DOTING WAR~パパと彼との溺愛戦争~

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

文字の大きさ
上 下
3 / 33

自身の問題点

しおりを挟む
「ゾア!」
「エヴリン、久しぶり~♪」

 親友のゾア・モーランは上級魔族のエルフ族である。私より一つ上なのだが、上級魔族の中でも屈指の長命種族のため、見た目は私より幼く見えるが、中身は私より相当しっかり者である。プラチナブロンドの長い髪と金色の瞳がお人形さんのようで大変可愛らしい。ちなみに銀狼族のキアル・ソーラー(二十歳)という騎士団の婚約者がいる。今年中には結婚予定だ。

「どうしたのそんな悩み多き乙女みたいな顔して?」
「悩み多き乙女だから相談したいんじゃないの」

 お茶に誘ったゾアは、私の愚痴をふんふんと聞いてくれた。

「──つまりは結婚適齢期に入ったのに、父親が結婚なんてまだまだ早いとか言うし、グレンはプロポーズどころか自分を好きかどうかも分からない、特性から万が一相思相愛だとしても、国を治めることは難しそうと。こういうことで良いかしら?」
「ま、まあそういうことね」
「バカじゃないのエヴリン」

 いつものごとく、見た目から想像も出来ないほどの一刀両断ぶりである。

「で、でもねゾア」
「あのねえ、父親ってのは、娘がどんな出来た結婚相手連れて来ても嫌がるもんなのよ普通は。それに陛下は王妃様を亡くされてて、一人娘なのだから当然でしょ?」
「だけど過保護って言うか、愛情過多って感じで」
「嫌われるより良いじゃないの。ただそんなことは問題ではなくて、一番の問題はグレンの気持ちじゃない。エヴリン一人で悩んでたところで、相手が何とも思ってない、ただの幼馴染み感情だった場合、彼の迷惑でしかないじゃないのよ」
「あ……」

 そうだ。私は本当にバカである。小さな頃から優しくして貰っているからと言って、彼が私を好きである保証などなかったわ。

「告白でもしてみたら? 私だってキアルに告白したわよ? あの酒飲んで仲間内でワイワイするのだけが楽しいってアホを恋愛脳にするまで大変だったけど、今は何とか私との時間も大切にするようになったわ」
「──告白? いやいや、私王女なのよ一応」
「……ああ、そうだったわね。どうも子供の頃から冒険ごっこだの木登り対決だの、男の子顔負けの遊びっぷりが印象に残っているものだから、王女という感覚がいつも希薄なのよねえ」
「…………」
「今は確かに大人しく振る舞ってはいるけれど、エヴリンあなた、お茶会とかより外で剣を振り回したり狩りに行ったり、洞窟探検とか山登りみたいな方が好きでしょう?」
「まあ……嫌いではないわね」
「刺繍したり洋服縫ったり、お菓子作ったりお洒落をするとか、そういった淑女的なこと、今はやってるのかしら?」
「やって、はいないわね。細かいの苦手で……あ、でも教養とかマナーとかはもちろん学んだわよ?」

 ゾアがテーブルにバン、と音を立てて手を置いた。

「そんなの当然でしょう! あのね、いくら竜族でたまたま美人でスタイルも良く育とうが、野山を駆け回るのが大好きな野性味あふれる王女と結婚したいって男性がそんなに沢山いると思う? エヴリンは剣だって無駄に強いんだし、男としてのプライドずたずたよ」

 確かに返す言葉もない。
 趣味でやっていたのに、本来の負けず嫌いが発動してせっせと鍛錬していたら強くなってしまった。
 男性に勝てるのが嬉しくてまた鍛錬したら、竜族の筋力と頑健さもあいまって騎士団でも大抵の男性の手合わせで引けを取らない実力がついてしまったのである。いくら鍛えても見た目はごつくならないのが竜族の特性で、そこは女としてはとても感謝しているのであるけども。
 グレンは夜しか仕事に来ないので手合わせしたことはないし、彼に見られるのが嫌だったので、昼間しか剣は持たないと決めている。

