運命とは強く儚くて

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番外編 テオとカレル

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「テオ、行ってらっしゃい」

「お見送りなんてよろしいのに。…ありがとうございます」

数日後の午前中。
カレルと共に2日間の休みを貰って狩りに出かけることにした。
わざわざ見送ってくれた皇帝陛下とエディ様。2人ともまだ

「では御二方、行って参ります。」

2人に頭を下げて裏門から馬に跨り王宮を出る。
久々に思いのまま馬を走らさるのはとても心地よかった。
それに隣には彼がいる。

「森まで競走だよ」

少し進んでそう声を上げると彼がニヤリと笑って馬の腹を蹴る。
勝負。
自分も馬の腹を蹴り、風を切って2人で競うように森へと走った。

「っ、俺の勝ちだね」

「そうだな、テオにはいつまでたっても敵わないよ」

2人でそう笑った後、少し地図を見て話し合ってから作成を立てて森へとはいる。
この森は昔から狩りによく来るところで、あまり人も来ず、自然豊かな為獲物も多い。

カレルの頭脳はこの上なく助かるものだ。

「そっちいったぞ」

「…っよし」

カレルが追い詰めたものを俺が撃ち落とす。
午前中は小さなものを狩って昼ごはんにする事にした。

「相変わらず捌くのも上手いな」

「最初は動物で練習させられるからね。何かとは言わないけど」

捌いた野ウサギと鳥を裁き、焚き火で焙る。

「…エディ様の様子はどうだ」

「薬湯は好きじゃないみたいだね。未だに不味そうに飲む。…まあ、体の変化は分からない。デニス様がいい香りがするって言ってただけ」

「デニス様が?…陛下は何も言っていなかったが…子供の言うことだが大人に分からないことを子供はわかると言うしな」

「そうだね…。でも俺はエディ様好きだよ。いい人だ」

「そうだな…。あの人も辛い人だ、初めて牢獄から連れ出した日から今日まで大変だった」

「あの事件もあったしね」

あの事件。
あの時はまだエディ様の付き人ではなくて、まだ精鋭隊にいた。

大事にしたくないのと、エディ様が隠者なのを理由に俺がエディ様の救出の護衛に行った。

陛下達の前にたって見張りやその仲間たちを倒し、捕らえたがどいつもこいつも弱かった。
そんな奴らでも、隠者は勝てない。自分は運がいいとも悪いとも言えないが、それに関してはいいと思う。

精鋭隊から2人、各自エディ様とデニス様の護衛が選出されたが、事件のこともあり俺がエディ様の護衛になった。

デニス様の護衛には1番若い男が。
デニス様には他に教育係がいるから歳の近いものを選んだのだろう。


「…そろそろ行くか」

「次は鹿?狐?」

火を消して後始末をし、立ち上がる。
午後からは大物を。

水辺の開けた場所へ行き、鹿を狙うことにした。
カレルの読み通り、水辺にこっそり行くと群れがいて、若くて大きなオスがいた、

大きいのでカレルが最初に撃って、俺がとどめを刺すことにした。

作成は成功。ツノのある雄を狩ることが出来た。他に狐やイノシシなどの他の動物も狩れた。
久しぶりに彼と1日一緒にいて、話したり笑いあったり。
とても幸せだ。

夕方になり、小屋に戻ることにした。

いつも使っている小屋で、池のほとりにある。自分が燻製小屋で肉を処理している間、彼が丁寧に皮を鞣す。

夜、持ってきた酒にパンとチーズ、それと燻製したての肉をつまみに夜が更けるまで話した。

途中、話が途切れても心地が良い。

「そろそろ寝るか?」

「…折角明日休みで…2人なのに」

酒のせいか、本音が出てしまう。
それでも最近、というよりお互いの仕事上、夜はそのまま寝ることが多い。
そういうことは滅多に出来ないことなんてよくある事だ。

「…そうだな。ゆっくり、夜更かしして朝寝坊でもするか」

微笑んだ彼が酒のせいか、赤らんだ顔で鼻先を擦り付けそのまま唇を重ねた。

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