運命とは強く儚くて

文字の大きさ
上 下
63 / 154
Ⅱ -7

2

しおりを挟む


「結局離れに行かれるんですか?」

「そう。デニスもいるから、皇帝と2人で離れに行くよ」

「…では脱ぎ着しやすい衣装にしますか」

翌日、テオとそんなことを話しながら荷造りをする。荷造りとは言っても、離れは敷地内なので必要なものはその都度届けてくれるから心配は無いのだが持って行けるものは予め持っていった方がいい。

多少、体のだるさはあるものの、処方してもらった薬のおかげで楽だ。

「おかあさま」

「デニス、どうしたの?」

「なんでおとうさまとおかあさま…おでかけのよういするの?」

「そうだな…」

ベッドに登って本を読んでいたデニスが不思議そうに首を傾げる。
困った。こんな幼い子に何をどう説明すれば良いのだろう。

「デニスが大人になったら分かるぞ」

「おとうさま!」

皇帝がデニスを抱き上げくすぐるとデニスが歓声をあげる。

「もしかしたら…弟か妹が来るかもしれんが」

「ほんと?!」

「それは神に祈るしかないな」

「ぼくね、きょうかいでよくおいのりするんだよ」

「では次は父も連れて行ってくれるか」

「うん!おうまにのせてってね」

「もちろん。…ほら、そろそろアッシアと勉強だろう。行ってきなさい」

「はーい」と元気に皇帝にキスをして降りるとすかさずこちらの頬にもキスをしてくれたデニスを抱きしめる。


「御二方、俺も少し外します」

「うん」

デニスとテオを見送り、衣類を詰めた箱を閉じると後ろから抱きしめられる。

「…では、2人きりだな」

「そうですね。…離れはどのような所なのですか?」

「そうだな…ほら、見てみろ」

体を支えられ、皇帝の指す場所を窓から見る。王宮から伸びた渡り廊下の先の小さな建物。

「あれだ。…使用人達の離れは別のところでもう少し大きい。だが部屋の構造は…まあそれほど変わらんな」

「でも…人が出入りしてます」

よく見ると何人か出入りしているようだ。

「しばらく使っていなかったからな、俺たちの為に支度をしている」

「なるほど…。その…篭もり中の食事とか何か用のある時はどうするんですか」

「テオに頼もうと思う。…俺もその間は政務所ではないからな、カレルも良いと思うだろう」

「その事なんですけど…一つお願いをしても良いでしょうか」

「なんでも言ってみろ」

「テオとカレルさんに…2人でもっと過ごして欲しいと思いまして。お節介かもしれません、2人はそう決めたのであれば」

「確かにな。…では2人に同じく離れで過ごして貰おうか。」

「で、でも」

「案ずるな、壁は厚いから声は聞こえない。2人で護衛という形でいてもらおうか」

「…良いと言うでしょうか」

「言うさ。…テオはともかく、カレルは案外そういう機会を狙っていたりするからな」

くく、と面白そうに肩を揺らす皇帝の胸の中で自分も笑ってしまった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

処理中です...