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料理コンテスト【1】

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 何だかんだでもう料理コンテスト当日である。


 宣言通り、グランさんとジルベルトさんはリンダーベルに滞在しながら依頼をこなし、大会も観ていくと気合いを入れていた。
 チケットも即完売したと聞いた。

 料理してるのを見たいんじゃなくて、観戦者投票をしたいだけなんじゃないかと思うんですが。
(抽選で選ばれた100人は、投票するために一口ずつ選手の料理を味見出来るそうだ)


 試合は「フード」「スイーツ」「パーティー料理」の3種類に分かれていて、それぞれ好きな競技に参加できる。
 単純に美味いもの作れば勝てる。

 そして、各参加者が一斉にやるので、組合せの有利不利がないのは素晴らしい。
 一発勝負だもんね。

 で、ジャンルごとに上位3名だけが決勝戦、と。

 ハルカはシードだとか言われて、全部の競技に参加になっていた。
 その上すべて店で出してない新作をとの注文である。


 いやおかしくないですか?


 普通シードって戦う数が少ないからシードなんじゃないですかね。
 なんでハードルもガチ上げしてるんでしょうか。


「まあいいじゃないか。どうせどれもハルカの優勝だろ?
 なぁ、どうせ副賞で店増やすなら和菓子の店にしよーぜ。たい焼きぜんざいどら焼き大福~♪
 俺様和服で接客するから。ああ、つぶあんをこの国に知らしめる時がとうとうやって来た………」

 プルちゃんに愚痴を言ったら、やたらテンション高く返された。
 つぶあん好きの血が騒ぐのだろう。

 しかし、なぜつぶあんは良くてこしあんはダメなのだろう。粒が残ってるか残ってないかの違いなのに謎である。
 まぁそんな私もつぶあん派ですが。
 自分でも謎である。


「ハルカ~そろそろ出番よ。準備出来た?」

 ミリアンが控え室に現れた。

「いや、支度らしい支度なんてなんもないでしょ」

 食材と調味料だけあればいいのだ。

「………まあそうね。でもほら、私達も知らないメニューなんでしょ?」

「………うん、まあね」

 と言っても、これからメニューに入れたいなと思うものばかりですよ。

 フードでは海鮮トマトパスタを。

 スイーツでは大学イモを。

 パーティー料理ではローストビーフならぬローストオークのマッシュポテト添えである。

 そんなに期待されるほど大したもんではないのだが、味は文句なしに美味しいと思う。

 ほかの参加者が何を出してくるか分からないので不安もあるけど、楽しみでもある。

 なんたって調味料が販売されるようになってほぼ1年。リンダーベルでも他の店の料理が確実に向上しているのを肌で感じていましたからねぇ。
 新発売でショーユ味の野菜炒めとかステーキのショーユソースとかありましたからね。
 初めてメニュー見たときは感動した。

 味は、その、まだ発展途上だったけど。

 濃ゆかった、とにかく。

 味噌汁もどんだけ味噌溶かしてるのかと思うほどしょっぱかった。
 食塩含有量倍々プッシュで、不味い云々より健康に悪い。

 お店の人にそっとその旨伝えたら、私がハルカだと気づかれ、是非ご指導を、と厨房に拉致られた。
 仕方がないので最低限の味付けのコツを伝授し、「でも後は料理人の個性で色々変えるものですからね」と言うのは忘れなかった。

 人様が作るの食べに行って自分と同じ味食べないといけないなんて、わざわざお金払う意味がないもんなー。

「頑張ります!」

 と気合いを入れた若い料理人。
 教えた手前気になり、何度か食べに行ったが、最後にはそこそこ美味しいものが出来ていた。
 まだそこそこなので、自宅で食べた方が良いレベルだが、あと1年2年もすれば格段に美味くなる筈だ。

 と、思いたい。


「ま、どうせ出るなら勝たないとね。マーミヤ商会背負ってるし」

 私はよし、と気合いを入れて、ミリアンと会場に向かった。
 ヘルプを一人付けられるのでミリアンにお願いしたのだ。

「ハルカ、アタシ物を運ぶのは得意だけど、料理の手伝いとか殆どやったことないのよ。大丈夫かしら………」

 ミリアンが胸を押さえて少し緊張した顔をしている。

「大したことないから平気平気。一番面倒くさいのは、100人の一般審査員と10人の王族と貴族の審査員への小分けだけだから。これは1人でやるのは辛いからね」

「………ホントよね。なんでそんなに沢山審査員いるのよ」

 二人してため息をつくが、参加する料理人は全てやるのである。ここは諦めが肝心だ。

「副賞要らないけど負けるのやだから勝つぞー」

「おー」

 ヤル気があるんだかないんだか分からない掛け声をかけ、二人は仲良く会場に入っていくのであった。




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