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テオの思い出話
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しおりを挟む「連絡は以上、ラマールは残れ」
朝の朝礼の後、各々方は各自の任務へと去り、自分は隊長の元へ残る。
「明後日、新皇帝の親戚がいらっしゃることは知っているな?」
「はい。…モーセット伯爵のご子息ですね」
「そうだ。…お前はその公子の護衛だ。命を狙われていると情報が入った、命に代えてでも守れ」
「はい」
肘をつき、頭を下げる。
確かモーセット伯爵のご子息は5歳。まだまだ子供だ。
新皇帝は俺より2歳程年上。戴冠式を先日終え、精鋭隊で挨拶に行った程度だが、なかなかに聡明な方だった。
今からはその詳細を聞きに彼の側近へと話をするらしい。確か皇帝より3つか4つ年上の男だったか。顔色ひとつ、笑顔ひとつ浮かべない冷たい男だったような気がする。いや、どうだったか…。顔をよく見ていないから分からないしうろ覚えだ。
「…失礼致します。精鋭隊、ラマールでございます」
「どうぞ」
重苦しいドアを開けて部屋に入ると壁が二重の本棚で埋め尽くされた部屋が目に入る。
書斎というよりこれでは資料室だ。
机の周りには本が積まれ、紙が散らばっている。その奥から現れた長身の男。
「散らかっていて申し訳ございません。そこら辺にでも…、…!」
彼が顔を上げた途端に目が合い、数秒離せなくなった。
時が止まったような、まるで水の中のような時間の流れではっと我に返る。
「…あ、えっと…モーセット公子の護衛を務めることとなりましたのでお話をと伺いました」
高揚する心臓をら落ち着かせ目線を下へ向ける。
…相手が陽者だからか?
陽者にはっきりとした発情期はなあものの、興奮していたり性的欲求、性行為の後等にフェロモンが発される。
きっとそれかもしれない。
そう思うことにして打ち合わせに集中した。
「公子が在来中、私は近侍になります。護衛はお任せいたしますが何かあれば直ぐにお知らせください」
「かしこまりました」
「…さて…あなたの事ですが。…噂の隠者の方ですね」
「…はい。ですが自分は特異体質故、心配はございせん。」
「心配などしていませんよ。…腕が立ち、仕事も丁寧かつ早い。期待しています。」
「あ、りがとうございます。」
小さく弧を描いた口元。褒められるというのはこれれほど温かくなるものだっただろうか。
「…詳しいことですが…少し探し物をしておりまして、昼食でも一緒に食べながら如何ですか」
「何せ散らかってるものですから」と自嘲気味に付け足した彼の言葉をもう一度振り返る。
食事に誘われた?…何故?
「良ければお手伝い致しましょうか」
「本当ですか。…ではお願いします。本は重たいので力のある方がいると助かりますから」
自分を非力として見ない。
精鋭隊だからか?
それでも陽者はどんな立場の隠者も自分より非力と見たがる。
この方は違うのか。
緩みそうになった頬をぎゅっと内側から噛んで気を引きしめる。
しっかりしろ、仕事中だ。
精鋭隊の重いマントと腰の短剣を抜いて本の山を持ち上げた。
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