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テオの思い出話
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しおりを挟むその後も2日に1度のペースで俺らは「会議」という名目で会っては世間話をしたり、食事をしたり、本の理解できなかった箇所を教えてもらったりしていた。
たまに、彼の方から剣を教えて欲しいと言われたこともあった。
仕事をしつつも、その時間を待ち遠しくしている自分が居た。
「…いよいよ3日後ですね」
「そうですね。…公子がお帰りになられるまでは…いえ、もうここに来る理由が無くなってしまいますね」
そう話してしまった口を慌てた噤む。
理由だなんて、これではまるで自分が彼に行為を寄せているみたいだ。…隠者のように。
もっと彼と居られたらどんなに楽しいだろうか、どれほど幸せになれるだろう。
「それは困りますね。…新たに理由を作らねばなりません」
ぱたん、と本を閉じた彼が微笑む。
「…私と、お付き合いして頂けませんか」
そっと手を取られ、顔を覗き込まれる。大きいけれど、ペンだこがあってスラリとした綺麗な手。自分の傷だらけで剣だこがある手とは大違いだ。
「…俺は…半端者ですから…子供も、番になることすら敵わないかもしれないんですよ」
「構いません。…あなたとこうして共に過ごせることが私の望みです」
「あ、あの…」
「お返事は何時でもいいですよ」
優しく頭に手を置かれ、息を吐く。
死ぬかもしれないと思った任務の時よりも胸がドキドキしている。
時間になり、部屋を出るる間際。「…本をお返しするのを忘れてましたので…夜、お部屋に伺っても?」と聞くと少し驚いた様子で「もちろん」と返事を貰った。
本を返したいのも本当だ。
だが彼は異質な俺の体を本当に受けいれてくれるのだろうか。
拒まれたら。
幸い、この後は精鋭隊希望の若者や、近衛隊の若者達の指導に当たっていた為考え事をする時間は十分あった。
夜の経験がないわけじゃない。
欲を言うなら彼の匂いに包まれたい、あの微笑みを、あの落ち着いたやわかい声を自分のものに。
だが仕事は?
彼も自分も仕事は譲れない。それはお互いにとって良策なのか。
会えない日も、どちらかか死ぬこともあるかもしれない。
「ラマール殿、ご指南願います」
「あ、あぁ。わかったよ」
任意で個人個人を相手にする。
慌てて石段から腰を上げ剣を手に取り鞘を払った。
ふぅ、と息を吐いて構えると神経が研ぎ澄まされていく。この空気が好きだ。
どんなことも忘れて、戦いに集中できる。
「行きます!」
数時間後
あたりはすっかり夕暮れで、周りには這いつくばったり石段にもたれかかった若者であふれていた。
とは言っても、自分より年上が多いが。
「今日はここまで。…お疲れ」
「ありがとうございました」
その後、数人から質問などを受け食堂に行く。
戦いが終わるとどっと考え事が押し寄せて、あまり食べる気にならなかった。
スープでパンを流し込んでシャワーをさっさと浴びて部屋に戻った。
軽い格好に着替えて、棚から小瓶を取り出す。少し赤みがかったこの液体。
発情誘発剤だ。
本来ならば、強制的に発情させるもの。自分の発情期は分からない。
本来、周期はあるはずだが発情期がない故に分からない。
…運試しだ。
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