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ビバ生還!
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「……あ、ひろみさんじゃないですか!」
病院に初めて行った日から、既に十日ほど経っていた。その間、私は休みの時に二度訪問していたが、四日前に訪れた時も、ひろみさんからの報告は特になかった。
ベッドの横でぼんやりと佇みながら、『何度か自分の体に戻れないかチャレンジして見たんだけど、何かするっと抜けちゃうのよね』と言っていたのだが、今日ぱんどらに現れたひろみさんは、生きていた。
「こんにちは! 小春さんが帰った日の夜中だったかな、自分ではどうにもならなかったのに、ゴムに引っ張られるみたいにきゅいんっと体に引っ張られて、意識が戻ったの。ここのこと忘れてなくて良かった」
包帯を隠すためか、つばのある黒いニット帽を被り、左腕はギプスのまま三角巾で吊ってはいるが、至って元気そうである。
「あら、思ったより早く戻れたのね、本当に良かったわ! 奢るから、是非コーヒー飲んで行ってね」
マスターが特製ブレンドを淹れ始めた。お客さんは常連の老夫婦しかおらず、これから美術館に行く、とひろみさんが来て程なくお会計をして出て行ったので、ひろみさんの貸し切り状態である。
「多分、まだ泉谷さん達もいるでしょ?」
「あ、ええ」
ひろみさんはカウンター席から立ち上がると、奥のテーブル席へ向かって頭を下げた。
「体に戻ったら見えなくなっちゃいましたけど、先日は大変お世話になりました。無事戻れました、本当にありがとうございます」
奥の泉谷さん達も『良かった良かった』と自分のことのように嬉しそうだ。
「……ふう。美味しいですね。それにいい香り」
マスターのブレンドを飲み笑顔になる。
話を聞くと、目覚めてから改めて検査をしたものの、特に脳波も異常がなく、血種なども見当たらなかったそうで、定期的な通院は必要だが退院して構わない、と言われて昨日退院させて貰ったのだ、とのこと。
職場の方は、頭のケガの影響が遅れて出て来ることもあるので、ひとまずは暫く安静にした方がいいと言われ、それならと使ってなかった有休をまとめて取らせて貰うことにしたらしい。四月一杯は無職みたいなものね、とくすくす笑った。笑っている表情が幼く見えて大変可愛らしい。
「大事に至らなくて本当に良かったです」
「本当にね。……あ、私はちゃんと話すのは初めてだったわね。坂東です、どうぞよろしく。これからもぱんどらをご贔屓にね」
「あ、そうでしたね。小春さんとも話してたし、マスターのお話も全部聞かせて頂いてたので、そんな感じしなかったんですが。こちらこそ、近所の住宅街にこんな落ち着いたカフェがあるなんて知りませんでした。ちょくちょく通わせて貰います。……無事生還したことですし」
三人で顔を見合わせて笑った。私には、幽体状態から戻った人を見るのは初めてだったので、嬉しい反面、気になっていることもあった。
「ひろみさん、ご自身ががその、幽体になっている時の記憶って全部覚えてますか?」
「今のところ全部覚えてるわ。泉谷さん、李さん、杏ちゃんにマークさんと話をしたことも。ただ……自分が何で電車にぶつかったのかは覚えてないのよねえ」
よく事故とか遭った人って、前後の記憶がないこともあるって聞くし、それかなあと思うんだけど、私かなり慎重な人間なのよ、とひろみさんは首を捻った。最初は話し方が固かったが、大分馴染んだのか普段の話し慣れた口調になっているようだ。私もずっとですます調で話されるのは気を遣うので助かった。
「通勤時間帯って行きも帰りも混雑するじゃない? だから昇降時は転んだり人にぶつからないように絶対スマホも見ないし、かなり気をつけてるの。走って来る電車なんて特によ? だってケガしたくないもの。それに、恋人と別れようとしてたけど、もう思い悩む時期はとっくに過ぎてたし、発作的に死にたいなんてのも元から思ってなかったし」
