運命とは強く儚くて

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Ⅱ -5

3 皇帝目線

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「おとうさま!」

「デニス、帰ってたのか」

執務をひと段落させ、エディの元へ向かおうと廊下を歩いているとデニスが向こうから走ってきて飛びついてくる。

彼を抱きとめてそのまま抱き上げる。
また大きくなっただろうか、それほど変わってはいないのに日々成長を感じる。

拙い話し方もハキハキとしてきた。可愛かったので少し心寂しくもあるが成長を嬉しく思う。

「エディの所にはもう行ったか?」

「まだいってません。いまからいくとこらったんれす」

それでもたまに呂律が甘くなるのでそんな時は可愛らしい。

「お母様と言うことにしたのか」

「はい!」

「…それと、家族や身内だけでいる時は敬語でなくてもかまわないんだぞ」

「…けーご?」

「えでぃ…いや、お母様に話すみたいに父にも話してくれたら俺は嬉しい」

「わかった!」と抱きついてくるデニスを抱きしめ寝室に行く。中に入ると頬がほんのり赤く、柔らかい表情をしたエディが起き上がっていた。

「陛下…デニスも。…おかえりなさい」

「ただいま!」

「ああ、体調はどうだ?」

下ろしてとせがむので下ろすと真っ先にベットによじ登るデニスを抱きしめる彼を見守りながら尋ね彼の額に手を当てる。

少し熱い、熱があるのだろうか。

「少し微熱で…。風邪ではないんですけれど少し休んでいます」

風や熱時特有の体調の悪さはないものの、微熱やふわふわとした感覚。
どれも発情期に近しい特徴、やはり彼の体が戻ってきているのだろうか。

「夕餉は食べられそうか?」

「お腹は少し空いてます」

「希望はあるか?」

「…冷たいものが食べたいです」

デニスを撫でながらそう微笑む彼に少し見惚れる。
熱っぽいからか、彼がしんどいのは分かるが色っぽく見えてしまった。

ここ数週間、彼の体調を気遣って情事をしてこなかった。
1人で処理すればいい話だが、彼と触れ合えないのは少し辛い。
何より良い香りがするのだ。気がつけば彼の柔肌に口を付けたくなるし、困りものだ。

彼を傷付けたくも無理もさせたくない。

「では冷たいものを用意させよう。…動けそうか?」

「はい。…でも手を貸してください」

遠慮がちの彼を「分かった」と姫抱きにすると彼が戸惑っている。

「デニス、行こう」

「はーい!」

隣をちょこちょこと歩くデニスと共に彼を抱いてダイニングへ向かう。

「テオ、エディに冷たいものを出すよう伝えておいてくれ」

「かしこまりました」

彼を椅子に下ろし、デニスを椅子に座らせてやる。
彼の趣向で私生活での家庭教師は付けず、極力自分達で教育している。
言葉遣いや態度…自分は全て家庭教師に習った。家庭教師は怖くて厳しかったのでもう二度と会いたくもない。

最初は自分にできるだろうかと思ったが、なかなか楽しい。
見様見真似で一生懸命に覚えるデニスは可愛らしい。慣れない敬語を使ったり、覚えたことを自慢げに報告する姿も愛しいのだ。

デニスは優秀な子だ。
将来は何になるのか楽しみだ。
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