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エクストリームドライブ【4】

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 さて、朝もはよから討伐タイムである。
 申し訳ないが、カレーを食いまくってたパーティーの方々は疲れから爆睡していたようなので先行させて頂きます。


 セーフティエリアでお休み中の冒険者さんのために、75階層で1体だけクロロニアンは残して置いた。
 まあしばらく経てばまた発生するんだろうけどタイミング分からないし、彼らも捕まえたがってたからね。1体なら倒しやすいでしょう、うん。

 決してお肉を多めにもろとこかいとか、そういうよこしまな気持ちとかたてしまな気持ちとかないですから。本当ですよ。


 まあ、万が一やられそうになっても転移エリアだからなんとかなるだろうと言う考えもあるのだけど。


 なんか、前人未踏とか言ってた80階層も普通に越えてしまい、まあ前人未踏らしくダーククロルやクロロニアンは増えたのだが、こちらにはいらっさいませと言うかウェルカムというのか、ヒャッハー肉だ肉だ~♪な世紀末的なアレなので全く困らなかった。
 

 ついでに、精霊さんズがオヤツオヤツと出てきたところをむにゅっ、と捕まえて、85階から5階層ごとの転移魔法陣とセーフティエリアの結界も張って貰うようにお願いした。

 報酬はチョコエクレア5個とレアチーズケーキラズベリーソースかけ5個である。
 精霊さんズの大きさだとものすごく大量に思えるらしい。流石に私についてるだけあって、騙されやすいというかチョロい。


 もちろん、上のお偉いさんにはどうして魔導師もいないのに何故、とか騒がれると面倒なので内緒だが、冒険者さんのためにはあった方が助かるでしょう。

 
「ハルカハルカ、営業ってことでレストランのそばのとこに転移するようにしとく?」
「そうねそうね。ギルドに薬もあるし、美味しいもの食べたら元気になるわよね」
「やだ私たち頭いいー♪お客さんホイホイね」


 こそこそ話が聞こえていた私は、慌てて止めさせた。
 それじゃ結界張ったのうちらだと自白してるのと同じでしょうが。
 今でさえ捌くの大変な位お客さん来てるのに、そんなホイホイは要りませんよ。
 限界までバックレるつもりなんだから。


 さて、そんなこんなで無双しながら降りること114階層。
 お昼ご飯を食べてから(さすがに80階層越えてるパーティーはいなかった)2時間ほど過ぎた。もう午後もだいぶ回った。そろそろ夕方である。

(一体どこまであるのかなあ………)

 テンちゃんやミリアン、ケルヴィンさんに、店のみんなは元気だろうか。

 早く帰りたいなー。


 ちょっとホームシックになってるのに、エセくま●ンが3体襲って来たので、にょいぽんで爪を折りながらすぱーん、すぱーん、すぱーんと頭をアディオスする。


 既にかなりの討伐をしてるため、クロロニアンが出たら、爪を折る、切る、下ろす、アイテムボックスにナイナイする、と全員が無言で流れ作業で動けるレベルまで到達してしまってるので、考え事してようが無意識で動けるのがちょっと恐ろしい。


「………うん?」

 プルちゃんが立ち止まった。

「ハルカ、あそこ何か扉みたいなのがあるな」

「え?どこよ」

 私はキョロキョロ見渡すが、扉のとの字も見えない。

 クロちゃんが、フォッフォッ言いながらシャキーンとハサミを閉じ、

[ほら、あそこだろ?]

