運命とは強く儚くて

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番外編 テオとカレル

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「…っは…ぁ"…ぁ…、っ」

「悪い…やり過ぎた」

もう深夜何時頃だろう。
ビクビクと痙攣し、余韻の快感で声を漏らすテオの隣にドサッと倒れ込む。

何回したかだろう。
彼のフェロモンに当てられて、久しぶりとの事もあってやりすぎてしまった。

もうだ。

「大丈夫か?」

乱れ、目にかかっていた彼の髪をそっと掬ってやる。まだぼんやりと蕩けている彼の表情は堪らない。
普段あんなに冷静沈着な彼のこんな姿を見れるのは自分の特権だ。

とりあえず、彼が落ち着くのを待つまで風呂の用意をしよう。
前もって弱火で大鍋に湯を張っておいた。
それをバスタブに数回運んで水でちょうどいい温度にする。

「…テオ、風呂入るぞ」

「…抱いてって…立てない」

「ん…まだ薬が抜けないか」

弱々しく手を伸ばしてきた彼を抱き上げ一緒にバスタブへと体を沈める。
丁度良い温度が心地いい。

自分の胸の中でくてっとしている彼の体を見下ろす。
相変わらず噛み跡が酷い。キスマークは我慢しているが、噛み癖だけはどうしても我慢できない。無意識にやってしまう。

いつも彼は少し怒りつつも「でもしなさそうなのにするのが好き」と言って許してくれる。
ピンと立った薄桃色の乳首、鍛えられた白い肌、いくつもの傷跡。
水と汗で濡れている亜麻色の髪、冷ややかさを思い浮かばせる青い瞳。その奥にある優しい眼差しも全て今、この胸の中にいる。

なんて愛おしい。

「…のぼせてないか?」

「大丈夫、薬が解けてきた」

頷く彼をそっと抱きしめながら幸せを噛み締める。
常に一緒にいられる訳では無い。

王宮で仕事柄あっても親しく喋ることは無い。
互いの仕事を尊重し、全うすることをお互い望んでいる。
自室へ戻ってもどちらかが居ないことなんてざらにある。

風呂から上がり、簡単なズボンのような薄い生地の下着のみを履いてベッドへ戻る。
もちろん、シーツは取り替えたし換気もした。

すぐにウトウトし始めた彼を見守りながら頭にあのことが浮かぶ。

彼が怪我をしても傍にいられなかった時もあった。
彼の胸から腹にかけてある大きな傷。
これはまだ番っていない時、彼が精鋭隊の一員であった時についたものだ。
俺のせいでもある。

だから体を重ねる時は戒めとして、今後彼を守るという意味も込めて念入りに口付けるのだ。

彼は守られる性分ではない。武術であれば彼が自分より勝る。
それでも自分は自分のできることで、彼を守りたい。それがこの身を投げうることでも彼のためなら厭わないと思う。
こんなことを言えば怒られてしまうだろうが。

「…それだけ愛してるんだ、許せ」

眠りかけている彼にそう囁くと彼が微笑んで目を閉じる。

「…俺も。愛してるよ…許せ」

許せ、の意味は分かっていなかったたろう。
まあいいか。

ふふ、と笑って自分も目を閉じた
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