運命とは強く儚くて

文字の大きさ
上 下
38 / 154
Ⅱ -2 新婚旅行 -3

-1

しおりを挟む


「綺麗だな」

「でしょう?、一昨日ここでテオと貝拾いをしたんです。…今日は海に入りたいなと思ってて」

「それでこれを着ろと言ったのか、なるほど。…楽しそうだな」


今日は政務はなく、残りの3日間はゆっくりと本来の目的であった旅行を楽しむことにした。
楽しげなエディに薄い特別な生地の衣類を着せられ連れてこられたのは王宮の1部である入江。

海に入りたいとはしゃぐ彼を見ていると愛おしさが増す。

「ほら、行きましょう」

「そうだな」

手を引く彼を引き寄せ、ぐいっと姫抱きにして海へと入っていく。
驚きつつも楽しそうに笑う彼。

来てよかった。

海は冷たくて気持ちが良い。
自分は胸ら辺の深さでも彼には肩位までつかってしまう。溺れないよう気をつけながら彼の手を引き、掛け合いをしたりと楽しく遊んだ。

子供のようにはしゃぐエディは本当に可愛らしい。が、一つ気になる点が。

薄さゆえか、肌にピッタリと張り付いた布が彼の体の線をハッキリとうつしだしている。
彼は男で、胸を出そうがあまり関係ないとはいえど、最愛の人の肌をあまり人に見せるのは気に食わない。

そんなことをぼんやり考えていると彼が飛びついてくる。

「っ!?」

「っあはは、驚きましたか?」

思わず海に倒れ込み、抱きついてきた彼を受け止める。

「この…イタズラめ!」

仕返しをしてやろうと彼を動けないように抱きしめ従者たちの前で口付けてやる。
人前でやると彼は恥ずかしがって嫌がるのだが、自分的には見せつけてやるのが好きだ。

しばらく遊んだ後は砂浜の東屋で国特有の果実酒を飲んだり、氷菓子を食べたりした。
「デニスもいたらいいな」なんてボヤく彼に頷く。

彼と2人きりの時間は嬉しいが、やはり息子であるデニスも一緒にいたいと思う。
元気だろうか。旅行中にも手紙を送ったり、届いたりするが、内容を見る限り楽しくしているようだ。
カレルもいるし安心だろう。

時間になると彼は相変わらず不味そうに薬湯を飲む。

彼の体は修復に向かっていると聞いているが、自分には分からない。
彼の体を無理に治すつもりはないし、彼に無理矢理跡継ぎを産まそうとも思わない。
けれど彼との子が欲しいと思うのも事実だ。

彼が孤児院の子達を可愛がっているのも事実。気にかけている子を引き取ろう、と言っても彼は選ばないだろう。

捕虜出身の彼が皇后になったというシンデレラストーリーは今や国中に広がっている。
それを素敵だと祝福する一方、否定する者も少なからずいることも確かだ。

彼はそれを誰よりも自覚している。
だからいろいろ抱え込むし、多くの人を救いたいと思っている。

彼の行いは誇りに思っている。けれど無理だけはして欲しくない、幸せでいと欲しいと願っている。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

処理中です...