運命とは強く儚くて

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テオとカレル

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夕方、体が鈍らないように簡単な鍛錬を部屋でしていると呼び鈴が鳴る。

「私が行こうか?」

「駄目、エディ様がいるでしょ」

「私はもう君と番っているからそんなに外はないよ」

「でも駄目。待ってて」

汗を拭いて脱いでいた上着を着ると2人の部屋へ向かう。

「お呼びでしょうか」

「ああ、夕食を早めにしてくれ」

ノックをすると上裸の皇帝が出てきた。一段落したのだろうか。
皇帝の髪が濡れているのと、石鹸の匂いから風呂に入ったのだろう。

「…部屋の清掃は如何しますか?…良ければ今のうちに致しますが」

きっと散らかっているだろうが、女官に頼む訳にもなかなかいかない。
何があるかは分からないし、いろいろと発情期の間は気を使わなけらばならない。だからこその自分なのだ。

「頼む、すまんな…。エディが寝ているから」

「分かってます。…ベッドは使わなかったんですね」

部屋に入るなり苦笑してしまう。
ちらりと覗くとエディ様がぐっすり寝ていた。見たところベッドは使っていなかったようなのだが、周りの惨状が凄いことになっていた。

ソファでしたのだろう、ソファ周辺には衣類やらなんやらが散らばり、濡れている。

「換気します」

一言断りをいれて窓を少し開ける。皇帝はこちらには目を向けず、ベッドに腰掛けて熱心にエディ様の寝顔を見ていた。

洗濯物を回収して周りを拭き、ソファにカバーをかけておく。
相当激しかったらしい。

「カレルとはどうだ?」

「いつも通りですよ」

「そうか。…お前、カレルに似てきたな」

「…似ていませんよ。」

まだ余韻でも残っているのか。言っていることがよく分からない。

「片付けの仕方、そっくりだぞ。…護衛のことは気にするな、多少仕事が遅くなっても構わない。楽しめとだけ言っておこう。」

くく、と笑いながら皇帝がそんなことを言ってくる。それ即ち、カレルと存分に、そういう意味でも楽しんで過ごせということだ。

「お気遣いありがとうございます」

自分でも満更では無い。
戻ったらお強請りでもしてみようかな、なんて思いながら洗濯物等を抱えて部屋を出た。
替えが必要だったり洗い物は置いておけば後から回収してくれるのでワゴンに入れておく。

「ただいま」

部屋に帰ると仕事を終えたらしいカレルがソファでうたた寝をしていた。

「ん…おかえり」

「いいよ、起きなくて。ベッド運ぼうか?」

「うん」

寝ぼけ半分の彼は可愛い。彼を抱き上げると甘えるような仕草を見せてくるものだから、本当に自分はこの人に抱かれているのかと思うと不思議になる。

彼をベッドに降ろして一旦離れようとすると手を引かれてそのままベッドに引きずり込まれてしまった。

「…起きてたの?」

「目が覚めたんだ。…ほら、おいで」

寝起きの優しい声色に絆されそのまま彼の腕の中に潜り込む。
…お強請りは夜かな、どうせ今寝たら夜寝れないだろうし
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