40 / 154
Ⅱ -2 新婚旅行 -3
-3 テオ目線
しおりを挟む「始め!」
ピリリとした決闘の空気が一気に切れて大男の拳が迫ってくる。
真っ当に力勝負は無理だ。
肩の力を抜いてふっと体を沈め拳を避けると、拳を突き出して男の重心がぶれた所へ軽く、だが重みのある蹴りを入れる。
肉厚な体。
ぐにゃんと足が肉に沈む感覚を覚えながらすぐに体制を立て直す。
よろけた男もすぐに体制を立て直したようでもう一度睨み合う。
この感覚、懐かしい。命のやり取りのような緊張感はないが、ふつふつと湧き上がるお互いの闘志に興奮する。
カレルが見たらなんて言うだろう。
心配するだろうけど自分の実力を一番わかってるのは彼だ。
まあ、今回のはないしょにしよう。
何回か男の攻撃を受け流し、スレスレで避けてみせる。余興だ。
盛り上がって来たところで、あまり皇帝達を放っておくわけにも行かない。
そろそろ、と人の急所を軽く打ち背後に回る。
気絶させるのもどうかと思い、よく子供のやるように男の膝に自分の膝を入れ込む。
カクッと膝を着いて転げた男。
ワッと歓声が上がる中、2人の様子を確認する。
無事なようだ。
あまり目立つのも良くないかと男の様子を確認し、一礼して壇上から降り、2人の元へ戻る。
「テオ凄いね!…さすがでびっくり…」
興奮気味のエディ様のヴェールを直しながら「ありがとうございます」と礼を言う。
純粋に嬉しい。
「申し訳御座いません、放っておいてしまって。…次はどこへ参りましょうか」
「良い。いいものを見せてもらった、流石だな。…お前、景品を貰ってこなくていいのか」
皇帝にそう言われて振り返ると店主のような男がこちらへ向かってくる。
「おおい、兄ちゃん。いやぁ、さっきのは見事だったよ、ほら景品を選びに来てくれ」
行ってこい、とコンタクトをくれた二人に会釈しながら店主に露店へ引きずられる。
露店には細々とした小物や大きな景品まで様々だ。
「なんでも好きなもんを持ってってくれ」
「そうだな…」
特に欲しいものもない、と思いながら軽く物色していると大きなぬいぐるみを見つける。
謎の動物だが、両手で抱える程の大きさが気に入った。
「これを貰うよ」
「へいまいど。…兄ちゃん、また来てくれよ」
店主に礼を言い、彼らの元に戻る。
カレルは意外に可愛らしいものが好きだ。お土産にしよう。
0
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭


初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる