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始動準備は万端だ。

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 コードネーム会合の結果。

 と言うか単純にほぼ皆の好きなもの得票で決まったのだが。


★定番商品
・フライドポテト
・ポテトチップス
・コロッケ

★個別商品
・芋羊羮|(リンダーベル)
・サツマーモプリン(ブルーシャ)
・スイートポテト(パラッツォ)
・サトーモ煮っころがし(ピノ)
・ジャガーモ餅|(バルゴ)
・ジャガーモのポタージュ(ローリー)
 ※山の中なので秋冬だけ温かいのを。春夏はまた考えることに。


 他のメニューもみんな美味しく食べてくれたのだが、コストの関係だったり作る時の手間だったりを考えて、このメニューに決まったのである。
 安価で庶民でも気軽に購入しやすいのが大事なのですよ。
 そして、リピート率が高い。



 特に揚げ物が常に人気が高いのは、やはり「煮る」「焼く」がこの国の主な調理法だった国だからではないかと思う。


 そして、ジャガーモ比率が高いのは、サウザーリンのジャガーモ収穫量が尋常でなく多いため、ものすごーく安い。サイズも大きい。何せ手のひらで1つ持つと他が持てない。グレープフルーツくらいか。大きいから大味という事もなく、大変美味しい。
 ビバ庶民の味方、スープでメインに使われるかなり日常使用率の高い野菜だ。

 芋はいいよね。
 腹持ちするし、かさまし出来るし。食べ盛りの子供がいると尚更多用されるのは当然なのである。

 市場で五キロ位が麻袋に入って10ドラン(100円)ほどで売っている。何それ激安。
 五キロの米袋にジャガーモが沢山詰まってるのを想像して欲しい。日本なら奥さま方が朝から長蛇の列に並ぶレベルだ。
 間違いなく我が家も並んでいた筈だ。

 品種はメークインのような長時間煮ても型崩れしないので、細切りにしてフライドポテトにするのもとても具合がいい。ポテトチップスもジャガーモを薄く輪切りにするので扱いやすい。

 油は、ケルヴィンがヒマワリ油を作ってくれたのだが、そんな数も作れない高級品は使えませぬ。
 ごま油はゴマ自体が安かったのでそんなにコストもかからず作れたのだが、全てそれだとポテトもポテトチップスもくどくなる。

 そしたら、ありましたよ、この国にも菜の花が。
 成長すると種をつけてアブラナになる。
 菜種油が出来ますた。

 ただそのままだと、モノにより体にちいとばかり悪いエルカ酸とかいう成分が入ってるらしいので(ネット通販の本知識)、精霊さんズにお願いして取り除いて頂く。
 これが入ってると発ガン性あったり心臓に障害が出ることもあるらしい。
 美味しいもの食べたくてもそれで体壊したら元も子もない。
 キャノーラ油って奴ですねこれが。

 ひとまずこれを使う事にした。

 そして小さく作ったチュロスとバニラアイスを手土産に精霊さんズは喜んで帰っていった。最近は精霊さんズをほぼ季節労働者みたいな使い方をしているが、特に不平不満が出てないので、よしとしたい。
 ただ、精霊さんズはそれでいいのか。

 でもカリカリしたチュロスにアイスつけて食べると美味しいのよね。うん。(ハルカの主観)

 そして毎回やるのは面倒なので、種の時点でエルカ酸の成分が入ってない品種改良したものを作ってもらい、大量に蒔いた。
 次回の収穫からは精霊さんズのお世話にならずともキャノーラ油が出来る。

 ちなみに、研究所の開発した商品が増えるにつれ、当然ながら栽培スペースに限界が訪れたので、ハルカの自宅敷地の5倍はあろうかという農業用地がマーミヤ商会のお金で購入されていた。(自宅のすぐ隣といっても過言ではないほどご近所である)

