45 / 154
Ⅱ -4
3
しおりを挟む「少し熱がありますね」
「うん…体が重い」
朝から体調が悪く、休んでいると案の定熱が出てきたらしい。
「侍医を呼んで参ります」
濡らしたタオルを額に乗せられると冷たくて気持ちがいい。
熱特有のぼんやりとする思考に違和感を感じながら目を閉じる。
万が一の為に強い薬が服用出来ず、お腹が少し痛んだり体が怠くても安易に薬を飲めない。
仕方ないといえば仕方がないし、耐えられない訳では無いのでいいのだが…。
「エディ様、失礼致します」
少し経つと侍医が来てくれて、軽い診察と薬湯を飲ませてくれる。薬、というより生姜湯のようなものだった。
「…薬を出せず申し訳ございません。薬の代わりに何か少しでもございましたら伺いますので。…お食事は無理のない範囲でできる限り取って下さい」
お腹を温めるよう助言をもらい、侍医は戻って言った。普段は何をしているのか全く不思議だ。
「エディ、大丈夫か」
その入れ替わりか、皇帝が部屋へ入ってくる。時計を見れば昼前。昼食前に来てくれたのだろう。
「熱があるようだな、しんどいか?」
「はい、少し…でも少し楽になりました」
「そうか」とほっとした様子で息をつき頭を撫でられる。いつもは温かい陛下の手が今日はひんやりしている気がする。
頬に彼の手を擦り付けながら「冷たくて心地よいです」と言うと両手で頬を包み込まれた。
落ち着く。
「これでもっと冷たいだろう。…昼は食べられそうか、粥だと聞いている」
「…少しいただきます」
「分かった、持ってこよう」
少し待ってろ、と額に口付けられ陛下が部屋を出ていく。
ただでさえ広い寝室なのにあっという間に静かで心細くなってしまう。
数分待っていると皇帝がお盆を持ってワゴンを押すテオと共に入ってきた。
良い香りで部屋がいっぱいだ。
「俺もここで食べる。…薬を飲まなくてはいけないだろう?少しでも食べれるか」
果物もある、と進めてくれる陛下の優しさに嬉しく思いながら粥の匙を取る。
甘いいい匂い。
ミルク粥だ。
姉さんと暮らしてた時、寝込んだ時はミルク粥を食べたっけ。懐かしいな、と少し口に含むと少しづつ食欲が湧いてくる。
ゆっくりではあるが、完食した。陛下は既に食べ終わったがじっと楽しそうにこちらが食べるのを見ていたので心底不思議だ。
結局、薬を飲み終えるまで居てくれて、その間カレルさんが何か言いたげに部屋の入り口を行ったり来たりしていた。
「また来る。…何かあれば直ぐに人を呼べ」
「はい。大丈夫ですよ、行ってらっしゃい」
皇帝が部屋を出ていくとすっかり目が覚めてしまい、テオと話していた。
「…そういえば僕ってフェロモンの匂いするの?」
「いえ…しないと思います。でも聞く限り発情期の体には近づいていると思いますよ」
「そっか。…ねえ、テオの体のこと聞いてもいい?」
ずっと気になっていた。
彼自身、気にしているのかと思って聞かなかったがこの際だ。
もしかしたら嫌がるか、と思っていたが案外気にしていないような素振りを見せる。
「いいですよ。面白い話ではありませんが…」
「どこから話しましょう」と呟き彼が話し始める。
「あれは俺が5つ、6つの頃だったと思います…」
0
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる