110 / 144
連載
ヴォルテン王国訪問【6】
しおりを挟む
元気になったヴォルテン王国の国王から、イアンと船で戻ってきたボリスから打ち明けられたようで、山の中で暴れてた厄介な魔物(と思われてたようだ)の討伐に対しての礼と、自分の健康を取り戻してくれた褒美は何がいい、と打診されたのは山から戻った日の夜の晩餐会の席である。
ハルカ達は晩餐会は流石に断れないのでとりあえず出ることにはしたが、仕事もあるし明日の朝イチで戻ると伝えている。
見た目「だけ」はハルカの父親に似ているシュテルファン国王は、ワイングラスがブランデーグラスのように大きなものに変わっていたが、チビチビ味わってるので1日三杯は守るようだ。
あれで三杯飲んだらボトル1本飲むのと変わらないと思うが、そんな事を口にして不敬罪になるのもバカらしい。
いい年したオッサンなのだ。自己責任であろう。
しかし、この国もご飯が美味しくない。
ハルカはげんなりしていた。
ケルヴィンさんがハルカ達が拐われたのがヴォルテン王国らしいと見極めた辺りで、何だかんだと理由をつけてヴォルテン王国への調味料の輸出は止めていたが、それまではショーユとミソ、マヨネーズなんかは入っていた筈なのだが。
確かに肉を焼いたステーキにはショーユが使われているようだが、血圧が100は軽く上がりそうなほどしょっぱい。
もうステーキの醤油煮である。
何の肉であるかも判別が難しい。
サラダも凄いことになっていた。
最初サラダだと判明するまでフォークで掻き分け探らなくてはならない程、親の仇(かたき)なのかと思うほどのマヨネーズ。
いや、マヨラーと言う呼び名がある位ですからね。
美味しいですよ?マヨネーズは。
でも限度と言うものがあると思うんだよね。
逆にスープはまともなコンソメ風の色合いだと安心して一口すすれば、ショーユ味だった。ブイヨン的な風味も一切ない。ただのうっすいショーユ味。
まだガルバン帝国の方が美味しかった。
………いや、あれ自分で作ったんだった。
なんでだ。
なんで美味しいモノを美味しいと感じる舌があるのに作るとこうなるのだ?
ハルカは苦行僧のようにただひたすら無表情にマヨネーズを限界までこそげおとしたレタスをかじり、肉の後に即スープを飲めば肉の味は薄まり、スープは濃くなるのでは、とかすかな希望でチャレンジしたら、濃い味がスープで口のなかいっぱいに広げられただけであった敗北感に心が折れないようにする事に必死で、国王が何か言ってるのに気づいたのは、隣のケルヴィンさんが足を小突いたからである。
「すっ、すみません!!昼間の山歩きの疲れからかぼんやりしてしまって。聞き返すのも失礼かとは思いますが差し支えなければ今一度………」
シュテルファン国王は笑顔で
「いや、こちらこそ失礼した。我が国のために働いて疲れておるのに返事を急いてしまった。
いやな、バカ息子達の愚かな行動の詫びと、森の魔物討伐と、私を救った褒美は何がいいかと聞いたのだよ」
「………ああ、それなら私は結構です」
討伐してないし。バイトさん増やしただけだし。エリクサー沢山あるし。
強いて言えば、あのバカ王子達にワンパンお見舞いしたい。
とは思うのだが、彼らも父親を想い、国民の暮らしを憂いた余りの行動と思えば理解も出来るだけに、怒りも中途半端だ。
しかしハルカは、自分の事については怒りのボーダーラインがかなり高いというか緩いので構わないのだが、ミリアンまで拐われると言う迷惑をかけてしまったことには腹を立てていた。結果的にはみんなも巻き込まれてしまっている。
「ただ、出来れば一つだけお願いが………」
「うむ、何でも言ってくれ」
「イアン様とボリス様に、私の仲間達への謝罪をお願いいたします」
ハルカの発言に、離れた席で食事をしていたボリスが顔を赤くして立ち上がる。
「謝罪?王族に謝罪を求めるのか平民のお前が?父上を助けた働きには感謝もしているし、森の魔物の討伐に対しても褒美を出すと言っているのに何様のつもりだ?!」
