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【閑話】ハルカとトラちゃん。
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「やっぱり大きな町は色んな店があるよねぇトラちゃん!」
私は初めて来るゼノンの町にテンションが上がる。
『そうですね、でも買い物の前にギルドの方へ挨拶に行きませんか?』
トラちゃんがメモを見せて来る。
あー、そうでしたそうでした。
営業と、今回入るダンジョンの魔物の討伐情報も仕入れなくては。
オ仕事、トテモ大事ヨ。
商業ギルドのギルマスさんは、チェリーナさんと言う、40代位の肝っ玉母ちゃんみたいな豪快な人だった。
「あらやだよ。今話題の調味料を扱ってるマーミヤ商会のオーナーってこんな若くて綺麗なお嬢ちゃんだったのかい。
ゼノンにもようやくショーユとミソが入ってくるようになったけど、すぐに売れちまってさぁ。すまないけど在庫持ってたら少し譲って貰えないかい?」
「勿論大丈夫ですよ!携帯用アイテムボックスに沢山入れてきたので」
そう。マーミヤ商会の知名度が上がってきたお蔭で、お高い大容量の携帯用アイテムボックス持ってても、
「あーあのマーミヤ商会さんだもんねぇ」
で済むようになってきたので、最近は輸送も大変楽なのである。
このドラえ●んのポケットのようなアイテムが作れるなら、何故家電製品が作れないんだろう。世間様もかなり便利になるのだが。
頭にパソコン仕込んで異世界の商品とこの世界の商品が買えて、たちまちお手元に届く上、接客が出来る、腕もたつ、お茶を入れるのも上手い、大工職人でもプロ級、メイドとしても完璧なトラちゃんを普通に作り出せるプルちゃんのような妖精もいるのに疑問ではある。
ただ、自分がポックリ逝ってからここに来るまでの流れもシステム的には全く解らないので、何かよんどころない事情があるのだろうと思うばかりである。
私は科学的な事は正直苦手である。
そこにトラちゃんがいる、そこに精霊さんズがいる、そこにアイテムボックスがある、それでいいではないか。
世の中、深堀りしない方が良いこともある。
閑話休題。
チェリーナさんの息子さん(16才だって。若いねえ)がギルドでバイトをしてるようで、味噌や醤油、ケチャップや日本酒、メンツユなども出したのをどんどん運んで行ってくれた。
調理法を書いた冊子も200ほど取り出す。いきなり調味料だけあっても中々すぐ調理出来るものでもないからね。
「助かるわぁ本当に!お客さんから催促来てるし船で往復20日はかかるからねえ。参ってたのよ」
チェリーナさんは大喜びしてくれた。
(髪の毛が蛇女ゴーゴンみたいになる大暴風な空の旅なら五時間ですけども。
ただものすごく燃費が悪いのか運転手が往復ともよく食べますが。
定期運行は経費的にペイしない?私も同感です)
いつものように脳内お気軽トークをしてるうちに思い出した。
ついでのように、パウンドケーキとクッキーも差し入れ的な気持ちで渡しておく。
「あ!うちの子仕入れで1回リンダーベルに一緒に連れていった時に食べたよう。これ、息子がすごくお気に入りなのよ。嬉しいわぁ~」
ホクホクのチェリーナさんに別れを告げ、すぐ近くの冒険者ギルドにも立ち寄った。
ムーアさんというギルマスさんも40代位だろうか。山男のような髭をたくわえたガチムチのオッサンである。
「おー、マーミヤ商会のハルカさんか。まあ入った入った」
マスター部屋に案内される。
忘れないうちに差し入れのパウンドケーキとクッキーを渡す。
「お?済まねえな気ぃ使わせちまって。
ところでどうしたんだいこんな遠くの町まで。確か引退届出てたよな?」
「いや、調味料を使った料理の講習の講師で呼ばれたんですけどね、なんだかダンジョンの魔物が多いとかで、ヘルプで潜る予定なんですよ」
「あー、エクストリームドライブの話か?そうなんだよなぁ、ここ数ヵ月大ケガして上に転送されてくる冒険者が多くてなぁ」
それは聞き捨てならないじゃないですか。
50階まではそれほど変化はないようだが、51階から下の強敵エリアの辺りから、クロルやダーククロル、クロロニアンの多数の目撃情報が入っているらしい。
「Sランク5人6人のパーティーでも70階から下は全滅しそうでとても行けないらしくて、そんなんじゃ稼ぎにならないと冒険者が減ってきてなぁ、ダンジョン周りの冒険者相手の宿屋や飯屋、アイテム屋なんかが商売上がったりみたいなんだよな。
うちの討伐依頼も達成率がだだ下がりよ。はははは………」
力なく溜め息をついて、クッキー食べていい?という顔をしたのでどうぞと目で合図すると早速開けて食べ出す。
「やっぱり疲れたときには甘いもんだよな、………ってうわぁ、何だようめぇなこのクッキー。うちの国のクッキーとえらい違いだ」
