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Ⅱ -4
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しおりを挟むしばらく体調が落ち着くまで、部屋での仕事となった。
午前中に診察があり、薬を飲んだり、書類など申し立てに目を通しているとあっという間に昼になる。
皇帝は会食だったな、なんて思い出して1人で食べようとするとデニスがお弁当の入ったバスケットを抱えて尋ねてくる。
「えでぃ、だいじょーぶ?…ごはんたべよう」
「大丈夫だよ。ほら、おいで」
バスケットに入っていたのはサンドイッチとスコーンだった。
孤児院でみんなで作ったらしく、食べずに2人分持ち帰ったらしい。
もう料理ができるくらいに成長したのか。
付きっきりではないからか、デニスの成長が目に見えて早くかんじる。
「美味しそうだね、これもデニスが作ったの?」
「まぜた!」
お行儀が悪いかもしれないが、デニスを膝の上に乗せたまま昼食を取る。
デニスは自作のサンドイッチを頬張り、自分はスコーンを食べる。
添えるクリームもとても美味しくて、薬湯の不味さが飛んでいきそうだ。
「おとしゃまにもある!」
元気にクッキーの袋を掲げるデニスの頭を撫でる。
「そうか、お父様きっと喜ぶね。後で渡しに行こうか」
色々な形に型抜きされたクッキー。
きっと子供たちが楽しんで作ったのだろう。アッシアの話では、今回作ったのは練習で、次に作ったものは市場で売ることになっているとか。
とてもいい案だと思う。
正直、デニスを孤児達と過ごさせるのをよく思わない人もいる。
けれど自分はデニスにいろいろな世界を見せたいし、選択肢があることを自分で学んでもらいたい。
「おとしゃまー!」
「デニスか、エディもどうした?」
午後、皇帝が多忙でなさそうなところを見計らって執務室を訪ねる。
皇帝に抱きついてお膝にちゃっかり座るデニスはやはり年相応だ。
「忙しかったですか?」
「いや、丁度休憩中だ。体調はいいか?」
「はい、だいぶ楽になりました」
向かいの長椅子に腰掛けて2人を見守りながら少し息を整える。
ずっと寝ていたからか、体調が良くないのもあって歩くのは慣れないようだ。
「これ!つくった!」
「デニスが作ったのか…?凄いな、美味そうだ。早速食べるとしようか」
偉いぞ、とむちゃくちゃに撫でられくすぐったそうに笑い声を上げるデニス。
デニスには自分を母とは呼ばせていない。
初めは皇帝も周りも疑問に思っていた。
けれどこれは自分の問題でもある。デニスに自分を母と呼ばせたら姉の存在を無くしてしまうのではないかと。
けれどデニスには、デニスのことを愛しているし母と思ってくれと伝えている。当本人はよく分かっていないようだがいつか分かるかもしれない。
大きくなったデニスは自分が本当の母ではないことにどう思うのだろう。自分は幸せだと思えるように過ごさせてやりたい。
そう思いながら微笑ましく彼らを見守った。
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