運命とは強く儚くて

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「良い兆しが出ております。ですが確信、とまでは行きません。万が一のことがあればいけませんのでお気をつけてお過ごしください」

「ありがとうございます…何か避けた方がいい事はありますか?」

「避けたい食物、行動等はこちらにまとめてありますのでご一読下さい。…それよりも」

午後、辞意の検診を受けると体の反応が良い兆しを見せていると診断された。
…できてるといいな、とお腹をそっと擦りながら侍医が渡してくれた書物をテオが受け取ると侍医が真剣な表情で声を抑える。

「…ご懐妊の可能性があることは、あまり知られない方が良いかと。地位を横取りしようと企んでいる者は、少しでも妨げになるものは排除しようと考えるでしょう。
…繊細なお体です、小さなことでも最悪の事態に繋がることもあります。」

「わかりました、気をつけます」

ただ自分たちの問題、という訳にも行かないのだなということを実感する。
デニスだって命を狙われる可能性がある。

侍医が皇帝に報告へ下がった後、デニスとジュダの様子を見ようと中庭へ歩きながらテオと今後について話す。

「…お食事は体調面を考えて、ということで個別で古株の少数の者作らせましょう。…身の回りの事は俺が気をつけます、もう1人暗躍が得意な近衛隊の者に周りを張らせるのも手でしょう。カレルに相談します」  

「ありがとう」

テオ今は自分達の事で精一杯だろうにこうして手をかけてくれる。
何かお礼がしたいというのはお節介だろうか。

「おかあさま!」

「デニス、楽しく遊んでる?」

こちらを見つけて走ってきたデニスに合わせてしゃがみ込み、頭を撫でてやる。
ずいぶんはしゃいでいたのだろうか、楽しそうな雰囲気が全身から溢れている。

「うん!…ジュダすごいんだよ、あしもすっごくはやい!それにいろんなこともおしえてくれて」

一生懸命興奮しながら伝えてくれるデニスの話を聞いているといつの間にかジュダがテオの前にいた。

「遊んでくれてありがとうね、デニスが困らせなかった?」

「…だいじょうぶ…です。…おれも…たのしかった…です」

もじもじと慣れない様子で話してくれるジュダの頭を撫でてやると少し嬉しそうだ。
たが、その後テオに頭をぐしゃぐしゃと撫でられて褒められた時の嬉しそうな笑顔には適わなかった。

本当にテオが大好きなんだろう。


「ジュダにね!たいじゅちゅ…?教えてもらった!」

「体術…?」

「申し訳ありません…俺がジュダに教えて…」

「いいんだよ、喜んでる。…あのね、少しでいいからデニスにも体術とか身を守る術を教えて欲しいんだ」

そんなお願いをするとテオが少し驚いたよう一瞬目を見開くと「わかりました」と直ぐにいつも通りの表情で頷いた。

「…今からは勉強?」

「うん!」

いこう!とジュダを引き連れて勉強室へ走って行った2人を見送りながらテオの方をちらりと見ると、幸せそうに微笑んでいた。

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