運命とは強く儚くて

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Ⅰ -8

カレル目線

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エディさんがディビナ嬢によって悲劇に見舞われてから皇帝は変わった。
エディさんを気遣う傍ら、いつもの執務をこなし加えて身分の低い隠者の生活の改革を進めていた。

正規の抑制剤を世に安く回らせ、隠者が就ける工場や発情期に過ごせる施設を計画した。
隠者に対する差別が昔より減ったとはいえ、頭の固い連中は五万といる。
それに対しても対処していく考えらしい。
皇帝としての働きとみたら素晴らしい。が、エディさんのこともあって自分を追い詰めているのではないだろうか。
彼が目覚めてからその張り詰めが緩和したのも事実だ。余程ご自分を責めていたに違いない。

「かぇう!」

「お待たせ致しました」

ぼんやり待っていると、教育係の手を引き走ってきたのは正装をしたデニス様。
本来はエディさんのこともエディ様と呼ぶべきになるだろう。が、彼が嫌がり強くそのままの呼び方を所望した為こうなっている。

「デニス様、とても凛々しくなられてますよ。参りましょうか」

今日、皇帝は正式な文章を発表する。

「としゃまぁ!」

「デニス、かっこいいな。よく似合っているぞ」

控えの間に入るなり手を離して同じく正装をした皇帝に飛びついて抱っこをせがみ、それはそれは楽しそうに応える皇帝。

「2人とも、せっかく着付けて貰ったのに…」

困ったような、でも嬉しそうな笑みをうかべたエディさんがふとこちらに目を向けてやれやれといったふうに微笑む。

彼が目を覚まして1ヶ月弱。
彼は正式に皇帝の后となった。盛大な婚礼をあげるのかと思いきや、身内…とは言っても重臣や希望者だけを募ってひっそりと結婚式をあげたようだ。
どれだけ小さなものかと思ったが、指揮を終えて教会から出ると外には大勢の人が身分や老若男女問わず皇帝の結婚を祝いに来ていた。
2人の人望が招いたことだろう。

エディさんが后になったのと同時にデニス様は第一王位継承者となった。
本来なら、皇帝のエディさんの間に子供が産まれたらそちらを優先に王位継承権が与えられるのだが、本人が辞退を希望しない限りはデニスが第一王位継承者となる。

少し前、理由を聞くと眠っている2人を見つめながら皇帝が呟いた。

「俺にとってデニスはこれから生まれる子供たちと同じくらい大切だ。…だから実の息子のように扱う」

在り来りといえば在り来りだろうが立派な理由だと自分は切に思う。


「皆様、そろそろお時間です。バルコニーへ」

バルコニーの扉に手をかけ頭を下げる。扉の向こうからは賑やかな声が微かに聞こえる。皆皇帝直々のお言葉を聞きに集まったのだ。
結婚や王位継承権、隠者の生活…皆にとっては戸惑いの一択だろう。
反感があるかもしれない。それでも、彼らならばきっとやり遂げるだろう。

私、カレル・デ・キャンベルは如何なる時も忠実に貴方方にお仕え致します。

そう誓いを込めて1歩を踏み出した彼らに頭を下げた。
もちろん、そんな心情は明かさず、いつも通りの表情で。
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