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ヴォルテン王国訪問【3】
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「ふう………まだなのかしらね………」
少し荒い息を吐きながら、ハルカが呟いた。
「た、多分気配からして、あと10分程度登ったところだと思うのだが………ぜぇっ、ぜぇ」
「………ねえプルさん、いい加減僕に背負われましょうよ。大分HPなくなってる感じですよ」
息も乱れないケルヴィンが、汗だくになりながらも己の足で登っているプルに優しく声をかける。
「まっ、まだ俺様はイケるっ!失礼な、事を言うなっ、そ、それに、運動をしたあ、あとの方が飯も美味いんだあぁっ」
頑なに拒むプルの足は、生まれたての子馬より震えている。
「………太ったとかいって済まなかったな。ふくよかになったと言えば良かっただろうか。いや、ベリーグラマラスなボディになったとかもっと言い様があったか」
「この地上に舞い降りた天使と呼ばれ、た俺、様に、いい度胸じゃ、ね、えか。死ね、死んで、この身体を創られた女神様に、詫びろ」
「その女神様に創られた大事な身体を飽食と惰眠で原型を留めないほどリニューアルしてる奴が偉そうに言えた立場か。お前こそ女神様に土下座して赦しを請え」
普段から身体を鍛えているクラインも疲れた気配も見せずにプルの横を歩きながら謝り、「いやぁ、俺も真綿にくるむようなトークも勉強しないとな」、などとわざとらしく追い打ちをかけている。
国王が床払いをした翌日。
もうひとつの懸案であった山越えしようとする国民を妨害していると言う魔物らしき鳥2体、と言うのをさっさと片づけて帰ろうとハルカが宣言し、特に反対意見もなく朝からハルカがせっせと作った弁当を持って山登りなうである。
ハルカ、ミリアン、ケルヴィン、クライン、テンにプルにトラというメンツである。
クロノスは[自分が行くとブレスで禿げ山になるっすよ。やっぱ他国でやるのはちょっと]と自ら留守番を申し出た。
サウザーリンならいいのかとクラインがチビクロにアイアンクローをお見舞いしていたが、万が一を考えると流石に国家間の火種になりそうなので穏便策を取る事になった。
弁当とそのあとの草団子を楽しみにしていた(つぶあんまぶしてあると聞いたので)プルに、
「これ以上太ると空も飛べなくなるぞ、歩くのも最近すぐ疲れてるのに」
とクラインが軽くからかったところ、太ってないし歩くのも全く問題ないっ、とプルが強く抗議し、山登りも楽勝だと高笑いをして2時間が経過したところである。
「………プルちゃん、もう素直に背負われたらどうかしらね。子供のオークにも瞬殺されそうなのだけど」
ミリアンも少し心配そうに言えば、テンも、
「………いい年して大人げない………」
と身も蓋もない口撃をしている。
トラだけは、
『プル様はこのくびれの少ない流線形の身体が魅力的なのでございます!!』
と誉めてるんだか貶してるんだか分からないかばいだてをしていたが、プルに余計切なくなるからやめろと止められていた。
「………静かに」
前を歩いていたケルヴィンが唇に指を当てた。
「………いたか?」
クラインが側へ寄ると、前方でゴロゴロ転がってる体高が二メートルはありそうなデカイ鳥と、側でおろおろしてる同じようなサイズの鳥が数十メートル先に見えた。
「………え?カラス?」
ハルカが首を傾げた。
大きさ的にはカラスというか熊みたいなものだが、どうみても真っ黒の艶やかな身体はまさに日本でよく見ていたゴミを漁っていたそれであった。
ただ、魔物は意志疎通が出来ないタイプばかりだが、仲間とギャーギャー会話をしてるように見える。
「あれ、魔物なの?」
クラインを見て尋ねるが、クラインも
「あんな魔物いただろうか………」
