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獲るどーーー!
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「おやハルカさん達!ようこそいらっしゃいました。クライン様とのご結婚、心よりお喜び申し上げます」
商業ギルドにやって来たハルカ一行は、ギルマスのザギールの部屋にいた。
冒険者ギルドのギルマス、ジェイソンも連絡を受けたようで慌ててやって来た。
切れ者で神経質そうな細身の眼鏡男子のザギールと、熊の獣人で豪快キャラのオッサンのジェイソンは、一見全く反りが合わないような印象を受けるが、実は結構仲良しである。
「ハルカちゃんおめっとさん。海鮮丼屋『はちべえ』ももうすぐオープンだよな?仕入れルートもちゃんと確保してるから安心してくれよ。
ところで、バイトの研修だっけか、上手く言ってるかい?」
各地の店舗のために雇われた孤児院の子供や責任者として雇われた大人は、全部ひとまとめでリンダーベルで合宿のようにして研修に入っている。
リンダーベルの宿屋一軒を一時的に借りきって寝泊まりしてもらい、屋敷の離れの厨房で各店舗の調理方法や接客などを学んでもらっている。
ひとまとめに集めたのは教えるメンツが少ないのと、移動させるより効率がいいからである。
みんな中々勉強熱心で、ミリアン達も教えがいがあると熱血教師ばりにあれこれ学ばせているようだ。
「ありがとうございます。こっちの皆さんも頑張ってくれてるみたいで、オープンも遅れないで済みそうですよ。あ、こちらお土産です」
甘いもの好きのジェイソンにはケーキ詰め合わせ、お酒好きなザギールには塩辛や炒り豆などのツマミ系と日本酒、白ワインを渡す。
「いつもすみません。有り難く頂きますね」
「悪いな!ハルカが来るとこれが楽しみでよぉ」
二人とも嬉しそうに受け取ってくれて何よりである。
「ところで、今日はマダーイの件で来てまして」
クラインが早速といった様子で話を振る。
「おお、今はかなりでかいサイズのが大漁だぞ!この時期のマダーイは脂が乗ってて美味いぜ」
「そうですね。………ただ、ちょっと大物過ぎるのも居ましてねぇ」
ザギールさんはため息をついた。
「今年は気候がいいのか、1メートル2メートルクラスの大きめのマダーイがゴロゴロ獲れるんで、漁師達は喜んでるんですが、ちょっと扱いに困る大きさのモノまで出てまして、網が破壊される事もあるのが悩みどころなんですよ」
「大きいって言うとどんぐらいだ?」
プルが興味深そうに聞いた。
「30メートルから50メートルクラスなんですよ。クジーラみたいでしょ」
「船よりでかくねソレ?」
「そうなんだよ!もう網の修理費がエライ事で、漁師も頭が痛いんだ」
「あの………サイズが大きいと大味って言いますけど、マダーイもそうですか?」
ハルカがジェイソンに尋ねた。
「いや、脂のりも変わらないし、むしろ身が締まってて旨味が増すな」
「そうですか!じゃあ捕獲しましょう。ちょうど結婚式の料理にマダーイ使いたかったんですよ。一番大きな船出せますか?」
「え?捕獲って………今の話聞いてたかハルカ。網がバリバリ破られる大物だぞ?」
ジェイソンが呆れた顔でハルカを見た。
「このクラインは、過去クラーケンをさっくりと切り捨てた強い方ですし、プルちゃんも中々やりますし、今回は聖獣であるラウールも一緒に来てるので、問題ないと思います」
「おいお前も働けよハルカ」
プルがハルカをつついた。
「船酔いしなきゃ頑張りますけどもー、所詮後方部隊ですからー」
少々チートな自分の魔法なども極力他人に見せたくないハルカは、なるべくクライン達だけでどうにかして貰いたいと思っていた。
「そうか!船なら漁師会の会長んとこ行って聞いてくるから待ってろ!報酬も弾むからな!」
喜びいさんで飛び出すジェイソンと、
「じゃ私も根回しを………」
といそいそ消えていくザギールを見送ると、クラインがハルカに向き直った。
「おいハルカ。1、2メートルだって充分でかいだろう?なんでワザワザ面倒な大物狙うんだよ?魔物クラスじゃないか」
《そうじゃよ。ハルカやクラインが怪我でもしたらとうすんじゃ。結婚式の主役じゃろ》
「おいクソジジイ俺様はいいのか怪我しても」
《大丈夫じゃ、いざとなれば飛んで逃げられるじゃろお前さんは。まあ魔法も使えるしなワシもお前も》
「そりゃそうだがな」
「みんな、大事な事を忘れてるよ?」
「「《………なんだ(なんじゃ)》」」
「ただでさえ美味しいマダーイが、大きいと『旨味が増す』んだよ?」
「………そうか………」
「そりゃあ、しょうがねえよなぁ………」
《より美味い方がええしのぅ》
ハルカと暮らすようになった彼らは、マインドが既に『美味しいは正義』に自然にシフトチェンジされていた事にはあまり気づいていなかった。
そして昼すぎ。