「幽体のひろみさんはかなり物静かな感じでしたけど、実際にお話ししてみるとイメージが違いますね。サバサバした感じで、よく笑うし、人好きするというか……上手く言えませんけど」
「あー、ふふ、会社でも黙って仕事しているとよく存在感がないって言われるわ。見た目が地味で目立たないからギャップがあるでしょう? みんな話すと意外って感じになるから、これはこれで面白いのよ」
そうか。幽体だから生気がなかったのも当然か。打ち解けて話してみると、とても明るくて元気なお姉さんである。
「そういえば、あの人と、その……話はしたのかしら?」
少し言いにくそうにマスターがひろみさんに尋ねた。
「あの人? ……ああ、竜也さん」
苦笑したひろみさんが話を続けた。
「ちょうど目が覚めて検査とかしてた辺りに彼が来てたので、丁度いいやと思って別れを切り出したの。暗に他に付き合ってる女がいるのは分かってる、証拠もあるって匂わせてね。病院でケンカするのは勘弁だったし。そこでは周りの目もあると思ったのか問題なく別れたんだけど、何だかあっちと上手く行ってないみたいで、私にロミオメールが来るのよ。ほんと嫌になるわ、課が違うと言ってもたまに顔を合わせる訳だし、直接言えばいいのにバカじゃないかしら。いつまでもウジウジと鬱陶しいのよ」
「……ロミオメール?」
「ああ、小春さんは知らない? 別れた男が復縁しようと悪あがきして上から目線でメール送って来たりするの。……えーと、ほら、こんなの」
ひろみさんがスマホを取り出し、メールの画面を開くと私に見せる。
【件名:愛してる
目覚めてくれて本当に良かった。
でも別れ話になるとは思わなかったけどね。
ひろみはケガもあって色々混乱していたんだと思う。
彼女とのことは誤解だよ。ただの同僚だ。やきもちかな?
君の愛情は常に感じていたよ。
僕がずっと見ていたのはひろみだけだよ。この二年
の二人の歴史が語ってくれるさ。
オンリーワン、分かるだろう?
でも、最初は僕が信じられないのかってすごく傷ついた。
だけど今なら許すよ。だってひろみのこと愛しているから。
ちゃんとまたやり直そう。連絡待ってる。
だってひろみのウェディングドレスを見るのは僕だから。
FOUR EVER LOVE 竜也】
……なるほど。これがロミオメールなのか。思った以上に攻撃力がある。背筋がゾクゾクした。ジバティーさん達にもゾクゾクしないのに。
「もう別れてるのにキモいでしょ? それもフォーエバーの綴り間違ってるのよ。これじゃ常に四人に愛を捧げるって意味になるじゃない? 浮気性宣言なの? 何が今なら許すよなんだか意味不明だし。こっちが匙投げたんだっつーの」
こんなのが一日何通も届くらしい。何それ怖い。
「削除したり、拒否設定にしたりしないんですか?」
「まさか。こんな男と付き合ってた自分に反省を促す為に保存しておくわ。それに、後で付きまといとかされたら警察に持って行けるし」
「──なるほど」
『うわー、自己愛つよーい』
『ほれ、あれや、二号さんに冷たくされとるもんで、本妻と元鞘に収まろうって魂胆や。えげつないのう』
『ハハハッ、簡単な英語も間違える人ですし、相当頭悪いですね』
『ひろみサンが上手く丸め込めるタイプか、その二年の歴史で判断つかなかたのネこの人』
気がつけば泉谷さん達が後ろからスマホを覗き込んで文句を言っていた。私は思わず笑ってしまい、それを不思議そうに見ていたマスターとひろみさんに彼らの話を伝える。
皆で大笑いしていたところで、入口の扉が開き、馴染みの大学生が資料を抱えて入って来たので、「ごめんなさい、思ったより長居しちゃって。また来るわ」と笑い過ぎて涙を浮かべていたひろみさんが帰って行った。
とりあえず、ひろみさんの件も一件落着……かな?
