58 / 154
Ⅱ -5
3 皇帝目線
しおりを挟む「おとうさま!」
「デニス、帰ってたのか」
執務をひと段落させ、エディの元へ向かおうと廊下を歩いているとデニスが向こうから走ってきて飛びついてくる。
彼を抱きとめてそのまま抱き上げる。
また大きくなっただろうか、それほど変わってはいないのに日々成長を感じる。
拙い話し方もハキハキとしてきた。可愛かったので少し心寂しくもあるが成長を嬉しく思う。
「エディの所にはもう行ったか?」
「まだいってません。いまからいくとこらったんれす」
それでもたまに呂律が甘くなるのでそんな時は可愛らしい。
「お母様と言うことにしたのか」
「はい!」
「…それと、家族や身内だけでいる時は敬語でなくてもかまわないんだぞ」
「…けーご?」
「えでぃ…いや、お母様に話すみたいに父にも話してくれたら俺は嬉しい」
「わかった!」と抱きついてくるデニスを抱きしめ寝室に行く。中に入ると頬がほんのり赤く、柔らかい表情をしたエディが起き上がっていた。
「陛下…デニスも。…おかえりなさい」
「ただいま!」
「ああ、体調はどうだ?」
下ろしてとせがむので下ろすと真っ先にベットによじ登るデニスを抱きしめる彼を見守りながら尋ね彼の額に手を当てる。
少し熱い、熱があるのだろうか。
「少し微熱で…。風邪ではないんですけれど少し休んでいます」
風や熱時特有の体調の悪さはないものの、微熱やふわふわとした感覚。
どれも発情期に近しい特徴、やはり彼の体が戻ってきているのだろうか。
「夕餉は食べられそうか?」
「お腹は少し空いてます」
「希望はあるか?」
「…冷たいものが食べたいです」
デニスを撫でながらそう微笑む彼に少し見惚れる。
熱っぽいからか、彼がしんどいのは分かるが色っぽく見えてしまった。
ここ数週間、彼の体調を気遣って情事をしてこなかった。
1人で処理すればいい話だが、彼と触れ合えないのは少し辛い。
何より良い香りがするのだ。気がつけば彼の柔肌に口を付けたくなるし、困りものだ。
彼を傷付けたくも無理もさせたくない。
「では冷たいものを用意させよう。…動けそうか?」
「はい。…でも手を貸してください」
遠慮がちの彼を「分かった」と姫抱きにすると彼が戸惑っている。
「デニス、行こう」
「はーい!」
隣をちょこちょこと歩くデニスと共に彼を抱いてダイニングへ向かう。
「テオ、エディに冷たいものを出すよう伝えておいてくれ」
「かしこまりました」
彼を椅子に下ろし、デニスを椅子に座らせてやる。
彼の趣向で私生活での家庭教師は付けず、極力自分達で教育している。
言葉遣いや態度…自分は全て家庭教師に習った。家庭教師は怖くて厳しかったのでもう二度と会いたくもない。
最初は自分にできるだろうかと思ったが、なかなか楽しい。
見様見真似で一生懸命に覚えるデニスは可愛らしい。慣れない敬語を使ったり、覚えたことを自慢げに報告する姿も愛しいのだ。
デニスは優秀な子だ。
将来は何になるのか楽しみだ。
0
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる