運命とは強く儚くて

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テオの思い出話

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「…こんばんは」

「こんばんは、どうぞ」

その後、彼の部屋を尋ねる。
本を渡し、いつものように話したりしていると隣に座った彼がそっと手を取ってくる。

「自分のことを好いているという相手の部屋に夜来るだなんて、随分と無防備ですね」

冗談のような、諭すような口調でそう言う彼の手を握り乱暴ではあるが、そっと彼の胸ぐらを掴んで引き寄せる。

「…俺も男ですから、無防備なんかではなくて、わざとです。」

「なるほど…さすがは精鋭隊」

ふふ、と笑った彼とゆっくり引かれるように初めて口付けをする。
次第に深くなった口付けと共に彼の膝に上がり込むと、彼の手が服の裾へ入ってくる。

「少し待って」

「どうしました?」

「…運試しをしましょう」

小瓶を取り出し、一気に飲み干してみせる。
独特の濃い味が鼻をぬけて頭がクラクラする。

「…これを飲むと、俺は一晩だけ発情します。運が良ければ番の契りも、妊娠だって出来ます。…俺は何か繋がりがないと立っていられません。あなたと恋仲になれても、あなたを置いて簡単に死ぬかもしれない。
…妊娠する可能性も、全部可能性は低いんです。特に久しぶりに使うので。…だからこの運試しは俺の戯れだと思って…」

自分でも何が言いたいのか分からない。
だから、と言い表そうとすると彼が頬を撫でてくる。

「もう大丈夫、わかったよ」

芯から湧き出る発情の熱と腹の疼きに堪らず彼の唇を奪う。
久しぶりの情事だった。

楽しい、とは違う。
満たされる幸福感が俺を苦しめるようだった。狂おしい程の幸福感に飲まれそうで、彼がすぐにいなくなりそうで不安で、彼に手を伸ばす度に優しく抱きしめてくれる。

やがて俺の中は彼でいっぱいで、目が覚めると日が昇る前の早朝だった。
彼を起こさないように着替えて自室へと戻る。

部屋に戻り、もう一度ベットへ入ってお腹を撫でる。
可能性は低い。が、ゼロではない。なんて柄でもない可用性にすがってしまう。

公子が滞在するのは皇帝の戴冠祝いの祝賀会を終えた後、勉学のために最大で1ヶ月は滞在する。
1ヶ月は彼と居られない。

馬鹿野郎。
しっかりしろ、任務は任務だ。しっかり役目を果たせ。

思い切り頬を叩き、もう一度眠りについた。


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