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テオの思い出話
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しおりを挟む「昔話は苦手なのですが…」
と小さく笑いテオが目を伏せる。
いつもは淡々とまっすぐ話す彼が膝の上に置かれた手の指先をじっと見て話し始めた。
─────────────────────
ラマール家はリワーフ帝国建国当時から、緑豊かな
小さな領地を治めていた家だったが、代々精鋭隊に毎代優秀な人材を出すと武人の間では名家であった。父はその伝統に執拗に執着していた。
俺には10離れた兄がいた。
兄は腕がたつものの、温厚な性格で学問が好きだった為、自分は領地でのんびり学問をしている方がいいとよく言っていたものだ。
俺はまだ5つになったばかりで、兄と比べてやんちゃばかりの俺は父に指導を受ける兄に混じってよく鍛錬をしていた。
父は厳しかったものの、上手に出来れば褒めてくれたり狩り等いろいろなことを教えてくれるし、兄は優しく本を読んでくれたり動物のことを教えてくれたりしたので、俺は父と兄が大好きだった。
そんな幸せが終わったのはその年の冬。
新年も近く、賑わう寒い市場は薄ら雪で覆われていた。その市場の石階段で足を滑らせた子供を庇い、兄は足を不自由にしてしまった。杖なしでは長い間歩くこともままならず、精鋭隊入隊を目前にして不可能になった。
兄は笑って「大人しく領地で過ごすさ」と言ったが、精鋭隊の任を逃れて嬉しかったのかもしれない。と幼いながらに思った。
それを良しとしなかったのは父である。
兄が無理と判断した父は俺を最年少で精鋭隊に入れるべく今まで以上の訓練を施した。
今での厳しくも優しい父ではなくなってしまった。皮肉にもそのおかげで10をすぎる頃には身軽さもあってかそこそこの強さを得ていた。
しかし、俺は父や兄と違い、小柄だった。もしや隠者ではないかと恐れた父はそれが現実とならぬようにか、はたまたそれを潰すような、更なる厳しい訓練を俺に課した。
隠者なら12、3の頃に初めての発情期が訪れるはずだった。
だが隠者としての体が訓練のおかげで未熟のまま成長を終えてしまった。
父の隙を着いて、兄が医者に見せてくれた。
その時の俺の体はおかしかった。発情期は一向に来ないのに体は一般男性に比べて小柄で華奢。
発情はしていないのに隠者特有の香りが微かに香る。数ヶ月に一度訪れる謎の倦怠感や微熱。
医者の診察の結果、隠者としての内臓器官はあるが、隠者としての体の作りが十分でない。そのため完全な発情期が来ない。
だが体は小柄で非力。
幸い、身体の性能まで潰すような訓練のおかけで力には苦労しなかったがそれを補うのには周りの数倍努力をした。
17で精鋭隊に入った時、周りの男は長身でガタイの良い奴ばかりで。明らかに差があると確信した。
ただなめられぬよう、足を引っ張らぬように努力をし、半端者と言われぬように懸命に任務をこなした。
カレルと出会ったのは入隊して3年経った冬のこと。俺は20になっていた。
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