懐いた。
自分もジュダの懐き具合が早いと言われるが、テオは段違いだ。
相性が良かったのだろう。
それにしても、仕事を終え、疲れて部屋に戻った先でジュダに「おかえりなさい」と言われると疲れが吹き飛ぶ。
一昨日の夕食時、ジュダに一緒に暮らしたいと聞いた。
ジュダは暮らしたい、と答えたが彼が眠った後にテオと話し合った結果、最終日である今日が終わったらもう一度聞こうということになった。
ジュダはテオと共に、3人で森へと馬を進める。
興味津々で周りを見渡すジュダと話したり途中、馬を降りて無視を捕まえてみたり小動物を見たりとごく普通の家族のように過ごした。
「少し早いけど夕食にしよう」
テオと自分が狩の時によく来る小屋に到着し、3人で食事の用意を始める。
せっかくだからと小屋の外で火を起こし、スープを作ることにした。
煮込んでいる間、子供のようにジュダと一緒になって木登りをするテオ。
…まったく、と笑いながら2人を見上げる。
こう見ると2人は本当に似た者同士かもしれない。
ジュダは勉強熱心だ、与えた本でも分からないところを調べて読んだり、1度覚えれば応用がきくことも。
頭の回転が早い、テオも「ジュダは適応力というか、咄嗟の機転を利かすのが上手い」と言っていた。
ジュダが強請って始まった鍛錬を観察しながら鍋をかき混ぜる。
偽物の木製ナイフを持って型を練習したり、テオと実際に組み合ってみたり。
当たり前ではあるが、テオにはまったく歯が立たないものの、上手く受け身をとったり、小柄を活かしてしゃがみ込んだりと動きが凄まじい。
「2人とも、食事が出来たよ」
「はーい、はいここまで。」
軽い動きであっという間にジュダのナイフを取り上げてしまったテオ。
見事だ、と自分の事のように自慢げに思ってしまう。
むしゃむしゃとスープとパンを夢中で食べるジュダと美味しそうに木の実を齧るテオ。
2人とも限りなく愛しい存在だ。
そんなことを思ってぼーっとしているとテオにパンを口に突っ込まれた。
0
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭


初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる