上 下
125 / 144
連載

肩透かし。

しおりを挟む
「クラインっ、よくハルカに結婚を許して貰えたなっ!!いやぁめでたいめでたい!
 大事にしないとすぐポイされるからな?本当に心から尽くせよ?浮気なんかしたら一発アウトだぞ?」

「もうっ、あと何年待てばいいのかと私達は内心気が気じゃなかったのよ?寿命が来る前で良かったわ。
 クラインたら自分の出来る限りのアプローチをしていると聞いてたけど、全然経過報告もないし。
 私それとなくハルカから状況を探りだそうとつついてみたけどちっとも反応ないし。んもうっ、いつの間にかこそこそ二人で愛を育んでいたのね!
 あら、恋人同士の詮索なんて野暮だったわね、ダーリン♪
 あー、ようやくハルカが娘になってくれるのね………嬉しいわぁ」


「えー、そうですね、なんと言えばいいか、勿論私も嬉しいです………」



 王宮での国王陛下の謁見(クラインの独断)、と言う名目のお茶会で、クラインとハルカは、それぞれが糸目になっていた。


(………アプローチというのはどの辺りのことを言っているのだろう?全く分からないんですけど。
 え?まさか手を繋いだりしたのとかは、もしやそういうことなの?でも手なんて誰でも繋ぐよね?特別なことでもないよね?あれは愛を育んでたの?分かるかいなそんなこと。

 クラインが私を好きだとか愛してるみたいな事を言ったのは今まで聞いた覚えがないんだけど………いや、昨日初めて私が寝てると思って、勝手にぶつぶつと独り言言ってた時に聞いたな。
 私が本当に寝てたら聞いた覚えもないままなんじゃないのアレ?ねえ?

 あれ?待って待って。その場合、プロポーズはなかった事にならない?
 もし寝てた時もしくは寝たふりのままだったらプロポーズはノーカンだったよ絶対。

 ………それともまさか、それ以外のアプローチとかリアクションがあって、私が一切気づかなかったの?そうなの?え?私どんだけ恋愛中枢が死にかけてるの?
 自分でも若干疎い部分があるとは思ってたけど、まさか恋愛アルツハイマー?!

 クラインとの恋の気配なんて今までどこにあったの?女神さま教えてヒントだけでも。

 それに王妃様の「つついてみた」って何のこと?全然分からないんですけども!店に来た時?武道会の時?晩餐会の時?

 思い出せー、話をしたときの事を全て思い出すのよー自分っ。

 ………うわーもう常に話すとき緊張してたから食べ物の話した位しか記憶ないわ。まるっと覚えてない。何で食べ物の話の事しか覚えてないのかなー。むしろ緊張してても食べ物の話は覚えてるところに私の最大の問題があると思うけど、それはともかく、いやー本当にどうしてくれよう自分。

 ………いいやもう。アプローチ受けてましたー、よく考えたら私も好きだったのでプロポーズお受けしましたーって事で片付けよう。考えても無駄な気がする。頭痛い)


 脳内で沢山のクエスチョンと不安とが飛び交い、頭がぐるぐるしているハルカ。


(手繋いだだろ?行動で愛を語っただろ?常にそばにいて誰よりも話をしただろ?身辺の不埒なヤロウの接触は完全にブロックしてただろ?
 とどめは昨夜のプロポーズだ。

 ………まあ昨夜は正直、ハルカが起きてると分かってたら恥ずかしくてとても言えなかったかも知れないし、大変なミラクルではあるが、その運も含めて俺だ。

 いやもうしかし俺は頑張った。ものすごく頑張った。なんだかプル達には不憫なものでも見るような目をされていたが、ハルカだってあれだけアプローチしてたら伝わってた筈だよな俺の気持ちは)


 クラインは、脳内で大変都合のいい好意的解釈をして、見事に己の必死なアプローチの甲斐があって振り向いてもらえたと現実を大分ねじ曲げて昇華させていた。


「いや、ただですね父上、母上。
 大変申し上げにくいのですが、ハルカも仕事を辞めたくないと言っておりますし、我が国にとっても店舗やマーミヤ商会がなくなるのは大変な痛手です。
 ですから、裏からサポートもしたいですし、私が王族から公爵位でも賜って下るのが一番宜しいかと思っております」

「ふうん、いいんじゃない?
 僕らも楽しみなくなると困るし。ねえハニー?
 ちょうどハルカ達の住んでる裏側の方の領地空いてるしな」

「そうね。まあうちは長男もよく出来た子だし、跡継ぎもいるし、同性愛者のふりして逃げてる次男もいるから、心配要らないわよ?」

「っ、ミハイル兄上の嘘、バレてたんですか?」

「当たり前じゃないの。あの子小さい時からオッパイ大好きなんだもの。揉めるオッパイのない男になんて道端の石ほども興味ないわよ。よくあんな苦しい言い訳で見合いから逃げようと思ったわよね」

「どうせなら裸で寝室で男といちゃつく位の根性見せてくれりゃ褒めてやったのになぁ」

「本当よねえ。………あ、でも私達が知ってるのは黙っといてね。あと二年待っても結婚もせずに同じこと言って逃げるようなら、うちの騎士団でミハイルに叶わぬ想いを寄せてる子がいるから夜這いかけてもらうわ。案外嘘から出た誠になるかもだし。うふふっ」

(我が親ながら何て容赦ない………済まないミハイル兄さん、………超がんば)


 クラインは万が一バラしたと解った時点でターゲットが自分に変わることだけは確信し、仲良しの兄に心からのエールを送った。




 予想外に全く揉めることなくクラインとハルカの結婚式は、むしろ国王側から急かされる形で二か月後に決まった。





しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?

gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。 みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。 黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。 十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。 家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。 奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。