運命とは強く儚くて

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Ⅱ -10 ここから男性妊娠表現有

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「そんなに心配しなくても良いんですよ?」

「そうか?…俺がのに理由は必要ないとおもうが」

馬車を降りる時も手を取り腰を支える皇帝にそんなことを言われる。
あくまで自分に、と言ってくれるのは彼の優しさだ。

「カレル、テオ。…俺達は家族水入らずで過ごす、お前達も好きに動け」

「かしこまりました。…何かありましたらお呼びください。」

頭を下げた2人が教会兼孤児院の所長である神父に声をかけに行った。
…上手くいくといいな、なんて2人の後ろ姿を眺める。

「俺達はどうしようか」

「デニス、今からは何するの?」

「おべんきょう!おわったらおそとで遊ぶ!」

「では中に入ろうか、デニス、エスコートを頼めるか?」

「はぁい、こちらへどーじょ」

腕を前に曲げてぺこりと頭を下げてエスコートしてくれるデニスについて行く。
教会での勉強とは別に宮廷でも最低限のマナー、特に自分達ではなかなか教えられないことを学んでいる。

最近ではエスコートやダンスを習ったのだろう。
なぜなら近々、デニスのお披露目会が催されるからだ。
新皇太子として、属国長や各地の領主など、様々な人が訪れる。
そんな場に自分が立つのも実はあまり無かったのでしっかりとした式典には初めてだ。
皇帝もそういった場を避けてくれたのだろう、これは彼の為にも頑張らなくてはならない。

やってきたのは教会の講堂と隣接している棟の広間。壁には数字や文字の表、黒板などがある。
みんな大きな机に座って思い思いに勉強しているらしい。

アッシアに聞いたところ、それぞれにその日の課題があって、どれから手を付けても良し、分からないことがあればその都度聞きに行くという仕組みらしい。

隣の部屋を覗くと本が沢山。
ここにあるのは国民の寄付から集まった本達、どれも綺麗とはいえないが子供たちは大切に読んでいる。

「…凄いですね。僕も難しい読み書きは苦手なんです、だからこうして教育を受けられる場があるのは素晴らしいことですね」

「そうだな。…お前のおかげだ」

頭を撫でて、相変わらず離れさせてはくれない彼に「静かに、ですよ」と念を押しながら集中している子供たちを見守る。

みんな難しいそうにペンを走らせていたり、険しい顔で本を読み込んでいるが表情はイキイキしている。

できることが多ければ多いほど、引き取り手は見つかりやすくなるし、ここから独り立ちしてもいい仕事に就ける。

端のベンチに座っているとデニスと同じ位の子がこちらへ不思議そうな表情で寄ってくる。

「どうしたの?」

「…ちっちゃい…かぁいいね」

「?…かわいい?…ありがとう」

その子はそれだけ言って机へ戻ってしまった。

「…子供はすごいな」

「どういうことです?」

「確かに、小さくて可愛いな」

つん、とお腹をつつかれて彼の言いたいことを理解する。
…子供の言うことだ、と思えばそれまでだが子供はそういったものに敏感だ。

「…そうですね。きっとまだまだ凄く小さいですよ」

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