 とハサミで指差した。


 壁に近づいて調べるが今一つ分からない。

 大抵隠し扉みたいなのは、どこかにボタンとかレバーがあると思うんだけどなー。
 ………と目線を上げると、なんかある。

 ははーん、これね。

 四角い穴の中に出っ張ったボタンのようなものが見えるんだけど、高い。

 私は162センチほどの身長でそんなに低くもないのだが、背伸びしても届かない。

「プルちゃん、あれお願い」

「よっしゃ!」

 ふわぁっ、と飛んだプルちゃんは、ボタンを押した。

 いきなり床がすこーんと抜けた。
 ギャグ漫画のようである。

「ひやぁっ!!!」

「ハルカ!!」

 クラインが手を伸ばすも届かず、と言うか私が掴んでしまったので体勢を崩して真っ暗な穴の中に二人して落ちていったのだった。






「あたたたた………」

 どうやら下のフロアに落ちたようだった。
 上を見上げたら落ちてきた筈の穴は閉じていた。

「ありゃ。プルちゃん達大丈夫だろか」

 まあプルちゃんとクロちゃん、トラちゃんなら何とかなるでしょ。

 落ちた時に打ったのか後頭部が痛いし、左足もちょっと挫いたようでくるぶしのところがズキズキする。

 まああの高さから落ちてこの程度で済んでるのもチート持ちならではですねえ。防御力ぱないわね変身してないのに。


 ………どうでもいいがなんか重い。



 ふと見るとクラインが私の上に覆い被さってたようだ。
 ささやかな胸に顔を突っ伏されても困るのだが。重いし。

「へいへいセニョール、起きとくんなはれ」

 ぺしぺしと頭をはたく。

「………う……ん………」

 ゆっくり目を開いたクラインが、

「………ん?」

 と固まること三秒。

「うわっっ!!!!!ちょ、まっ、ゴメン!」

 ものすごい勢いで飛び退いた。

「セニョール、不可抗力のラッキースケベは罪に問わずよ。あー苦しかった。よいしょっと」

 私は起き上がり辺りを見渡す。

「………むしろ罪に問うてくれる方が責任を取るとか持ち込めて色々便………」

「え?ごめんね声小さくて聞こえなかった。何て言った?」

「………いや何でもない。ところでここは?」

「下のフロアだと思うんだけどね。とりあえずプルちゃん達がいずれ降りてくると思うから、階段とか探そうよ」

「そうだな………あれハルカ、ケガしたのか?」

「あー大丈夫大丈夫、治癒魔法かけるから。痛いの痛いの飛んでけ~」

 自分にかけるの初めてだけど、すごいな。ホタルみたいにぼんやり光ったと思ったら、擦り傷も捻挫してた左足首もすっかり治ってる。痛みもない。

「………おおお………」

 素晴らしい。………もしや今まで試したことはなかったが、もしやこの貧乳も?

「………がんばれー………」

 と小声で唱え胸を押さえて見たが、全く変化はなかった。

 ………いや、むしろ「病」と思われて大きくなったらそれはそれで心がダメージを負うので良かったのだろうか?
 しかし、それでは私のチチライフはどうなる。第二次成長期などとうに終わってると言うのに。


 何やら胸を見ながら考え込んでいるハルカの心の動きは、本当にものすごく分かりやすいのだが、出来れば一人の時にしてもらえないだろうか。目のやり場に困るんだが。


 クラインは熱い頬を押さえたが、薄暗いので分からないだろうことが救いである。

「ほら、いくぞハルカ」

 暗いから転ばんように、と言い訳してハルカの手を取り、前に進む。


 しかし、階段がない。


 ほぼ一本道なので見落としはないはずだ。
 登り階段どころか下り階段もないのだ。

「ここが、最下層なのかな?」

 私は辺りを見回すが、宝箱も置いてないし、魔物も出ない。

「さあどうだろうな。………プル達も落とし穴から落ちてこないと入れない気がするな。いやでも扉っぽいのもあったよな確か」

 二人してあーだこーだいって進むうちに、ここでも扉っぽいものが見えた。
 近くでよくみると、取っ手もついてる小綺麗な感じの木製の扉である。


「………魔物って扉の開け閉めするっけ?」

「壊すとこしか見たことない」

「だよねぇ」


 私は少し迷う。

 プルちゃん達が合流するまで待つべきか。しかしいつ来るか分からない。

「えー、日本には『当たって砕けろ』と言う諺がありまーす」

「そのココロは?」

「分かんない事を悩んでてもしゃあないから、とりあえずぶち当たれ、そして砕け散れと言う意味かと思われます」

「砕け散るのはまずくないかおい」

「私は早くマイホームに戻りたいのでぃす」

 私は変身して綾波●イになる。

「貴方は死なない。私が護るもの」

 クラインには分からないだろうが一部には有名な台詞を呟くと、取っ手を掴んだ。

 さあ、にょいぽんも頼んだよ。


 
 

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