運命とは強く儚くて

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番外編 テオとカレル

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皇帝がエディと国を発つ2週間程前


「すまないが…私は行けない。皇帝がいない内の切り盛りを頼まれている」

「…。そう、分かった」

「…悲しんだりはしないのか」

「寂しいなんて言ったら面倒でしょ?…大丈夫、慣れてます」


就寝前、そうテオに告げると変わらぬ表情でそう答える彼。
お互いが番になる時、なる前から分かっていて今までもお互い仕事で会えない日があった。
確かに慣れてはいる。

「私はなかなか寂しい」

「…意外。外では冷徹って言われてるのに」

慈愛を含みながらそう笑う彼に頭を撫でられる。こんな姿を見せるのは紛れもない彼にだけだ。
長年の付き合いの主である皇帝にも、見せることは無い。

手を伸ばして彼の亜麻色の髪を撫で、その手を彼の後頭部、項へと滑らせる。
くっきりと残っている噛み跡。番の印だ。

テオには発情期がない。
ない、というには語弊がある。


彼は特異体質で、隠者なら数ヶ月に一度来る発情期が無い。
それでも隠者特有の小柄、他の男性の比べた非力さはある。ふんわりと隠者のそれらしき香りがすることもある。
それでも完全に発情するのは発情誘発剤を使った時のみ。
使っても、体に支障のない量では上手くいかない時もある。

あまり薬を使うのも彼の体に障るから使いたくはないし、発情が無くとも、彼が隠者で無かろうとも自分は彼と一緒にいたいし、幸い番関係としていられる。
それで十分だ。

彼は元々、精鋭隊出身だ。
発情が無いとはいえ、隠者の体で精鋭隊に入隊し任務をこなすのは血のにじむような努力をしてきた事だろう。

彼は確かに隠者に比べたら長身かもしれない。
均等に、使われるためだけに美しくついた筋肉は彼の努力を語っている。


「…皇帝達が発つ前に君と休みを頂いた。どこか行こうか?」

「…馬にのりに行きたい。しばらく行ってなかったでしょ?久しぶりに競走」

「いいな…。楽しみだ、この前は私が負けたが今度こそは勝つ」

「それはどうかな、俺が勝つよ…また」

ふふ、と2人で笑いズルズルと布団へ身を沈める。

「…明日は早い?」

「同じくらい」

「そう」

「…おやすみ」

「おやすみなさい」

2人で過ごす時間の少ない部屋。
広く、一応主賓身分が高い者の暮らす部屋にも関わらずものは少ない。

それでもいい。
ウトウトと目を細め、目が合うと微笑む優しい彼がこの腕の中にいさえすれは自分は構わないと心から思った。

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