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パレードから逃げたい。

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 どうやらプルは喉が渇いて起きたらしく、冷蔵庫から炭酸とグレープジュースを合わせたものを出してグラスに注ぐと一気に半分以上飲み干し、

「ぷはーっ!やっぱり炭酸は刺激がたまらんなー」

 などと言いながら再度目一杯注ぐとテーブルに置いた。ビールを飲むオッサンのようである。

「ラウールは何か飲むか?」

《ワシは飲み物じゃなくて、ほれあのひゃっこいの………そうじゃ、バニラアイスがええのう》

「お、いいね。俺様もジュースに乗せよう」

 ラウール専用の皿にバニラアイスを盛り、自分のグラスにも乗せると、ひょいっとハルカの座るソファーの隣に腰かけた。

 皿のバニラアイスを美味しそうにペロペロ舐めてるラウールを見ながら、

「どうでもいいけど、プルちゃんいつまでラウールを足がわりにしてるのよ。あんなのでも聖獣と呼ばれてるのよ。それに2000歳越えのジー様なんだからね」

「奴が聖獣なら俺様だって女神の使いの妖精だし。厳かさ加減でいやぁ負けてないし。
 いいんだよ、ラウールとはマブダチだから。なーラウール」

《うむそうじゃな。少なくとも足がわりにされても「あんなの」呼ばわりするハルカの言葉の方がピュアな心が傷つくのぅ。まぁ別にいいがな》

「あばばばばっ」

 ハルカは庇ったつもりがうっかりディスってた事に今さら気づき、冷や汗を流しながら謝った。

「まあいいじゃん。一緒に暮らしてる仲間っつうかファミリーだしな。無礼講無礼講。
 ………で、ハルカはどうして溜め息ばっかついてんだ?止めたいのか結婚?
 いいぞ、ここはおとーさんが一肌脱いで桜吹雪を一つ」

「見せなくていいし、誰がおとーさんよ誰が。結婚も、止めたい訳じゃないのよ」


 ハルカはここ数日頭を悩ませてるパレード問題についてプルに相談した。


「ほー。結婚は人間には一大イベントなんだろ?
 普通は派手にしたいもんじゃないのか?滅多に出来んぞ、パレードなんて」

「滅多に出来ないからやりたいってもんでもないでしょうが。むしろ、式の後に籍入れたら終わり、ってのが一番私の望むカタチなんだけどねぇ………」

 ハルカはうーーん、と腕を伸ばしてソファーにもたれた。

「なるほどなー。………しかしパレード見物で人が来るとか、祭りが派手で賑やかになるってのは、国の経済の活性化になるもんだろ?金は動かさんと回らんし」

「そうだよねー………経済………経済の活性化かぁ………あっ!」

 ハルカは目を見開いた。

「経済が活性化すればいいなら、店を出そうよ、全部の町に!
 パレードでお金使うより有意義じゃないの。そうよそれよ!」

 きらっきらした目で見つめるハルカに、プルは首を傾げた。

「いや、それはいい話だとは思うが、人手とか居ないんだろ?
 またレストランと同じように沢山作るのもハルカはキツいだろ?仕事量増えるし」

「専門店にしちゃえば良いのよ。うどん屋、ラーメン屋、どら焼き屋、天丼屋とかまあ何でもいいんだけど。
 店舗も小さいとこで済むし、品数が少なければバイトさんも短期間で覚えられるでしょ作業工程とか。私達が付きっきりでいなくても大丈夫だろうし。
 あー、日本では普通にそれしか売ってないって専門店が腐るほどあったのになんで気づかなかった私っ!」

 ハルカはソファーに後頭部をごんごんぶつけた。


 この国では外食店は基本色んなメニューを用意してるような店が多いので、自分もファミレス感覚で多種類味わえる店を出したのだが、別にパティスリーだってケーキだけでも良かったし、クッキーやパウンドケーキだけ売る店でも良かったのだ。カフェスペースだってなくてもいい。

「今日はラーメン食べたいな」
「天丼食べたい」

 とか、ピンポイントで食べたいモノがある店。経費も安い。
 おお、考えれば考えるだにいい案じゃなかろうか。

 プルも、かなり乗り気だ。
 多分適当に言ったどら焼き屋にハートを直撃されただけだと思うが、応援があるのはありがたい。


「クラインにパレード止めて、その分のお金を専門店出店に充てるのはどうか相談してみますかー」

 ハルカは、久しぶりに暗闇を照らす一条の光を見たのだった。


 プルは、にやーっと笑うと、

「どうしても頷かせたかったらな、耳を貸せ」

 と、ハルカに耳打ちしたが、その内容は、パレードがメンタル損傷全治6ヶ月とするならば、全治1ヶ月程度のものであった為、究極の選択として頷くしかなかった。


 そう、ようは勝てばいいのだ。


 ハルカはそう思ったが、奨学金を受けるため国立大まで行ってたにも関わらず、

「メンタル損傷しない方法があるんじゃないか」

 という基本的なところを考えないところが、ハルカのハルカたるゆえんである。
 そして、そんなハルカがプルは好きなのだった。





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