慌ただしくハルカ達はこの町最大の船を借りて、ジェイソンさんを操舵士に、マダーイ獲得に港を出発したのだった。
商業ギルドにやって来たハルカ一行は、ギルマスのザギールの部屋にいた。
冒険者ギルドのギルマス、ジェイソンも連絡を受けたようで慌ててやって来た。
切れ者で神経質そうな細身の眼鏡男子のザギールと、熊の獣人で豪快キャラのオッサンのジェイソンは、一見全く反りが合わないような印象を受けるが、実は結構仲良しである。
「ハルカちゃんおめっとさん。海鮮丼屋『はちべえ』ももうすぐオープンだよな?仕入れルートもちゃんと確保してるから安心してくれよ。
ところで、バイトの研修だっけか、上手く言ってるかい?」
各地の店舗のために雇われた孤児院の子供や責任者として雇われた大人は、全部ひとまとめでリンダーベルで合宿のようにして研修に入っている。
リンダーベルの宿屋一軒を一時的に借りきって寝泊まりしてもらい、屋敷の離れの厨房で各店舗の調理方法や接客などを学んでもらっている。
ひとまとめに集めたのは教えるメンツが少ないのと、移動させるより効率がいいからである。
みんな中々勉強熱心で、ミリアン達も教えがいがあると熱血教師ばりにあれこれ学ばせているようだ。
「ありがとうございます。こっちの皆さんも頑張ってくれてるみたいで、オープンも遅れないで済みそうですよ。あ、こちらお土産です」
甘いもの好きのジェイソンにはケーキ詰め合わせ、お酒好きなザギールには塩辛や炒り豆などのツマミ系と日本酒、白ワインを渡す。
「いつもすみません。有り難く頂きますね」
「悪いな!ハルカが来るとこれが楽しみでよぉ」
二人とも嬉しそうに受け取ってくれて何よりである。
「ところで、今日はマダーイの件で来てまして」
クラインが早速といった様子で話を振る。
「おお、今はかなりでかいサイズのが大漁だぞ!この時期のマダーイは脂が乗ってて美味いぜ」
「そうですね。………ただ、ちょっと大物過ぎるのも居ましてねぇ」
ザギールさんはため息をついた。
「今年は気候がいいのか、1メートル2メートルクラスの大きめのマダーイがゴロゴロ獲れるんで、漁師達は喜んでるんですが、ちょっと扱いに困る大きさのモノまで出てまして、網が破壊される事もあるのが悩みどころなんですよ」
「大きいって言うとどんぐらいだ?」
プルが興味深そうに聞いた。
「30メートルから50メートルクラスなんですよ。クジーラみたいでしょ」
「船よりでかくねソレ?」
「そうなんだよ!もう網の修理費がエライ事で、漁師も頭が痛いんだ」
「あの………サイズが大きいと大味って言いますけど、マダーイもそうですか?」
ハルカがジェイソンに尋ねた。
「いや、脂のりも変わらないし、むしろ身が締まってて旨味が増すな」
「そうですか!じゃあ捕獲しましょう。ちょうど結婚式の料理にマダーイ使いたかったんですよ。一番大きな船出せますか?」
「え?捕獲って………今の話聞いてたかハルカ。網がバリバリ破られる大物だぞ?」
ジェイソンが呆れた顔でハルカを見た。
「このクラインは、過去クラーケンをさっくりと切り捨てた強い方ですし、プルちゃんも中々やりますし、今回は聖獣であるラウールも一緒に来てるので、問題ないと思います」
「おいお前も働けよハルカ」
プルがハルカをつついた。
「船酔いしなきゃ頑張りますけどもー、所詮後方部隊ですからー」
少々チートな自分の魔法なども極力他人に見せたくないハルカは、なるべくクライン達だけでどうにかして貰いたいと思っていた。
「そうか!船なら漁師会の会長んとこ行って聞いてくるから待ってろ!報酬も弾むからな!」
喜びいさんで飛び出すジェイソンと、
「じゃ私も根回しを………」
といそいそ消えていくザギールを見送ると、クラインがハルカに向き直った。
「おいハルカ。1、2メートルだって充分でかいだろう?なんでワザワザ面倒な大物狙うんだよ?魔物クラスじゃないか」
《そうじゃよ。ハルカやクラインが怪我でもしたらとうすんじゃ。結婚式の主役じゃろ》
「おいクソジジイ俺様はいいのか怪我しても」
《大丈夫じゃ、いざとなれば飛んで逃げられるじゃろお前さんは。まあ魔法も使えるしなワシもお前も》
「そりゃそうだがな」
「みんな、大事な事を忘れてるよ?」
「「《………なんだ(なんじゃ)》」」
「ただでさえ美味しいマダーイが、大きいと『旨味が増す』んだよ?」
「………そうか………」
「そりゃあ、しょうがねえよなぁ………」
《より美味い方がええしのぅ》
ハルカと暮らすようになった彼らは、マインドが既に『美味しいは正義』に自然にシフトチェンジされていた事にはあまり気づいていなかった。
そして昼すぎ。
慌ただしくハルカ達はこの町最大の船を借りて、ジェイソンさんを操舵士に、マダーイ獲得に港を出発したのだった。
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