30 / 154
Ⅱ -2 新婚旅行 -2
-2
しおりを挟む「綺麗だな」
「そうなんです。…貝殻も砂浜も海も全部初めて見たんですなど全部綺麗で。…今度はデニスも一緒に来たいです」
「そうだな。…だが美しいのはそれだけじゃない、お前が美しいと言ったんだ」
「そ、…そうですか。…ありがとうございます」
ふいにそんな事を言われ思わず照れてしまう。
この国の夜は蒸し暑いため、なるべく涼しく過ごせるよう工夫がされている。
窓は大きく、風通しが良い。服も薄くてヒラヒラとしたものが多い。
袖がなくて、首から紐で吊り下げられた胸当てに大きくスリッドの入ったスカート。
なぜスカートなのかは分からない。風通しが良いからだろうか。
それでも皇帝は涼しそうなパンツスタイルだ。
「…もちろん今度はデニスと一緒に来よう。…だが今はお前と二人きりの時間を味わいたい」
「駄目か?」と微笑む皇帝の魅力に頷きざるをえない。
自分と同じ胸当てのはずなのに皇帝の鍛えられた体はよく映える。
「知ってたか?…ほら、気を利かせてくれているらしいぞ」
皇帝の膝を跨ぐように膝立ちをさせられ、胸元にキスを落とされる。
皇帝の指が指したベットの近くにある物入れに目をやり開けてみると細長い小瓶に透明な液。
もしかしてこれは…潤滑剤…。
「…よ、用意周到ですね」
「この国には一夫多妻文化があるからな、そういったのには察しがいい」
「…僕らの国の歴代皇帝だって…一夫多妻というか、愛人文化はありましたよね」
この国に限らずどの国も王族は子孫を残さなくてはいけない。后の他に側室を囲んでより強い男児を産ませることはおかしなことては無い。
でも…と少し不安な気持ちにもなる。
デニスがいるとはいっても、もしデニスが後継を嫌がれば誰かが子供を産まないといけない。
僕が無理なら誰かを娶ることも例外じゃないはずだ。
でもそれが国の為なら、皇帝の義務なのであればしょうがない。
「そんな顔をするな、お前以外の者を娶る気は無い。お前しか愛していない。…デニスがもし王位を望まないのなら俺は咎めないし、遠い血縁者や有能な者を取り上げればいい」
「でも…」
「俺がいいと言ってるんだ、お前は何も心配せず俺に愛されていればいい。デニスも、俺も民もお前を愛してる」
抱きしめられ、優しくそう伝えてくれる皇帝。
多少なりとも、自分が捕虜上がりという劣等感はある。それでも幸せと思えるのは皇帝とデニス、王宮の人達、市民の人が自分を認めているからだ。
「…僕は幸せですね」
「幸せにすると言ったろう」
「はい」
ふふ、と2人で額をすり合わせ笑う。
こうしていて、彼の言葉や体温で彼の優しさを感じると ああ、自分は彼を愛しているんだなと思う。
この人が愛しい。
「アル、愛してる」
「それほどまでに嬉しい言葉はないな」
腰を抱かれ、嬉しそうに笑った皇帝から沢山のキスを受け取る。
「さて…と、せっかく用意してくれたこの潤滑剤を使おうか」
「…はい」
本当に、この人には弱い。
そうして一晩で無事に瓶の中身は空になった。
0
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

孤独を癒して
星屑
BL
運命の番として出会った2人。
「運命」という言葉がピッタリの出会い方をした、
デロデロに甘やかしたいアルファと、守られるだけじゃないオメガの話。
*不定期更新。
*感想などいただけると励みになります。
*完結は絶対させます!

オメガ転生。
桜
BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。
そして…………
気がつけば、男児の姿に…
双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね!
破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる