異世界の皆さんが優しすぎる。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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リンダーベルはやはりいいのだ。

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「ただいまー」

 夕方、リンダーベルの自宅に到着した私達は、一先ず荷物やらを自宅に降ろした。

 三つ子はシャイナさんとお夕寝中、ラウールは見当たらない。多分森に遊びに行ってるんだろう。

 トラちゃんは荷物の整理、クロちゃんはお疲れのため晩飯まで寝てると言うので、クラインとプルちゃんとで馬車に乗ってミリアン達を迎えがてら様子見で店へ向かう。

 通りすがりだったので、冒険者ギルドにガルバン国で一方的に討伐してきた肉以外の牙や皮などを一部売り払い(まとめて出すと予算がないと泣かれるから)、銀行に貯金したら、既に残高が2500万ドランを超えていて吐血するかと思った。
 2億5000万円とかあっても現実味がなー。

 実際、今って普通の生活費とかぐらいしか使わないんだよなぁ私。
 この国にブランド品とかあるのか分からないけど、興味ないしなー。
 肉のブランド位しか興味ないわ。
 化粧品もあるけど、センチュリオン様の化粧水とクリームだけでつるっつるだし。せいぜい薄い色のリップくらいだ。

 宝石もなー、魔石は便利だから買うけど、身につけるのは………指輪とかブレスレットとか料理とかでも邪魔な事が多いし。

 でも、大金て人の性格まで変わると言うし、あまり持ちすぎも良くない気がする。

 お金の有効な使い方ねぇ………ちょっと考えてみますか。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーー

 店に入る前に表の様子を覗いてみたが、本日もレストラン、パティスリー共に盛況である。
 ありがたやありがたや。


「みんなー、只今帰りましたよー」

 裏口からそっと入ると、スープのアクを取っていたバイト君がはっと顔を上げて、

「あっ店長だーっ!お帰りなさい!!!」

 と笑顔になった。
 厨房のみんなから口々にお帰りコールがもらえて、何だかとても嬉しい。

「え?店長戻ったの?」

 ミリアンが声を聞いて慌てて厨房に入って来る。

「ハルカーーーー!会いたかったわーっ!!」

「ミリアーンッ、約一週間ぶりー!!」

 ガシッと抱き合い無事を喜ぶ。
 一週間は大したことない期間ともいえるが、一緒に住んでるし毎日顔を合わせてたのだから、そらもう久しぶりなのである。

「………ハルカ、お帰りなさい………」

 ミリアンの後ろからそっとやって来たテンちゃんにもぎゅーをする。

「テンちゃんも大変だったでしょう?本当にありがとう!」

「………うん、だ、大丈夫だった」

 いきなり力一杯抱き締めてしまったせいで呼吸困難に陥ったのか、真っ赤になり口をパクパクさせているのに気づき、慌てて離れた。

「ごめんね、皆に久しぶりに会うような感じでつい力入っちゃった。痛くなかった?」

「………いや、うん、平気じゃな………平気だから……」

 ケルヴィンさんは研究所の方にいるだろうから後で挨拶するとして。


「ごめんね、あっちはあまりお土産として目ぼしいのが陶器位しかなくて、お土産なんだけど………」

 私はゴソゴソと持ってきた携帯用アイテムボックスから品物を取り出した。

「ミリアンとテンちゃんとケルヴィンさんには、マグカップね。ちゃんと名前を入れて貰ったんだよ」

「ホントだ。あ、私のは花の絵があるのね、綺麗だわぁ~。ありがとハルカ」

「僕のは森だね………ありがとう、大事にする………」

 二人はガルバン陶器は持ってなかったようで、かなり喜んでくれた。

 働いてるバイト君たちにも、と色々迷ったのだが、何しろ食べ物は不味いし、小物も見た限りろくなもんがなかった。

 仕方なくガルバンの布地屋で男性用と女性用の肌触りのなかなかいい柄のがあったので、バンダナサイズの大きめのハンカチを縫った。

 ………トラちゃんが。




 何が恐ろしいって、一晩で人数分仕上げた上に、ちゃんとバイト君達の名前をすべて把握していたのか、右隅に個人個人の名前を刺繍していたことである。

 ミリアンの妹のニコルちゃんしか名前を覚えてない(いや、顔は覚えてるのよ。でも名前と一致しないと言うかなんと言うか昔から覚えが悪いと言うか……)私には、アメージングな記憶力と作業スキルである。

「………え?私達のまで?まあ、刺繍まで。高かったんじゃないですかオーダーなんて」

 ハンカチは、オーナーがおバカだから名前覚えてないので手渡し出来ないとは言いづらいので、

「まだ仕事中だから、二階の更衣室のテーブルに載せておくから、帰りに着替えた後でも自分の名前のを持っていってねー」

 と伝えたら、とても有り難がられた。
 ちょっと居たたまれない。


 小学生の頃、バレンタインデーに『手作り』と嘘ついて素朴に見えるマフラーを購入し、タグとか全部外してお父さんにあげたことを思い出した。
 とっても喜んで春になってもずっと巻いてたのは苦い記憶である。
 実は編み物、縫い物系は壊滅的に苦手なのよ。手先が不器用だから。あはははは。


 トラちゃんの手柄を私が奪っているのは大変心苦しいが、しかし従業員に舐められない頼りになるオーナーとして存在しておくのも大事である。
 猫手の作業に負ける自分が情けない。

 ごめんねトラちゃん。
 今度日本のゴスロリ風メイド服をプレゼントしてあげるから許してね。


「ところで、特に食材とかケーキの在庫その他問題はなかった?」

「その辺は何とか大丈夫でした。あと3、4日ほど帰りが遅ければヤバかったですけどケーキ類が」

 あー、ご飯系は作れる子達を増やしたから平気だけど、生ケーキは私しか作れないもんねぇ。


「もう当分長旅に出ることはないから安心してね」

「はい。あ、店長を訪ねて来られたお客様がいらっしゃいました。2日目に。えーっと………」

 ニコルちゃんがポケットからメモを出した。

「グランさんて方とジルベルトさんて方ですが、お分かりですか?仕事の途中だからまた来ると仰ってましたけど」

「ああ!分かるよ、お世話になった人だしね」

 パラッツォの冒険者さんだ。
 
 はて、なんだろか。
 まさかひまわりの種持ってきてくれたのかな?だと嬉しいなー、ひまわり油作れるよ。いやでもお坊っちゃんがワザワザお使いとかしないよねぇ。幾らでも人が使えるもの。

 まあまた来るって言うなら待ってればいいかな。まだ依頼とかで町出てるかも分からないし。


「よし、じゃああと2時間ない位だし、私今日は張り切って賄い作るから、みんなもあとちょっと頑張ってね」

「「「店長の賄いだーきゃっほー!」」」

 バイト君達はご機嫌でまた仕事に戻っていった。

 ほほほ、慰労ですからね。
 出しますよークロロニアン。
 この美味をたーんと味わいたまい。





 閉店後、レストラン内では、

「うわーウマーーすげーウマーーーーーなんだこの肉ーーーっ」
「お代わりっ、お代わりいいですかっ!」
「この店で働けて本当に嬉しいです!私一生ついてきます!」
「ヤバい本当にヤバい足に力が入らない」
「店長のご飯のせいで三キロも太りましたよ。制服入らなくなったらどうするんですかー。……いや量を減らすのはホントやめて下さいすんませんでした」


 などとやたらハイテンションな会話が漏れ聞こえ、近所の人達はあーハルカちゃん帰ってきたみたいだねぇ、店員さんがまた元気になって良かったねぇ、などとほのぼのと語らうのであった。


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