病院に初めて行った日から、既に十日ほど経っていた。その間、私は休みの時に二度訪問していたが、四日前に訪れた時も、ひろみさんからの報告は特になかった。
ベッドの横でぼんやりと佇みながら、『何度か自分の体に戻れないかチャレンジして見たんだけど、何かするっと抜けちゃうのよね』と言っていたのだが、今日ぱんどらに現れたひろみさんは、生きていた。
「こんにちは! 小春さんが帰った日の夜中だったかな、自分ではどうにもならなかったのに、ゴムに引っ張られるみたいにきゅいんっと体に引っ張られて、意識が戻ったの。ここのこと忘れてなくて良かった」
包帯を隠すためか、つばのある黒いニット帽を被り、左腕はギプスのまま三角巾で吊ってはいるが、至って元気そうである。
「あら、思ったより早く戻れたのね、本当に良かったわ! 奢るから、是非コーヒー飲んで行ってね」
マスターが特製ブレンドを淹れ始めた。お客さんは常連の老夫婦しかおらず、これから美術館に行く、とひろみさんが来て程なくお会計をして出て行ったので、ひろみさんの貸し切り状態である。
「多分、まだ泉谷さん達もいるでしょ?」
「あ、ええ」
ひろみさんはカウンター席から立ち上がると、奥のテーブル席へ向かって頭を下げた。
「体に戻ったら見えなくなっちゃいましたけど、先日は大変お世話になりました。無事戻れました、本当にありがとうございます」
奥の泉谷さん達も『良かった良かった』と自分のことのように嬉しそうだ。
「……ふう。美味しいですね。それにいい香り」
マスターのブレンドを飲み笑顔になる。
話を聞くと、目覚めてから改めて検査をしたものの、特に脳波も異常がなく、血種なども見当たらなかったそうで、定期的な通院は必要だが退院して構わない、と言われて昨日退院させて貰ったのだ、とのこと。
職場の方は、頭のケガの影響が遅れて出て来ることもあるので、ひとまずは暫く安静にした方がいいと言われ、それならと使ってなかった有休をまとめて取らせて貰うことにしたらしい。四月一杯は無職みたいなものね、とくすくす笑った。笑っている表情が幼く見えて大変可愛らしい。
「大事に至らなくて本当に良かったです」
「本当にね。……あ、私はちゃんと話すのは初めてだったわね。坂東です、どうぞよろしく。これからもぱんどらをご贔屓にね」
「あ、そうでしたね。小春さんとも話してたし、マスターのお話も全部聞かせて頂いてたので、そんな感じしなかったんですが。こちらこそ、近所の住宅街にこんな落ち着いたカフェがあるなんて知りませんでした。ちょくちょく通わせて貰います。……無事生還したことですし」
三人で顔を見合わせて笑った。私には、幽体状態から戻った人を見るのは初めてだったので、嬉しい反面、気になっていることもあった。
「ひろみさん、ご自身ががその、幽体になっている時の記憶って全部覚えてますか?」
「今のところ全部覚えてるわ。泉谷さん、李さん、杏ちゃんにマークさんと話をしたことも。ただ……自分が何で電車にぶつかったのかは覚えてないのよねえ」
よく事故とか遭った人って、前後の記憶がないこともあるって聞くし、それかなあと思うんだけど、私かなり慎重な人間なのよ、とひろみさんは首を捻った。最初は話し方が固かったが、大分馴染んだのか普段の話し慣れた口調になっているようだ。私もずっとですます調で話されるのは気を遣うので助かった。
「通勤時間帯って行きも帰りも混雑するじゃない? だから昇降時は転んだり人にぶつからないように絶対スマホも見ないし、かなり気をつけてるの。走って来る電車なんて特によ? だってケガしたくないもの。それに、恋人と別れようとしてたけど、もう思い悩む時期はとっくに過ぎてたし、発作的に死にたいなんてのも元から思ってなかったし」
