運命とは強く儚くて

文字の大きさ
上 下
42 / 154
Ⅱ -3

2

しおりを挟む


「おぁよ…」

「デニス、おはよう」

朝、皇帝と二人で朝食を取っていると少し遅めにデニスが起きてくる。
眠そうに何やら本を抱えて席に着くデニスを不思議に思う。お気に入りの本なのだろうか。

「デニス、それはなんだ?」

「こぇ、読めうになった」

まだ朝だからかいつも以上に呂律が回っていないのが愛おしい。
皇帝とデニスのやり取りを見つつ、デニスが持っていた本のタイトルを見る。

「…これ、孤児院の?」

「かぃてきたの」

「はい、デニス様が読めるようになりたいと仰られたので…許可を頂いてお借りしてきました」

この本には見覚えがある。
ただこれは、6歳程の子供用に書かれた本でデニスはまだ3歳になったばかりだ。

「読めるようになったの?」

「うん!」

目が覚めたのか元気に朝食を頬張りながら頷くデニスを皇帝が頭を撫でて褒める。
デニスは勉強が好きなのか、いや、まだ本を読む時点ではなんとも言えない。
ただ好奇心旺盛なのは確かだ。

「ごちそうさま!」

「デニス、お父様とエディはアッシアとお話があるから先に戻っててくれるか」

「はーい」

にこやかに返事をし、部屋へ戻っていった。話とはなんだろう、と皇帝を伺う。

「アッシア、デニスの今の状況報告を頼む」

「はい。…デニス様は飲み込みが早いです。ご興味があるから、といえばそれも手伝っているかもしれません。ですがとても優秀な方です」

「そうか…引き続き、デニスの勉学を見てやってくれ。」

「かしこまりました」

アッシアが下がり、皇帝と2人で食後のお茶を飲んでいると皇帝が口を開く。

「喜ばしいな」

「そうですね。…得意なことがあるのはとても良い事です。伸ばしてやりたいも思います」

デニスはきっと陽者ではない。
隠者の次に珍しい陽者は大体は血筋や親の性による。

姉さんも義兄さんも陽者じゃないし、隠者でもない。
たとえ陽者ではなかったとしても、才能のある学者達は沢山いる。過去の皇帝で陽者でなくとも偉業を成し遂げた者もいる。

デニスは次期皇帝になるのか。それとも他の道を志すのだろうか。
デニスと孤児院へ行き、遊んでいる子供たちを見ている合間もそんなことを考えていた。

デニスを実の息子のように思っている。だからといって、自分が国母になろうとも思わない。
ただ幸せになって欲しいと思う。

のびのびと、あの子が望むのなら皇帝になればいい。望まないのなら好きなことをさせてやりたい。

そんなことを考えながら元気に走り回るデニス達を見守った。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

処理中です...