異世界の皆さんが優しすぎる。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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カレー粉ばんざーい。

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 お腹空いてたので賄いを少しつまんでしまったが、久しぶりのマイホームだし、家でケルヴィンさんやシャイナさん達とクロちゃんとも食べるつもりだったので本格的に食べるのは我慢した。
 
 ちなみに賄い飯は、クロロニアンのデミグラスソースのシチューとご飯、フルーツポンチである。


 テンちゃんとミリアンにもそう耳打ちしたのだが、ミリアンは昼ごはんを食べ損なったとかで、一口、また一口とつまんでいる。

 テンちゃんが三口目に手を伸ばしたミリアンの手をぺしっ、と叩いた。


「………我慢すれば、皆でお家で美味しいご飯と、楽しい土産話、そして気持ちいいゆずの香りのするお風呂、ふかふかのベッドへのダイブ全てが今ならまとめて貴女のモノに………」

「……やだ何その桃源郷。我慢するわよ、すればいいんでしょうが」

 伸ばしかけた手を引っ込めたミリアンは、半泣きでフロアの片付けに戻って行った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


『ハルカーーーー!』

「シャイナさぁぁぁん!」

「ハルちゃー」
「ハルちゃー」
「ハルちゃー」

「お帰り、ハルカさん!」

「只今帰りました!」

《お帰り。これで男飯はようやく終わるな。良かった良かった》

「男飯?」

 どうやら、ケルヴィンさんが私達がいない間のラウールやシャイナさん達のご飯を作っていたようだ。(テンちゃんとミリアンは店で賄いを食べてたとのこと)
 えー、食べたことないぞ私。ずるーい。

「そらそうでしょ、なぜ確実に僕より美味いご飯が出来ると分かっているのに作らないといけないんですか」


 まぁ言うほど美味しくない訳じゃないらしいが、肉を焼いてショーユかけたりとか、野菜茹でてマヨネーズで和える位のワンパターン加工だそうな。

 いいじゃないか、今までの塩、砂糖、ハチミツオンリーに比べたら天と地ほどの違いだ。ラウールはずっとノー調味料で生で食べてきたクセに。
 
 2000年以上も生きてて今ごろグルメ舌とはいい根性です。
 我が家は働かざる者食うべからずですよ。

 少し感謝の足りないジー様には、明日森へ行ってうまそげな肉を狩って来ないと晩飯抜きにすると宣言した。

《むむう、………あいわかった。狩ればいいんじゃろ狩れば。オーガキング辺り捕まえてくれば働いた事になるかの?》

「ついでにドードー鳥も少なくなってきたのでお願いします」

《………うむ》


 まあ私も鬼ではない。ラウールにも今夜のクロロニアンフェアに参加してもらって、明日への鋭気を養ってもらおう。




 クロロニアンシチューにダーククロルのミンチを使ったハンバーグステーキ(目玉焼き乗せ)、コーンとジャガーモのバター醤油炒め、ご飯というメニューで自宅飯での旅話となりました。


「4時間位で行けるのねぇ………その食虫花みたいな皇帝陛下、見てみたいわぁ……しっかし激ウマねこのクロロニアンて。ダーククロルも美味しいけど。トラちゃん、アタシシチューお代わりね。あ、ハンバーグも目玉焼き忘れずにね」

「モグモグ………しかし、ハンバーグに目玉焼き乗せることを考えた人間は神だな。
 トラ、俺様のはハンバーグに目玉焼き二個乗せを頼む」

「………モギュモギュモギュ………」

[俺、こんなご馳走が食えるようになるとは思わなかったなぁ。長生きはするもんだぜ………トラ先輩、すんませんけどご飯とシチューを]

『相変わらずいいお肉持ち帰ってくるわねハルカは。このハンバーグといい、シチューといい、どれも美味しくて太りそうよ』

「おいちーの」
「おきゃわりなの」
「もっと食べるの」

 そーかそーか、たんと食べるんだよタロちゃん、ジロちゃん、花ちゃん。
 シャイナさんもお肉がつくとよりペンギンっぽくて美竜度が上がるじゃないですか。さささ、お代わりを。