「幽体のひろみさんはかなり物静かな感じでしたけど、実際にお話ししてみるとイメージが違いますね。サバサバした感じで、よく笑うし、人好きするというか……上手く言えませんけど」
「あー、ふふ、会社でも黙って仕事しているとよく存在感がないって言われるわ。見た目が地味で目立たないからギャップがあるでしょう? みんな話すと意外って感じになるから、これはこれで面白いのよ」
そうか。幽体だから生気がなかったのも当然か。打ち解けて話してみると、とても明るくて元気なお姉さんである。
「そういえば、あの人と、その……話はしたのかしら?」
少し言いにくそうにマスターがひろみさんに尋ねた。
「あの人? ……ああ、竜也さん」
苦笑したひろみさんが話を続けた。
「ちょうど目が覚めて検査とかしてた辺りに彼が来てたので、丁度いいやと思って別れを切り出したの。暗に他に付き合ってる女がいるのは分かってる、証拠もあるって匂わせてね。病院でケンカするのは勘弁だったし。そこでは周りの目もあると思ったのか問題なく別れたんだけど、何だかあっちと上手く行ってないみたいで、私にロミオメールが来るのよ。ほんと嫌になるわ、課が違うと言ってもたまに顔を合わせる訳だし、直接言えばいいのにバカじゃないかしら。いつまでもウジウジと鬱陶しいのよ」
「……ロミオメール?」
「ああ、小春さんは知らない? 別れた男が復縁しようと悪あがきして上から目線でメール送って来たりするの。……えーと、ほら、こんなの」
ひろみさんがスマホを取り出し、メールの画面を開くと私に見せる。
【件名:愛してる
目覚めてくれて本当に良かった。
でも別れ話になるとは思わなかったけどね。
ひろみはケガもあって色々混乱していたんだと思う。
彼女とのことは誤解だよ。ただの同僚だ。やきもちかな?
君の愛情は常に感じていたよ。
僕がずっと見ていたのはひろみだけだよ。この二年
の二人の歴史が語ってくれるさ。
オンリーワン、分かるだろう?
でも、最初は僕が信じられないのかってすごく傷ついた。
だけど今なら許すよ。だってひろみのこと愛しているから。
ちゃんとまたやり直そう。連絡待ってる。
だってひろみのウェディングドレスを見るのは僕だから。
FOUR EVER LOVE 竜也】
……なるほど。これがロミオメールなのか。思った以上に攻撃力がある。背筋がゾクゾクした。ジバティーさん達にもゾクゾクしないのに。
「もう別れてるのにキモいでしょ? それもフォーエバーの綴り間違ってるのよ。これじゃ常に四人に愛を捧げるって意味になるじゃない? 浮気性宣言なの? 何が今なら許すよなんだか意味不明だし。こっちが匙投げたんだっつーの」
こんなのが一日何通も届くらしい。何それ怖い。
「削除したり、拒否設定にしたりしないんですか?」
「まさか。こんな男と付き合ってた自分に反省を促す為に保存しておくわ。それに、後で付きまといとかされたら警察に持って行けるし」
「──なるほど」
『うわー、自己愛つよーい』
『ほれ、あれや、二号さんに冷たくされとるもんで、本妻と元鞘に収まろうって魂胆や。えげつないのう』
『ハハハッ、簡単な英語も間違える人ですし、相当頭悪いですね』
『ひろみサンが上手く丸め込めるタイプか、その二年の歴史で判断つかなかたのネこの人』
気がつけば泉谷さん達が後ろからスマホを覗き込んで文句を言っていた。私は思わず笑ってしまい、それを不思議そうに見ていたマスターとひろみさんに彼らの話を伝える。
皆で大笑いしていたところで、入口の扉が開き、馴染みの大学生が資料を抱えて入って来たので、「ごめんなさい、思ったより長居しちゃって。また来るわ」と笑い過ぎて涙を浮かべていたひろみさんが帰って行った。
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