「………因みに、ボリス様は記憶力が儚くてあらせられるのでお忘れかも知れませんが、これでも私はサウザーリン王国の第3王子でございます。
大切な友人が拐われた上に、多大なる面倒ごとを押しつけて来たかと思えば、憂い事がなくなってもお礼ひとつ言う訳でもなく、己のやったことに対する反省の念も見えずにまるで自分の部下か何かのような粗雑な扱いには、流石に腹に据えかねるのですが」
ナプキンで口を軽く押さえたクラインは、虫けらでもみるかのような冷ややかな眼差しでボリスを見た。
「クッ、クライン殿はともかく、ほかの奴等は貴族でも何でもないただの平民ごときではな」
「………その平民ごときが解決できた問題にも対処出来ておられなかったのでしょう?王族でおられる貴方は?私達を見下せる権利がどこにあるのです」
室内の気温が5度ほど下がったような気がしたハルカは、クラインが自分以上に激おこである事に気がついた。
いくら他国の王族とは言え言いたい放題である。国王もいるのに大変まずいのではなかろうか。
ここは大人のケルヴィンさんに何とかしてもらおうと慌てて横を見ると、普段は穏やかなケルヴィンさんも険しい顔をしていた。
「僕これでも元S級冒険者だしコイツ久しぶりに全力で殺っていいかな」
みたいな顔をしている。
プルちゃんも「クソ不味い飯食わせた上に、女神の側近しかも妖精である俺様を平民呼ばわりとか………」と小声でブツブツ言ってるし、テンちゃんに目をやればダークフォースにすっかり飲み込まれたダー●・ベイダーみたいな黒いオーラを撒き散らしていた。
背後に控えていたトラちゃんまで『まだ使ってない毒薬ありますから、吹き矢に塗っておきますね。合図はフォークを置いたらと言うことで』とメモを出してきた。
全く頼んでないからね?私に一生フォーク持たせたままで暮らせと言うのかトラちゃん。
ミリアンに最後の望みをかけてすがるような目線を送ったが、「人の胸みてにやにやとスケベ面してた癖に何が王族よ………切り落としたいわ……」と吐き捨てるような呪いの台詞を唱えてたので思わず目を伏せた。
あかん。
謝罪1つお願いしただけなのに、なぜか【実録!ヤクザ東西大抗争!!『親父の仇はワシがとったる』鮮血の花道に最期に立つ者は!】というタイトルロールがハルカの脳内でエンドレス再生されていた。
ハルカ達は晩餐会は流石に断れないのでとりあえず出ることにはしたが、仕事もあるし明日の朝イチで戻ると伝えている。
見た目「だけ」はハルカの父親に似ているシュテルファン国王は、ワイングラスがブランデーグラスのように大きなものに変わっていたが、チビチビ味わってるので1日三杯は守るようだ。
あれで三杯飲んだらボトル1本飲むのと変わらないと思うが、そんな事を口にして不敬罪になるのもバカらしい。
いい年したオッサンなのだ。自己責任であろう。
しかし、この国もご飯が美味しくない。
ハルカはげんなりしていた。
ケルヴィンさんがハルカ達が拐われたのがヴォルテン王国らしいと見極めた辺りで、何だかんだと理由をつけてヴォルテン王国への調味料の輸出は止めていたが、それまではショーユとミソ、マヨネーズなんかは入っていた筈なのだが。
確かに肉を焼いたステーキにはショーユが使われているようだが、血圧が100は軽く上がりそうなほどしょっぱい。
もうステーキの醤油煮である。
何の肉であるかも判別が難しい。
サラダも凄いことになっていた。
最初サラダだと判明するまでフォークで掻き分け探らなくてはならない程、親の仇(かたき)なのかと思うほどのマヨネーズ。
いや、マヨラーと言う呼び名がある位ですからね。
美味しいですよ?マヨネーズは。
でも限度と言うものがあると思うんだよね。
逆にスープはまともなコンソメ風の色合いだと安心して一口すすれば、ショーユ味だった。ブイヨン的な風味も一切ない。ただのうっすいショーユ味。
まだガルバン帝国の方が美味しかった。
………いや、あれ自分で作ったんだった。
なんでだ。
なんで美味しいモノを美味しいと感じる舌があるのに作るとこうなるのだ?
