運命とは強く儚くて

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「…月がとっても綺麗です」

「本当だな…、こうして美しいお前と酒を飲みながら美しい月を眺めるのは至福だ。」

「美しいなんて、どの口が言ってるんだか」

窓辺でテオ達が差し入れてくれたお酒を皇帝と飲み交わし、調子の良い皇帝の口を人差し指で突く。

「陛下は自分の美しさをもっと自覚した方がよろしいです」

「ほう?…お前に褒められるのは気分がいい。お前は俺のどのようなところが愛しい?聞かせてくれ」

よくぞ聞いてくれた。
そんなの言葉に言い表せないほどあるのに、とぼやきながら「まずですね」と口を開く。
果物のお酒が美味しい。

「頭からいきましょう。…この艶やかなお美しい御髪、陛下が屈まれたりお顔を傾けると揺れるのでそこがとても好きです。」

後ろへ無造作にかきあげられている陛下の長髪を指で掬いながら改めて思う。
言うのは恥ずかしいけれど、情事の際に覆い被さる皇帝が垂れた髪をかきあげたり、簾のようにかかる様が好きでたまらない。

「なんと言っても陛下はお顔が綺麗です。…目も鼻も、お口も僕は全て、大好きです。…僕やデニスのことを愛しいと言ってくれて、優しく口付けてくれる唇も…好きです」

そっとこれの唇を撫でるとそのまま指を柔らかく咥えられてしまう。

「その調子で足の先まで続くのか?」

「もちろんです…嫌ですか?」

「嫌ではない。…が、これはなかなか照れてしまう。自分で言い出したことだがあまりに予想以上だった。」

「とにかく、僕はあなたの全てを愛してますよ」

酔ってしまったのだろうか。
自分が思っていること全てが口をついて出てしまう。
そっと口付けを交わし、皇帝に抱きしめられる。

「俺もお前の全てを愛している。…先程は照れさせられたからな、お返しといこうか」

「ふふ、楽しみです」

「まずはそうだな…髪ももちろんだが、この丸いフォルムの頭がとても愛らしい、撫でやすくてな。それに、口付ける時に手を当てやすい。
…次にその瞳、初めて会った時から変わらぬ美しい瞳だ。唇は柔らかく、その小さな口に俺の舌を捩じ込んで堪能するのは堪らない。
…俺が近々噛む予定の項、俺を誘う首筋に鎖骨…愛らしい桃色の胸…」

皇帝の手が頭から唇、項、鎖骨、胸へと降りてくる。触り方が…なんというかやらしい。

それになかなか恥ずかしい。照れてしまう。

「も、もう十分です。十分分かりましたから…!」

「ほんとうか?…遠慮しなくても良いのだぞ」

にやりと皇帝が口角をあげる。
この人、分かってやってる。

「意地悪ですね」

「拗ねてるお前を見たいからな」

「見せません!」

ぐい、とグラスに残っていたワインを飲み干し、暑いほどに火照っているだろうその顔をクッションで覆い隠した。
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