と首を捻っている。すると、
「………やっぱり………」
とテンが溜め息をついた。
「テンちゃん、あの魔物解るの?」
ハルカが問いただすと、首を振った。
「………あの子達は魔物じゃなく、魔族。しばらく顔を見てなかったと思ったらこんなとこにいたのか………」
と答えながら、みんなを見た。
「………ちょっと先に話してみるから待ってて」
と言うと、フワッと以前の超絶美青年の姿に戻って、スタスタ歩いていった。
「………魔族っていうと、テンちゃんのお仲間さんなのかな?」
「いや、でも奴一応魔族の王みたいだから、配下?みたいな感じなのだろうか」
「うーん戦わずに済むならそれが一番楽だけどね」
こそこそと話し合うハルカ達に、ようやく息を整えたプルが、近くの岩へ腰を下ろして声をかけた。
「なあ、しばらく様子見ならここで飯にしようぜ。俺様は全く疲れてないけど、少し腹が減ったし喉もカラカラだー」
と呼び掛けた。
「………そうね。待ってるだけだもんね」
ハルカはお昼にしましょ、と周囲に結界魔法を張ると、アイテムボックスから弁当を取り出し始めた。
「今日はねー、厚焼き卵と、アスパーラの肉巻きとハンバーグとコーンクリームコロッケとそぼろご飯だよー。あと飲み物は冷たいお茶とお水、オレンジジュースとソーダ水、温かいのはコーヒーとお茶と紅茶ねー」
「おお、美味そうだな」
「朝から楽しみにしてましたよええ」
「俺様はまずオレンジジュース一杯くれ。それから冷たいお茶にする」
いそいそと座り込むクラインやケルヴィン、プルを眺めながら、ミリアンは
「相変わらず緊張感ないわねこの人達………単に呑気なだけかしら。いやアホなのかも」
とポツリと漏らすと、ハルカが振り返り、
「あれ?ミリアンは要らないの?」
と微笑んだ。
「勿論食べるに決まってるでしょうが。あとトローロのメンツユ漬けも出して。あれ最近お気に入りなのよ。あのしゃきしゃき触感とトロトロのタレがいいのよね」
「はいはーい」
ハルカ一行はまだ太陽も昇りきる前に昼食タイムが始まるのであった。
少し荒い息を吐きながら、ハルカが呟いた。
「た、多分気配からして、あと10分程度登ったところだと思うのだが………ぜぇっ、ぜぇ」
「………ねえプルさん、いい加減僕に背負われましょうよ。大分HPなくなってる感じですよ」
息も乱れないケルヴィンが、汗だくになりながらも己の足で登っているプルに優しく声をかける。
「まっ、まだ俺様はイケるっ!失礼な、事を言うなっ、そ、それに、運動をしたあ、あとの方が飯も美味いんだあぁっ」
頑なに拒むプルの足は、生まれたての子馬より震えている。
「………太ったとかいって済まなかったな。ふくよかになったと言えば良かっただろうか。いや、ベリーグラマラスなボディになったとかもっと言い様があったか」
「この地上に舞い降りた天使と呼ばれ、た俺、様に、いい度胸じゃ、ね、えか。死ね、死んで、この身体を創られた女神様に、詫びろ」
「その女神様に創られた大事な身体を飽食と惰眠で原型を留めないほどリニューアルしてる奴が偉そうに言えた立場か。お前こそ女神様に土下座して赦しを請え」
普段から身体を鍛えているクラインも疲れた気配も見せずにプルの横を歩きながら謝り、「いやぁ、俺も真綿にくるむようなトークも勉強しないとな」、などとわざとらしく追い打ちをかけている。
国王が床払いをした翌日。
もうひとつの懸案であった山越えしようとする国民を妨害していると言う魔物らしき鳥2体、と言うのをさっさと片づけて帰ろうとハルカが宣言し、特に反対意見もなく朝からハルカがせっせと作った弁当を持って山登りなうである。
ハルカ、ミリアン、ケルヴィン、クライン、テンにプルにトラというメンツである。
クロノスは[自分が行くとブレスで禿げ山になるっすよ。やっぱ他国でやるのはちょっと]と自ら留守番を申し出た。