ハルカは苦行僧のようにただひたすら無表情にマヨネーズを限界までこそげおとしたレタスをかじり、肉の後に即スープを飲めば肉の味は薄まり、スープは濃くなるのでは、とかすかな希望でチャレンジしたら、濃い味がスープで口のなかいっぱいに広げられただけであった敗北感に心が折れないようにする事に必死で、国王が何か言ってるのに気づいたのは、隣のケルヴィンさんが足を小突いたからである。
「すっ、すみません!!昼間の山歩きの疲れからかぼんやりしてしまって。聞き返すのも失礼かとは思いますが差し支えなければ今一度………」
シュテルファン国王は笑顔で
「いや、こちらこそ失礼した。我が国のために働いて疲れておるのに返事を急いてしまった。
いやな、バカ息子達の愚かな行動の詫びと、森の魔物討伐と、私を救った褒美は何がいいかと聞いたのだよ」
「………ああ、それなら私は結構です」
討伐してないし。バイトさん増やしただけだし。エリクサー沢山あるし。
強いて言えば、あのバカ王子達にワンパンお見舞いしたい。
とは思うのだが、彼らも父親を想い、国民の暮らしを憂いた余りの行動と思えば理解も出来るだけに、怒りも中途半端だ。
しかしハルカは、自分の事については怒りのボーダーラインがかなり高いというか緩いので構わないのだが、ミリアンまで拐われると言う迷惑をかけてしまったことには腹を立てていた。結果的にはみんなも巻き込まれてしまっている。
「ただ、出来れば一つだけお願いが………」
「うむ、何でも言ってくれ」
「イアン様とボリス様に、私の仲間達への謝罪をお願いいたします」
ハルカの発言に、離れた席で食事をしていたボリスが顔を赤くして立ち上がる。
「謝罪?王族に謝罪を求めるのか平民のお前が?父上を助けた働きには感謝もしているし、森の魔物の討伐に対しても褒美を出すと言っているのに何様のつもりだ?!」
「………因みに、ボリス様は記憶力が儚くてあらせられるのでお忘れかも知れませんが、これでも私はサウザーリン王国の第3王子でございます。
大切な友人が拐われた上に、多大なる面倒ごとを押しつけて来たかと思えば、憂い事がなくなってもお礼ひとつ言う訳でもなく、己のやったことに対する反省の念も見えずにまるで自分の部下か何かのような粗雑な扱いには、流石に腹に据えかねるのですが」
ナプキンで口を軽く押さえたクラインは、虫けらでもみるかのような冷ややかな眼差しでボリスを見た。
「クッ、クライン殿はともかく、ほかの奴等は貴族でも何でもないただの平民ごときではな」
「………その平民ごときが解決できた問題にも対処出来ておられなかったのでしょう?王族でおられる貴方は?私達を見下せる権利がどこにあるのです」
室内の気温が5度ほど下がったような気がしたハルカは、クラインが自分以上に激おこである事に気がついた。
いくら他国の王族とは言え言いたい放題である。国王もいるのに大変まずいのではなかろうか。
ここは大人のケルヴィンさんに何とかしてもらおうと慌てて横を見ると、普段は穏やかなケルヴィンさんも険しい顔をしていた。
「僕これでも元S級冒険者だしコイツ久しぶりに全力で殺っていいかな」
みたいな顔をしている。
プルちゃんも「クソ不味い飯食わせた上に、女神の側近しかも妖精である俺様を平民呼ばわりとか………」と小声でブツブツ言ってるし、テンちゃんに目をやればダークフォースにすっかり飲み込まれたダー●・ベイダーみたいな黒いオーラを撒き散らしていた。
背後に控えていたトラちゃんまで『まだ使ってない毒薬ありますから、吹き矢に塗っておきますね。合図はフォークを置いたらと言うことで』とメモを出してきた。
全く頼んでないからね?私に一生フォーク持たせたままで暮らせと言うのかトラちゃん。
ミリアンに最後の望みをかけてすがるような目線を送ったが、「人の胸みてにやにやとスケベ面してた癖に何が王族よ………切り落としたいわ……」と吐き捨てるような呪いの台詞を唱えてたので思わず目を伏せた。
あかん。
謝罪1つお願いしただけなのに、なぜか【実録!ヤクザ東西大抗争!!『親父の仇はワシがとったる』鮮血の花道に最期に立つ者は!】というタイトルロールがハルカの脳内でエンドレス再生されていた。
13
お気に入りに追加
6,095
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました


魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。