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Ⅱ -7
1 皇帝目線
しおりを挟む「エディ、起きているか」
寝室へそっと入り声をかけると人の気配がない。
天蓋をくぐり、ベットを確認しても彼の姿は無かった。
何故だ、と眉を顰めるとふわりと夜風に髪が揺れる。バルコニーへの扉が開いている?
まさか…誘拐か。
「エディ!」
慌ててバルコニーへ飛び出す。と手すりに腰掛けぼんやりと外を見ているエディがゆっくりと振り向いた。
「…陛下?…どうされたんですか」
「よかった…無事だった…」
ほっとして思わず彼を抱きしめる。
控えめにまわされた彼の腕に本来の目的を思い出す。
「…その…発情期の件だが…」
「離れに行きます。…大人しく、過ごしていますから安心して…」
側妻とお過ごしください、なんて彼は言いたいのだろうか。
「…行くな」
「ですが」
「頼む…。俺が悪かった」
どこから説明すれば良いのだろう、ただ彼を引き止めたいが為に謝ることしか出来ない自分が情けない。
「陛下が…陛下が言ったんじゃないですか…愛してるって、ずっと傍にいてくれるって…。僕だって不安なんです、国を背負うあなたが好きです、そんなあなたと添い遂げたくて…でもこんな体で…」
初めて見る彼の感情の破裂に驚きつつ、彼の言葉に胸が締め付けられる。
「嬉しかったんです…発情するって、あなたと結ばれるかも、あなたとの子を身篭れるかもって…。自惚れてたんです、あなたと子を成せるのは僕だけじゃない…だから他の…」
「もういい…やめろ」
涙を流す彼を強く抱き寄せる。
そんなことを思っていたなんて。…いや、分かっていたはずだ、俺が甘かった。
なぜこの愛しい人一人に抱え込ませてしまったのだろう。
「少しでもお前を失うかと思うと恐ろしくなった…だが間違っていたな…すまない、本当にすまない」
何度謝っても足りない。
「謝らないでください。…傍にいてさえくれれば僕は幸せです…僕は大丈夫です、これでもここまで生き抜いてきたんです」
彼を抱きしめ、涙ながらに笑う。お互い涙声で、涙で頬が濡れている。
「それは…頼もしいな、さすがは我が后。…俺の一生に一人の愛する人だ」
「…側妻は…?」
「馬鹿言え、そんなものはお断りだ。…お前がいい、お前さえいればいいんだ」
彼を抱き上げ額を擦り付ける。甘い彼の匂いと体温。
「愛してます…アル、愛してる」
「俺もだ、愛してるぞ…永遠にな」
もう一度彼に口付け抱きしめる。
夜風が体に触らぬよう、窓辺に2人して毛布にくるまり、離れていた時間を埋める。
「それと…敬語でなくとも構わないんだぞ?」
「いえこれは…こちらの方が落ち着くので」
「…夜は敬語ではないからな」
「そ、それは…特別ですよ」
「1週間後の楽しみだな」
「…1週間のうち…どれ程共にいられますか」
おずおずと彼が尋ねてくる。そのいじらしい態度が何とも愛い。
彼の腹に手を回し、軽く擽る。
「何を言う、発情を終えるまでだぞ?」
「…よくカレルさんが許しましたね」
「まあな」
今の今まで彼の発情期に備えて執務をできる所まで進めていたとは言えない。
まあそのおかげで彼と1週間2人きりだ。
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