サウザーリンならいいのかとクラインがチビクロにアイアンクローをお見舞いしていたが、万が一を考えると流石に国家間の火種になりそうなので穏便策を取る事になった。
弁当とそのあとの草団子を楽しみにしていた(つぶあんまぶしてあると聞いたので)プルに、
「これ以上太ると空も飛べなくなるぞ、歩くのも最近すぐ疲れてるのに」
とクラインが軽くからかったところ、太ってないし歩くのも全く問題ないっ、とプルが強く抗議し、山登りも楽勝だと高笑いをして2時間が経過したところである。
「………プルちゃん、もう素直に背負われたらどうかしらね。子供のオークにも瞬殺されそうなのだけど」
ミリアンも少し心配そうに言えば、テンも、
「………いい年して大人げない………」
と身も蓋もない口撃をしている。
トラだけは、
『プル様はこのくびれの少ない流線形の身体が魅力的なのでございます!!』
と誉めてるんだか貶してるんだか分からないかばいだてをしていたが、プルに余計切なくなるからやめろと止められていた。
「………静かに」
前を歩いていたケルヴィンが唇に指を当てた。
「………いたか?」
クラインが側へ寄ると、前方でゴロゴロ転がってる体高が二メートルはありそうなデカイ鳥と、側でおろおろしてる同じようなサイズの鳥が数十メートル先に見えた。
「………え?カラス?」
ハルカが首を傾げた。
大きさ的にはカラスというか熊みたいなものだが、どうみても真っ黒の艶やかな身体はまさに日本でよく見ていたゴミを漁っていたそれであった。
ただ、魔物は意志疎通が出来ないタイプばかりだが、仲間とギャーギャー会話をしてるように見える。
「あれ、魔物なの?」
クラインを見て尋ねるが、クラインも
「あんな魔物いただろうか………」
と首を捻っている。すると、
「………やっぱり………」
とテンが溜め息をついた。
「テンちゃん、あの魔物解るの?」
ハルカが問いただすと、首を振った。
「………あの子達は魔物じゃなく、魔族。しばらく顔を見てなかったと思ったらこんなとこにいたのか………」
と答えながら、みんなを見た。
「………ちょっと先に話してみるから待ってて」
と言うと、フワッと以前の超絶美青年の姿に戻って、スタスタ歩いていった。
「………魔族っていうと、テンちゃんのお仲間さんなのかな?」
「いや、でも奴一応魔族の王みたいだから、配下?みたいな感じなのだろうか」
「うーん戦わずに済むならそれが一番楽だけどね」
こそこそと話し合うハルカ達に、ようやく息を整えたプルが、近くの岩へ腰を下ろして声をかけた。
「なあ、しばらく様子見ならここで飯にしようぜ。俺様は全く疲れてないけど、少し腹が減ったし喉もカラカラだー」
と呼び掛けた。
「………そうね。待ってるだけだもんね」
ハルカはお昼にしましょ、と周囲に結界魔法を張ると、アイテムボックスから弁当を取り出し始めた。
「今日はねー、厚焼き卵と、アスパーラの肉巻きとハンバーグとコーンクリームコロッケとそぼろご飯だよー。あと飲み物は冷たいお茶とお水、オレンジジュースとソーダ水、温かいのはコーヒーとお茶と紅茶ねー」
「おお、美味そうだな」
「朝から楽しみにしてましたよええ」
「俺様はまずオレンジジュース一杯くれ。それから冷たいお茶にする」
いそいそと座り込むクラインやケルヴィン、プルを眺めながら、ミリアンは
「相変わらず緊張感ないわねこの人達………単に呑気なだけかしら。いやアホなのかも」
とポツリと漏らすと、ハルカが振り返り、
「あれ?ミリアンは要らないの?」
と微笑んだ。
「勿論食べるに決まってるでしょうが。あとトローロのメンツユ漬けも出して。あれ最近お気に入りなのよ。あのしゃきしゃき触感とトロトロのタレがいいのよね」
「はいはーい」
ハルカ一行はまだ太陽も昇りきる前に昼食タイムが始まるのであった。
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