運命とは強く儚くて

文字の大きさ
上 下
70 / 154
テオとカレル

1

しおりを挟む


「失礼致し…っと…失敬…」

そろそろ食事とエディ様の体調を伺いにドアを少し開けると耳に飛び込んできたのは何と言うか、情事の音とエディ様の喘ぎ声。

別に変なことは思わないが、少し申し訳なさがある。
それに香り、発情期に入られたのだろう。とりあえず暫くはそっとしておこうと飲水とタオルだけ入ってすぐの小さなテーブルにそっと置いて部屋に戻った。
今日のカレルは午前だけ王宮に戻って仕事をして、持ち帰ってきたらしい。

書き物をしている彼の傍に椅子を持ってきて邪魔をしないように座る。

「…はやいね」

「うん。…始まってたみたいでさ、気付かれてないといいな」

「それは災難だったね。…私達も始めるか?」

「馬鹿、昼間っから。一応護衛だし」

「護衛のためだけではないだろ?…別の意味もあってのこの部屋だと思うよ」

羽根ペンを置いてググッと伸びをしながら軽快に笑う彼の足を軽く蹴る。
確かにそれは一理ある。

立ち上がって彼の膝に乗り、ぐっと彼を引き寄せる。

「俺はこれで十分。…それとも、カレルは溜まってる?」

「そう言われるとそうだしそうでも無いし…難しいところだね」

ふむ、と真面目に考え始めるカレルの額にデコピン。

「冗談。…あのね、俺はカレルに抱かれるのも好きだし、こうやって何もしなくても一緒にいられるだけで嬉しいよ」

「それは私もだよ」

優しく微笑んだ彼がちゅ、と音を立ててキスをしてくる。さては、結構喜んでいるな?
分かりにくいけれど俺は分かる。ニヤニヤを堪えるように少し口を結んでいるから。

可愛いな、ほんとに。

「あんたも可愛いとこあるよね」

「そうかな…。私みたいな男に可愛いとはね」

「…女の子も言ってたけどさ、女の子の好いた相手に言う可愛いって『愛しい』って意味なんだから」

「そうなのか。…じゃあテオは可愛い、国で1番可愛いな」

「言い過ぎ。…でもそこは世界一じゃないんだね」

「世界一でもあるな」

クスクスと2人で笑い合いながら2人で過ごして、皇帝たちの分の美味しい昼食を食べた。
俺達も(特にカレル)それなりの身分持ちだからいいご飯は食べているけれど皇帝はやはり格別だった。

「美味い…。こんなのにありつけるんなら皇帝達毎日昼からしてくれていいのに」

「少なくとも1週間はこうだよ。…これ食べる?私は苦手だから」

「食べる。…ほら、食べさせてよ」

今週の俺は最強だからわがままだって言える。
ちらりと彼の様子を伺うと楽しそうに食べさせてくれた。
意外にカレルは好き嫌いがある。やはり坊ちゃんなのだろうか。

それとも俺がなんでも食べすぎなのか。
森の中で生き抜く術とか、父さんが教えてくれたし、実際その時はなんでも食べたから。

まだ優しかった頃の父さんか、懐かしい。なんてふとした思い出に浸りながら調子に乗って嫌いなものを口に運んでくるカレルの頭に手刀を軽く入れた。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...