 ケルヴィンの信頼出来る友人を代表にして、かなりの人を使って大豆やらコーンやら調味料作成のための貴重な作物を大量に生産している。

 ケルヴィンは農家に協力を仰いで品種による効率的な栽培方法や、土の良し悪しによる出来高と質の違い、肥料の効果的な使い方などもご教授頂いてるようで、ハルカが「ファーマーか」と突っ込みを入れたくなるような専門知識が所々で会話にこぼれ落ちる。

 ハルカは、好きこそものの上手なれ、などと言う言葉を思い出したが、そういうハルカもネット通販で買い込む作成マニュアルの量が、大学時代に購入した参考書関連が幼稚園児の絵本レベルに思えるほど大量かつ専門的になり、壁一面の本棚が既にパツパツである。


 二人とも『美味しいモノのために努力を惜しまず』という大義名分を持つ同志であるため、徹夜をして研究してたり、新しい調味料を作るための素材選びや知識の収集に余念がない。

 プルに「社畜」と言わしめる仕事ぶりである。
 

 ハルカは完成した黄金色の美しいキャノーラ油を見て、ケルヴィンと二人、

【これぞ研究者の醍醐味だー!】

 と手を取り合って喜んだ。

 この国に美味しいモノと美味しいモノを食べるための調味料や食材が増えていくのは、やはり心が躍る。


 さて、油の問題も解決した。


 ジャガーモも付き合いのある農家から大量に定期的に購入する契約もした。そのためサツマーモもかなり値引きしてくれた。原価を落とせるのは大変有り難い話である。

  ハルカはトラを呼び、イラスト入りの作成マニュアルも各孤児院用に作ってもらった。併せてエプロンをネット通販から各孤児院ごとに20枚ずつ注文した。
 赤地に白の細かいチェック柄の可愛い奴だ。

 ついでにピーターさんに、路上販売用の移動式屋台車(馬で引けるヤツね)を作ってもらった。雨の時に困らないようロール式のひさしを追加してもらう。
 クレープとか売ってそうな白塗りの可愛らしいものが完成した。エクセレントないい感じですよ。

 職人は国内で結構横の繋がりがあるとのことなので、同一のものを作って各町の孤児院にハルカが訪問するより先に納品して貰うように設計図の写しを作り、急いでもらいたいのでクロノスに郵便を届けてもらったり、追加で作ってもらったポテトチップス用のスライサー(手動式)を届けてもらったりした。

 町の人も最初は人里には普段現れないドラゴンが飛び回るので驚いたようだが、別に襲われる訳でもないし、マーミヤ商会の使いと分かると大変フレンドリーに接してくれるようになったようで、出かける度にお土産を持ち帰ってくるようになった。

[お嬢、町の人たち優しいなあ。海鮮とか沢山もらったぜー!]

 ピノ帰りのクロちゃんがいそいそとエビだのマグロに似た魚だのを持ち帰ってハルカに渡してくれた。

 何しろ馬車で数日かかる距離を数時間でいって戻ってくるので鮮度もいい。

(ドラゴン便とかあれば儲かるだろうなー便利だしなー)

 とふとハルカは思った。

「クロちゃんさ、友だち呼んでアルバイトとかするのどう?お金貰っても使わないだろうから食べ物支給で」

 町の他の商売人も(輸送費用は頂くけど)利用できたら便利だろう。また、円滑な人間関係も作れるではないか。

[えー、あいつらにお嬢の飯食わすの?勿体ないなあ]

 と渋っていたが、

「クロちゃんが指示して統率すれば、美味しいモノをくれるバイトを紹介してくれたと感謝されるんじゃない?その上、シャイナさんには『上に立つ人ってステキ♪』とか惚れ直されるかも」

 とハルカが言ったので超前向きに検討することとなった。
 うまいこと近々ドラゴン便は正式に運用できそうである。
 ありがたやありがたや。


 さて、準備もあれこれ出来た。

 先ずはリンダーベルの孤児院から突撃だ!



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