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ハンターな日々

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 さて、私は一週間で戻る予定と父に伝えていたのだが、既に到着までに二日、パラディの町で五日を過ごしていた。
 ミラークも大量に採取したし、テッサおば様からしなびると効果が落ちると言われたので、みんなでゴリゴリとすりばちで小麦粉と混ぜ合わせ丸薬にし瓶に詰め込んだ。もうグレンが一年飲み続ける量ははるかに超えている。
 それでも私たちは帰れなかった。
 何故ならば、モーモーが現れないからだ。
 朝食を済ませるとメメの部屋で作戦会議である。

「もしかしたら別の群生地もあるのかしらねえエヴリン?」
「テッサおば様が言うには知る限りあそこが一番の群生地らしいのだけど……」
「ですが、朝から夕方まで身を潜めていても、全く現れる様子がございませんね」

 グレンが挑戦してくれるかも、という淡い期待は持っていたが、無理強いはしない。でもどうせならば、いざという時に使えるように肝は持ち帰りたい。恋する乙女というのは自分勝手な生き物なのである。
 ゾアは少しため息まじりに愚痴をこぼした。

「今じゃ私たちもお客さんと言うより、すっかり毎日お肉を獲って来てくれるハンターみたいな感じだものね。……まあジー様バー様は色んな話を知っているから、話していて楽しいし良いんだけど。私もそろそろキアルの顔が見たいわあ」
「そうよね。ごめんなさい……」
「やあね謝らないでよ。エヴリンの手助けをすると言ったのは私なのよ。要はモーモーさえ出てくれば良いだけの話なのよ。ね、メメ?」
「さようでございますね。……それと、陛下とゾア様のご両親にも、もう少し帰りが遅れると連絡致しませんと心配されますわ」
「ああ、それもあったわね」

 祖父が軽い手紙程度ならば、パラディに住む吸血鬼族の中でカラスを眷属にしている人がいるそうで、数時間で届けられると聞いた。
 しかし、父は一週間も留守にすることすら難色を示していたのだ。これでまだ戻るのが先になりそうなどと言えば、二度と旅行など許可してもらえないかも知れない。
 どんな理由を付けるべきか、と手紙の内容に頭を悩ませていると、ベッドルームのクッションでくつろいでいたネイサンが起き上がった。

『──それならワシがひとっ飛びしてこようか?』
「え? ネイサンが?」
『ワシも毎日綺麗にしてもらってモフモフじゃし、礼代わりじゃ。グレンにも見せつけてもっと綺麗に洗えと文句も言いたいわい。それに、群生地だってもう行き帰りもみんな困らんじゃろ? ワシもやることなくて少し退屈でのう。陛下にもちょっと久しぶりなので祖父母と話が弾んでて、帰りが遅くなるとか適当に言っておけば良かろ?』

 ネイサンが言ってくれるのなら話は早い。
 私はネイサンの頭を撫でてお詫びをした。

「ごめんなさいねネイサン。それじゃ悪いけれど、甘えてしまって良いかしら? 申し訳ないけど、エンジーの町にいる副執事にも伝えておいてくれる? きっと心配しているだろうから」
『任せておけ。戻ったらほれ、あのベリーの砂糖漬けにしたのをくれれば良い。それじゃ、行って来るぞ』

 そう言うと、開いていた窓からパタパタと飛んで行った。

「ネイサンが連絡してくれるなら一安心ね。私たちも何とかして早くモーモーの肝を入手しないと!」
「そうですわね。真っ白いネズミみたいな愛らしい生き物だって聞いたので、私実は会えるの楽しみにしているのですけれど」
「あんな苦い葉っぱを処理してくれている可愛い獣を狩るのは気が引けるけど、今回だけは勘弁してもらいましょう。ゾアが弓でサクッと眠らせてくれればすぐだわね」
「まー見当たらないものはどうしようもないわよね。さ、じゃあ今日も支度して頑張りましょっか」

 私たちは身支度をすると、お馴染みになった感のある祖父母や町の人の期待に満ちた目に見送られてミラークの群生地へ出発した。

 だが、気合を入れて行ったにも関わらず、モーモーはやはり現れず。その日はシカとヘビを捕獲したので、その晩はハーブを使ったシカの串焼きとヘビのタレ焼きを堪能し、また見た目は若いお年寄りたちと歌い踊るのだった。
 ……だって夜はやることないしね。恋する乙女でもストレス発散は必要なのよ。



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