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前略、ボスマダーイの腹の中より。
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「………うぁ?………プルちゃんプルちゃん、生きてる?」
「………んぅぅ………」
ボスマダーイに食べられた私とプルちゃんは、何だか池のような水溜まりのそばにある柔らかい弾力のある何かの上で目が覚めた。
少しだけ気を失っていたようだ。
まだ消化もされずに胃の中なのだろう。
一応プルちゃんも私もペンダントしてるし、防御魔法は効いてるはず。
「良かったねぇ助かって」
私はほうっと息をついた。
「いや全然助かってねぇからな?そもそも何でハルカも飛び込むんだよ!」
プルちゃんが怒る。
「………だってプルちゃんが飛ばされて落ちてったから、つい」
「つい、じゃねぇよ!
俺様はな、ずーっと一緒に暮らしてて分かってると思うがな、飛べるの。な?
ハルカが俺の動きを邪魔しなければ飛んで船に戻れたの」
「………あ………………私は無駄死に?」
「だから死んでねえよまだ。クラインは心臓にダメージ食らってるだろうけどなぁ」
私はいつも咄嗟に体が動いてしまって後で後悔する。でも仕方がないのだ。
後悔というのは先には出来ないものなのだから。
「でもさ、このままだと確実に消化待ちだよね?」
「だなぁ。まあ簡単にはやられないだろうが怪我はしそうだよな」
んしょ、とプルちゃんが立ち上がった。
「とりあえず、精霊さんズ出せるか?」
「やってみる」
私が呼び掛けると普通に精霊さんズが現れた。
「ハルカ、なんで魚に食べられてるの?」
「もう!ハルカいなくなると私たちのオヤツ事情が大変な事になるじゃない」
「少しは自分の行動に責任を持って欲しいわ」
早々に説教された。
「ごめんなさい。以後があれば気をつけます」
ペコペコ謝っていると、プルちゃんが、
「まあ説教は後でいいとしてさ、ちっと船のクラインまで使いを頼みたいんだけど。誰か出来るか?」
と割り込んできた。
「面倒じゃない?パーっと火か雷魔法でどてっ腹に穴開けて出ましょうよ」
「ノーファイヤーノーサンダー!!」
思わず私は叫んで立ち上がる。
旨味が増す大物を速攻で焼いては興醒めである。
何のために待っていたと思うんですか。刺身で先ず戴くのが掟じゃないですか。
焼くのもいいけど、こんなとこで焼いたら海の水でびちゃびちゃになって食べられたもんじゃないでしょうが。
却下却下却下!
私は説教されていたのも忘れて精霊さんズに反論し、それは命より大事なことなのかと再び説教リターンを食らってしまった。
そうじゃない、そうじゃないけれど、………でもボスマダーイの刺身………。
口ごもる私を呆れたような目で見ながら、
「………まぁそんな訳だから、何とか生で食えるよう捕獲したい。で、クラインに目一杯網を広げて待機をしてもらうように伝えてくれ」
「分かった。じゃ行ってくるわね」
パタパタと消えていく精霊さんズの一人を見送ってから、私はアイテムボックスに入っている緑茶を取り出し、ついでに白玉あずきも出した。
「………おい、何やってんだハルカ」
「ん?ほら、腹が減ってはナンとやらと言うじゃありませんかダンナ。この白玉とつぶあんのコラボがまたいい仕事してるんですよ」
「魚の胃の中で食うものなのか?」
「おやつと食事は時と場所を選ばず。どんなときにも食べ物さえ食べてれば人間どうにかなるものよ」
「言ってる事は至極まっとうそうだが、俺は人間じゃないからな?」
「あーそうね。じゃ、要らないか。じゃ私だけ」
私はプルちゃんの白玉あずきをしまおうとして、ガシッと手首を掴まれた。
「ハルカの詫びの気持ちを受け入れられないほど俺様は器が小さい妖精じゃない」
「本音プリーズ」
「食う」
私たちは二人して魚の内臓に囲まれて白玉あずきを食べ、緑茶を啜りながら、クライン達からの返事を待つのであった。
私も、大分物事に動じなくなってきたものだ。
「なあ」
「ん?」
「ちょっと水量が、つうか海水か胃液なのか不明だが、の量が増えてると思わんか」
そう言えば、さっきまで水際まで三メートルはあったと思うが、今は一メートルぐらいである。
「………このまま上がって来たら溺れるじゃない」
防御魔法だ何だと言っても自動的に酸素なんて作れない。いや出来るのかも知れないが私にはやり方が分からない。
「やだー、また溺れて死ぬのやだー。早く出たいぃぃぃーっ」
「だったらスパッと斬ろうぜ、俺がプル太郎侍になるからさ」
「クライン達が網広げてなかったら、海の底にボスマダーイの旨味の詰まった身が沈むからまだダメよぅー」
「ああもう食い意地も少しは海の底に沈め!!