「……グレンはもっと大人しい淑女の方が好きかしら?」
「知らないわよ、私はグレンじゃないのだから。ただ、エヴリンにはいつも優しかったから、それなりに好意は持っているとは思うけど」
「そう? そうかしら?」
「ただ騎士団の仕事は天職だって前にも言ってたし、騎士辞めて次期国王になりたいかっていうとどうかしらねえ? ──そもそもあなたと結婚したいとまで思っているかどうか……ああエヴリン、そんな死んだ魚みたいな目をしないでちょうだい。私が悪いみたいじゃないのよ」
「やっぱり諦めるべきかしらね……」

 こんなレディーとしてはかなりガサツな、しかも王女を妻にしたい男性なんてそうそういないだろう。でも、グレン以外の人と結婚なんて考えたくないのよね……。
 どんよりとした私を眺めていたゾアは、ぽんぽんと肩を叩いた。

「王女であるあなたからは言えないのは分かるわ。……だから、国王陛下に婿募集をして貰えばいいんじゃないかしら?」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

君の小さな手ー初恋相手に暴言を吐かれた件ー

須木 水夏
恋愛
初めて恋をした相手に、ブス!と罵られてプチッと切れたお話。 短編集に上げていたものを手直しして個別の短編として上げ直しました。 ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

ポンコツクールビューティーは王子の溺愛に気づかない

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
友好国であるラングフォード王国の美丈夫で有名な王子ルークの元に嫁いで来た、艶やかな長い黒髪と青い瞳のきらめくような美貌で広く知られるウェブスター王国第三王女のエマ。  お似合いの美男美女と国民に祝福されたが、エマはとある理由から終始緊張を強いられていた。どうしても隠しておきたい秘密があったからだ。  そんな彼女の内面の葛藤に気づかぬルークは、子供の出会った頃のエマとあまりに違う雰囲気に困惑していた……。  長年の片思いと己のイメージを守らねばと必死な恋愛ポンコツクールビューティーの姫と、子供の頃から好意を抱いていた姫の変化に戸惑う王子の、結婚から少しずつお互いの仲を深めていくラブコメ。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

わたしのことはお気になさらず、どうぞ、元の恋人とよりを戻してください。

ふまさ
恋愛
「あたし、気付いたの。やっぱりリッキーしかいないって。リッキーだけを愛しているって」  人気のない校舎裏。熱っぽい双眸で訴えかけたのは、子爵令嬢のパティだ。正面には、伯爵令息のリッキーがいる。 「学園に通いはじめてすぐに他の令息に熱をあげて、ぼくを捨てたのは、きみじゃないか」 「捨てたなんて……だって、子爵令嬢のあたしが、侯爵令息様に逆らえるはずないじゃない……だから、あたし」  一歩近付くパティに、リッキーが一歩、後退る。明らかな動揺が見えた。 「そ、そんな顔しても無駄だよ。きみから侯爵令息に言い寄っていたことも、その侯爵令息に最近婚約者ができたことも、ぼくだってちゃんと知ってるんだからな。あてがはずれて、仕方なくぼくのところに戻って来たんだろ?!」 「……そんな、ひどい」  しくしくと、パティは泣き出した。リッキーが、うっと怯む。 「ど、どちらにせよ、もう遅いよ。ぼくには婚約者がいる。きみだって知ってるだろ?」 「あたしが好きなら、そんなもの、解消すればいいじゃない!」  パティが叫ぶ。無茶苦茶だわ、と胸中で呟いたのは、二人からは死角になるところで聞き耳を立てていた伯爵令嬢のシャノン──リッキーの婚約者だった。  昔からパティが大好きだったリッキーもさすがに呆れているのでは、と考えていたシャノンだったが──。 「……そんなにぼくのこと、好きなの?」  予想もしないリッキーの質問に、シャノンは目を丸くした。対してパティは、目を輝かせた。 「好き! 大好き!」  リッキーは「そ、そっか……」と、満更でもない様子だ。それは、パティも感じたのだろう。 「リッキー。ねえ、どうなの? 返事は?」  パティが詰め寄る。悩んだすえのリッキーの答えは、 「……少し、考える時間がほしい」  だった。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

処理中です...