運命とは強く儚くて

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Ⅱ -2 新婚旅行 -2

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「綺麗だな」

「そうなんです。…貝殻も砂浜も海も全部初めて見たんですなど全部綺麗で。…今度はデニスも一緒に来たいです」

「そうだな。…だが美しいのはそれだけじゃない、お前が美しいと言ったんだ」

「そ、…そうですか。…ありがとうございます」

ふいにそんな事を言われ思わず照れてしまう。
この国の夜は蒸し暑いため、なるべく涼しく過ごせるよう工夫がされている。
窓は大きく、風通しが良い。服も薄くてヒラヒラとしたものが多い。

袖がなくて、首から紐で吊り下げられた胸当てに大きくスリッドの入ったスカート。
なぜスカートなのかは分からない。風通しが良いからだろうか。
それでも皇帝は涼しそうなパンツスタイルだ。

「…もちろん今度はデニスと一緒に来よう。…だが今はお前と二人きりの時間を味わいたい」

「駄目か?」と微笑む皇帝の魅力に頷きざるをえない。
自分と同じ胸当てのはずなのに皇帝の鍛えられた体はよく映える。

「知ってたか?…ほら、気を利かせてくれているらしいぞ」

皇帝の膝を跨ぐように膝立ちをさせられ、胸元にキスを落とされる。
皇帝の指が指したベットの近くにある物入れに目をやり開けてみると細長い小瓶に透明な液。
もしかしてこれは…潤滑剤…。

「…よ、用意周到ですね」

「この国には一夫多妻文化があるからな、そういったのには察しがいい」

「…僕らの国の歴代皇帝だって…一夫多妻というか、愛人文化はありましたよね」

この国に限らずどの国も王族は子孫を残さなくてはいけない。后の他に側室を囲んでより強い男児を産ませることはおかしなことては無い。
でも…と少し不安な気持ちにもなる。
デニスがいるとはいっても、もしデニスが後継を嫌がれば誰かが子供を産まないといけない。
僕が無理なら誰かを娶ることも例外じゃないはずだ。
でもそれが国の為なら、皇帝の義務なのであればしょうがない。

「そんな顔をするな、お前以外の者を娶る気は無い。お前しか愛していない。…デニスがもし王位を望まないのなら俺は咎めないし、遠い血縁者や有能な者を取り上げればいい」

「でも…」

「俺がいいと言ってるんだ、お前は何も心配せず俺に愛されていればいい。デニスも、俺も民もお前を愛してる」

抱きしめられ、優しくそう伝えてくれる皇帝。
多少なりとも、自分が捕虜上がりという劣等感はある。それでも幸せと思えるのは皇帝とデニス、王宮の人達、市民の人が自分を認めているからだ。

「…僕は幸せですね」

「幸せにすると言ったろう」

「はい」

ふふ、と2人で額をすり合わせ笑う。
こうしていて、彼の言葉や体温で彼の優しさを感じると ああ、自分は彼を愛しているんだなと思う。
この人が愛しい。

「アル、愛してる」

「それほどまでに嬉しい言葉はないな」

腰を抱かれ、嬉しそうに笑った皇帝から沢山のキスを受け取る。

「さて…と、せっかく用意してくれたこの潤滑剤を使おうか」

「…はい」

本当に、この人には弱い。
そうして一晩で無事に瓶の中身は空になった。

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