じゃ俺はプル太郎侍にチェンジしとくから」
プルちゃんは、ペンダントのボタンをポチっと押しては、
「おっとこいつはウッカリだ」
「お戯れはお止め下さいませーあーれー」
「ジュワ!ジュジュワ!!」
などと(彼にとっては)ハズレ変身を繰り返しては解除して、ようやくプル太郎侍になった時には大分体力を消耗していた。
そんな中でもじわじわと水位が上がって来るのを見ながら、私は精霊さんズが戻るのをひたすら待つのであった。
「………んぅぅ………」
ボスマダーイに食べられた私とプルちゃんは、何だか池のような水溜まりのそばにある柔らかい弾力のある何かの上で目が覚めた。
少しだけ気を失っていたようだ。
まだ消化もされずに胃の中なのだろう。
一応プルちゃんも私もペンダントしてるし、防御魔法は効いてるはず。
「良かったねぇ助かって」
私はほうっと息をついた。
「いや全然助かってねぇからな?そもそも何でハルカも飛び込むんだよ!」
プルちゃんが怒る。
「………だってプルちゃんが飛ばされて落ちてったから、つい」
「つい、じゃねぇよ!
俺様はな、ずーっと一緒に暮らしてて分かってると思うがな、飛べるの。な?
ハルカが俺の動きを邪魔しなければ飛んで船に戻れたの」
「………あ………………私は無駄死に?」
「だから死んでねえよまだ。クラインは心臓にダメージ食らってるだろうけどなぁ」
私はいつも咄嗟に体が動いてしまって後で後悔する。でも仕方がないのだ。
後悔というのは先には出来ないものなのだから。
「でもさ、このままだと確実に消化待ちだよね?」
「だなぁ。まあ簡単にはやられないだろうが怪我はしそうだよな」
んしょ、とプルちゃんが立ち上がった。
「とりあえず、精霊さんズ出せるか?」
「やってみる」
私が呼び掛けると普通に精霊さんズが現れた。
「ハルカ、なんで魚に食べられてるの?」
「もう!ハルカいなくなると私たちのオヤツ事情が大変な事になるじゃない」
「少しは自分の行動に責任を持って欲しいわ」
早々に説教された。
「ごめんなさい。以後があれば気をつけます」
ペコペコ謝っていると、プルちゃんが、
「まあ説教は後でいいとしてさ、ちっと船のクラインまで使いを頼みたいんだけど。誰か出来るか?」
と割り込んできた。
「面倒じゃない?パーっと火か雷魔法でどてっ腹に穴開けて出ましょうよ」
「ノーファイヤーノーサンダー!!」
思わず私は叫んで立ち上がる。
旨味が増す大物を速攻で焼いては興醒めである。
何のために待っていたと思うんですか。刺身で先ず戴くのが掟じゃないですか。
焼くのもいいけど、こんなとこで焼いたら海の水でびちゃびちゃになって食べられたもんじゃないでしょうが。
却下却下却下!
私は説教されていたのも忘れて精霊さんズに反論し、それは命より大事なことなのかと再び説教リターンを食らってしまった。
そうじゃない、そうじゃないけれど、………でもボスマダーイの刺身………。
口ごもる私を呆れたような目で見ながら、
「………まぁそんな訳だから、何とか生で食えるよう捕獲したい。で、クラインに目一杯網を広げて待機をしてもらうように伝えてくれ」
「分かった。じゃ行ってくるわね」
パタパタと消えていく精霊さんズの一人を見送ってから、私はアイテムボックスに入っている緑茶を取り出し、ついでに白玉あずきも出した。
「………おい、何やってんだハルカ」
「ん?ほら、腹が減ってはナンとやらと言うじゃありませんかダンナ。この白玉とつぶあんのコラボがまたいい仕事してるんですよ」
「魚の胃の中で食うものなのか?」
「おやつと食事は時と場所を選ばず。どんなときにも食べ物さえ食べてれば人間どうにかなるものよ」
「言ってる事は至極まっとうそうだが、俺は人間じゃないからな?」
「あーそうね。じゃ、要らないか。じゃ私だけ」
私はプルちゃんの白玉あずきをしまおうとして、ガシッと手首を掴まれた。
「ハルカの詫びの気持ちを受け入れられないほど俺様は器が小さい妖精じゃない」
「本音プリーズ」
「食う」
私たちは二人して魚の内臓に囲まれて白玉あずきを食べ、緑茶を啜りながら、クライン達からの返事を待つのであった。
私も、大分物事に動じなくなってきたものだ。
「なあ」
「ん?」
「ちょっと水量が、つうか海水か胃液なのか不明だが、の量が増えてると思わんか」
そう言えば、さっきまで水際まで三メートルはあったと思うが、今は一メートルぐらいである。
「………このまま上がって来たら溺れるじゃない」
防御魔法だ何だと言っても自動的に酸素なんて作れない。いや出来るのかも知れないが私にはやり方が分からない。
「やだー、また溺れて死ぬのやだー。早く出たいぃぃぃーっ」
「だったらスパッと斬ろうぜ、俺がプル太郎侍になるからさ」
「クライン達が網広げてなかったら、海の底にボスマダーイの旨味の詰まった身が沈むからまだダメよぅー」
「ああもう食い意地も少しは海の底に沈め!!
じゃ俺はプル太郎侍にチェンジしとくから」
プルちゃんは、ペンダントのボタンをポチっと押しては、
「おっとこいつはウッカリだ」
「お戯れはお止め下さいませーあーれー」
「ジュワ!ジュジュワ!!」
などと(彼にとっては)ハズレ変身を繰り返しては解除して、ようやくプル太郎侍になった時には大分体力を消耗していた。
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