「ハルカ、ところでダーククロルとクロロニアンのメニュー、何にする予定なんだ?」

 黙々と食べていたクラインがふと顔を上げた。

「うーん、なるべく在庫長持ちさせたいから、1日限定30食とかで出したいんだけど、………一番いいのはカレーライスだと思うのよねぇ、香りもいいしお肉の出汁が生きるし。ただまだカレー粉の開発が………」

 ケルヴィンさんを見る。
 おや、ニヤリと笑みが出た。

「僕がただ1週間のほほんと過ごしていたと思いますか?」

「………え、まさか、出来たの?」

「既に2日前に完成してますよ。
 あとはハルカさんに味を見てもらって、量産へゴーサイン出して頂くだけですよ。そして、魚の骨や皮などを煮詰めた汁を乾燥させ、顆粒状にした『和風ダシ』も作りました」

「………ちょ、ちょ、すぐ見たいわ」

「はい」

 なんて用意のいい。小袋に入ったカレー粉とダシが渡された。

「匂いは………おお、カレーだわ。ダシもそれっぽい。………ちょっと待ってて。味噌汁とカレー試しに作って見るから」

 私はいそいそとキッチンに入り、精霊さんズを呼び出し、カレーと味噌汁を小鍋に作ってみた。

「みんな、ちょっと味見して」

小鍋をテーブルに運ぶと小皿を用意して少しずつ入れた。

「………味噌汁は、いいんじゃないかな?いい魚の香りが合ってる。ただ、カレーは俺には少し辛すぎる」

「あー、私も少し辛いわ。美味しいとは思うけど………ハチミツとか入れて、少しまろやかにするのはどう?」

「………僕はこの位の辛さでも好き………」

《ワシも刺激があってこれは好きだがなぁ。人によって好みがあるじゃろな》

「俺様もちと辛いわ。………あー、甘口と辛口作ればいいんじゃない?」

 うーん、私も個人的にはもう少し甘い方が好きかなあ。
 確かにダシはいい感じ。

「ダシは量産オッケー。カレー粉は、これの甘口版を作ってみて。どうせなら両方一緒に出したいし」

「明日1日くれたらいけると思います。カレー粉は明日もう一度チェックしてくれますかハルカ会長?」

「分かった!お願いしますねケルヴィンさん」

 ケルヴィンは辛口がお気に入りのようで、これも生産ラインには乗せたいらしい。

「カレー粉が売り出せるようになると、カレーライスはもとより、私の大好きなカレーうどんが店でも出せる………うふふふふ」

 秋も深まり、カレーうどんの美味しい季節である。

 秋深し 隣はカレーだ うちもカレー

 うむ。なかなか素敵な俳句が浮かんだ。
 半分パクってるが分かる人はこの国にはいないからよしとしよう。カレーの香りが漂い、自分ちでも作らずにはいられないと言う心の機微が現れている。


 ダシも売れると、個人の家でのスープももっと美味しくなるだろう。

「ケルヴィンさん、洋風ダシは?」

 ブイヨンもシチューやスープ系、炒め物など幅広い使い方が出来る。

「ドードー鳥の骨をベースにして現在作成中です。同時進行してるのが幾つかあるので、1週間ほど待って頂けると試作が出せるかと」

 ケルヴィンさん、本当に冒険者ギルド止めてから研究一本だから、仕事が早いです。給料アップしてもいい気がする。
 何度も「今貰ってる分で充分」と断られたが、逸材は待遇を良くしておかねば、ヘッドハンティングされたらかなりのダメージである。
 バイト君も、とりたてて出来が悪い人はいないが、仕事がかなり出来る人が何人かいるので、昇給もしないといけない気がする。
 これもなんとか考えないとなるまい。


 なかなかマーミヤ商会のオーナー業も楽ではないですねぇ………。

 ハルカは、少しため息をついてシチューを食べるのであった。





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