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春ってのは、春だねぇ。

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 翌朝。

 皆が集まった朝食でテンの、

「………ニコルちゃんとお、お付き合いすることになりました………」

 宣言で微笑ましく始まった和やかな席は、その後のクラインの、

「あ、俺とハルカも結婚する事になったから」

 発言でカオスに包まれた。

「ぶぉほっっっ!!なっ、おっ、クラインいつの間にそんな話になったんだ!」

 プルが飲んでいたミルクを吹き出し、真正面に座っていたミリアンとケルヴィンがミルクまみれになった。

「ちょっとプル!!この服下ろしたてなのよ!いやそれよりもハルカ!アタシ初めて聞いたわよっ親友じゃないのアタシ達?水くさいじゃない!!」

 ナプキンで顔や服のミルクを拭いながら、ミリアンはハルカに叫んだ。

「………いや、その、昨日そんな話になったばかりでですね。
 まさか今日朝っぱらからそんな話をするとはワタクシ夢にも思いませんで、事前に報告する間もなかったと言うか」

 顔を赤らめて糸目のままクラインを睨んだ。

 クラインは嬉しくて仕方がないといった顔で責めるようなハルカの視線を受け流し、

「お祝い事は早めに言うべきだろうと思って」

 としれっと言いながらオムレツをトーストに乗せてパクついた。

「………確信犯ですね」

「そうだね兄さん。気が変わらない内に外堀からどんどん埋めてく感じだよね。怖いね頭の回る拗らせ系は」

 こそこそとムルムルとフルフルがフライドポテトを頬張りながら小声で喋っていたが、

「誰が確信犯だ拗らせ系だ。お前ら数日は俺とハルカの分も働いて貰うからな」

 耳のいいクラインに聞かれて背筋を冷や汗が伝った。

「うぇっ?………あのー、クライン様達はどちらへ」

 ムルムルが問いかけると、

「決まっている。父上と母上への報告と挨拶だろ?結婚式の日取りの相談だろ?この家の隣に新築するマイホームの打ち合わせだろ?ウェディングドレスの採寸だろ?やることは沢山あるから急がないと。
 そういう訳でみんな、急で申し訳ないが仕事のフォローは宜しく頼む」

 胸ポケットからメモを取り出し何か思い出したのか細かい文字で書き加えていく。既に上の方にはぎっしりと箇条書きで何やら記されている。

 横目でそんなクラインを眺めながらも、

「あの、クライン?そんな沢山一気に出来ないと思うんだけど」

 とハルカは訴えた。
 クラインは、ハルカに優しげな眼差しを注ぎながら、

「ハルカ、出来る出来ないじゃない。『やる』んだ」

 と頭をなでなでしてきた。




 食後、馬車に載ってリンダーベルのレストランで仕事へ向かうミリアン達を下ろし、そのままクラインにドナドナされていく涙目のハルカを見送りながら、

「………クラインは、恋愛にはヘタレだったけどそれ以外はかなり出来る男だったの忘れてたな。囲い込みどころか捕獲完了してんじゃんか」

 プルが半分呆れたように呟くと、

「まぁ、ある意味お似合いの二人よね」

 とミリアンが苦笑した。

「次はテンペスト様ですかね」

 ムルムルが言い、含み笑いをした。

「………っ!!まだ付き合い出したばかりだ
ぞ」

「クライン様なんて交際0日ですよ」

 フルフルにまでからかわれ、

「まああれよね。とりあえず少しずつ見た目だけは違和感ないように大人に成長してもらわないと、うちのニコルが子供好きな犯罪者みたいになるからそこんとこ宜しく」

 とミリアンにも釘を刺された。
 テンも何か言い返そうとするのだが、気の利いた言葉が出てこない。
 
 むむむ、と不機嫌になっているとバケツと布巾を持って店から出てきたニコルがテン達を見て、笑顔で

「プルさん、姉さんおはよー」

 と声を掛けてきた。そして、

「テンちゃん、おはよー」

 とはにかんで手を振る。

「………おはよー、ニコルちゃん………」

 少し照れながら返事を返す。
 たちまち機嫌を直して制服に着替えに休憩室へ向かうテン達を見ていたプルは、


「いやはや………なんとも、春だねぇ………」


 などと緩く呟くと、自分も着替えないととのんびり休憩室へ続くのであった。





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