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テオとカレル
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しおりを挟む「久しぶりだな…」
次の日の夕方、エディ様に頼んで街に出させてもらった。
夕時で賑わう市場を馬を引きながら歩き、物色する。
まずは古着屋で、元は高級品だっただろう服を買う。古着とはいっても、管理がよく新品とまではいかないがなかなか上物の子供服だ。
動きやすそうで、きっちりしていない。靴も動きやすく、柔らかいものを選んだ。
日曜品は自分で持ってくるだろうし、元々宮廷にあるもので何とかなるだろう。
文具店に向かう途中、思わず駄菓子の露店に立ち寄っていると声をかけられる。
「おい!テオじゃないか」
「ライア、あんたもいたのか」
近衛隊で同期だったライアだ。
2つ年上だが、近衛隊の中では歳が近く、初めから隠者扱いをしてこなかったこともあって今でも仲がいい。
近衛隊らしく、体格のしっかりした長身のライアは私服姿だ。
「恋人にでも会いに来たのか?」
「ばっか、そんなんじゃねぇよ。…そうだって言いてぇけどな!俺も恋人欲しい」
「近衛隊はモテるだろ?…侍女とか、狙えないの?」
駄菓子の代金を払いながらそう尋ねると「そうでもないんだよなぁ」と腕を組む。
近衛隊は出世頭でもあるし、ある程度頑張れば普通の兵士より格段に給与も良いし待遇も世間体も悪くない。
モテるはずだ。
「いやな、俺だってデートとかまでは行けるんだけどよ…女の気持ちってわかんねぇよ」
「なるほど」
幼い頃から鍛錬やなんかで走り回っていたら女の子の扱いなんて分からないよな、なんて少し同情する。
俺だって分からない。
男兄弟だったし、隠者だからとか言われるけれど一向に女心は分からない。
「今日は酒買いに来たんだよ、あと剣研いでもらおうかなって。…お前は?それ子供服だろ?…おい、もしかしておめでたか?!」
「違うって、孤児院から引き取ろうかなって話してるだけ」
事情を説明すると感心したようにライアが頷く。
「いやぁ…あの冷血天才剣士と冷酷側近殿がなぁ…いい事だよ全く」
うんうん、と言い続けるライアの脇腹を軽く殴る。
「カレルはともかく、俺はそんなんじゃなかったよ」
「いーや、みんなに聞いてみろ」
その後、昔話に花を咲かせながら文具店に行き、酒を買って帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい。…買い物ありがとうございます」
部屋に戻ると案の定、仕事を持ち帰ったきたカレルが書き物をしていた。
手を止めて2人で荷解きをしながら今日の出来事をお互いに話す。
もうすぐ2人とも皇帝たちの食事の為にまた行かねばならない。
その後は各々の勤めもある。
「…そういえば明日、昼からは開けてもらった。エディさんにも話は通して頂いたから2人でジュダを迎えに行こう」
「ありがとう、…うん、じゃあ馬用意しとく」
別れ際、「また夜に」と軽くキスを交わして勤めへ向かう時やふとした時に浮かぶのは明日のことだけであった。
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