ノンストップで食べ出したので、速攻で袋からクッキーが無くなった。
「あぁ、………あの個性的な水分高回収高糖度の歯応えのある」
私は誉めようとしたが、上手い誉め言葉が見つからなかった。
「ぶははっ、そうだそれそれ。まあうちの国は甘いもんも、飯も、最近少しミソとかショーユとかでましにはなってきたけど不味いんだよなぁ、申し訳ない」
髭についたクッキーくずまで摘まんで残さず食べながら、ムーアさんは申し訳なさそうな顔をする。
パウンドケーキもすぐ食べようか悩んでる顔だったので、あと3袋ばかりクッキーを出して「ギルドの職員の皆さまと………」と笑顔で渡した。討伐後の買い取りや情報料と思えば安いもんだ。
「いや、悪いなぁ。そんじゃ有り難く」
いきなり1つの袋を開けてまた食べ出した。
オッサン今の私の話を聞いてたか?ギルドの皆さんと食えと言っただろうが。
まあいい。それより情報が欲しい。
「確か五階ごとに地上へ戻る転送用の魔法陣があるんですよね?」
「ああそう……ぐほっっぐほっ」
クッキーを詰まらせて咳き込むムーアさんにタイミングよく職員のお姉さんがお茶を持ってきてくれた。
「マスター、またこそこそと何を食べて………あああっ!それはまさかマーミヤ商会のアーモンドクッキーっ!!」
お盆ごとテーブルにダンっと放り出すように乗せると、慌ててムーアさんからクッキーの数枚残った袋を取り上げる。
手つかずのクッキー2袋とパウンドケーキも取り上げると、
「ハルカさん、これはうちのギルド職員宛の差し入れということで宜しいんですよね?」
「いやパウンドケーキは俺に……」
ムーアさんが慌てて立ち上がる。
「宜しいんですよね?!」
「え、ええまあ」
「ありがとうございます!本当にマーミヤ商会のスイーツは美味しくて、こないだ武道会観に行った同僚が買ってきたココアとかのパウンドケーキとフィナンシェというのが、もう泣けるほど美味しかったです!こちらに支店は出さないんでしょうか?」
ぐいぐい来ますねお姉さま。
「あははは。いやまあとても有り難いお言葉ですが、まだ初めての店を開いてからもそんな経ってませんし。
ある程度落ち着いてから前向きに検討したいと思う所存でございます」
などと国会答弁みたいな曖昧な返答をして逃げました。
でも多分出さないかな。管理するには遠すぎる。
残念そうに戻って行くお姉さまは、暫くダンジョンの話を聞いている間に一度お茶の入れ替えで戻ってきて、私とムーアさんに、スライスチーズみたいに薄く切られたパウンドケーキを2切れ置いていった。
ムーアさん涙目ですけど。
なんかダークフォースに飲み込まれそうなアナキン・スカイウォーカーみたいになってたので、「内緒ですよ」とこっそりマドレーヌとココアのパウンドケーキもそっと渡す。
ムーアよ、フォースの力を信じるのじゃ、と心で●ーダ様になり応援しておいた。
しかし、この国のオッサン連中も甘いもんとか好きなのね。シュルツさんも全商品食べたとか言ってたし。
ともかくご機嫌を直したムーアさんにダンジョンあるあるなどを教えてもらい、市場に向かう前に口座カードの更新をしたら2000万ドラン(2億円)を超えていた。
必死に平静を装ったが、私の方がダークサイドに飲まれてしまいそうである。
どんな営業してんのよケルヴィンさん。ほどほどでいいとあれほど言ってるのに。
ギルドを出て1つ息をつくと、気を取り直して市場の方へ歩いて行った。
ダンジョンが80階層より下は前人未踏でどこまであるか分からないけど、ある程度は討伐しておかないとまずいよね。
というよりも、美味しいお肉が取り放題ならそこはパラダイス。
大事なものは食である。
調味料は腐るほど持ってきてるので、野菜や魚介類を中心に購入。
水も大量に買う。
洞窟内で川が流れてる訳もないし。
地下水が飲めるかも分からないし、水もとても大事である。
しかし、市場を歩いていると、肉や魚を焼いているが、まだ味つけはほぼ塩オンリーである。
店で使えるほどには出回ってなかったらしい。今回大量に卸したので少しはましにはなると良いのだが………。
ふと思う。
「今夜の晩餐会、まさか味つけ塩と砂糖とハチミツとかだけじゃないよね?あ、唐辛子もあったか」
不安をトラちゃんに話すと、
『シュルツさんがやたら買い込んでおられたので、まさかそれはないかと』
「だよねぇ?」
だが、晩餐会なんて堅苦しいところで緊張するのに、ご飯が不味いとかは反則である。拷問に近い。
早足で城に戻ると、メイドさんに厨房を仕事の参考のため見せて欲しいとお願いする。
厨房の料理人さん達は親切で(まあ客人対応だろう)、料理の下ごしらえ中でも案内をしてくれた。
………。おうふ。
醤油と味噌も一応置いてあるけど、よくわかってないのか使い方が無茶苦茶である。
そんなにショーユだばだば入れたら肉の味しなくなるよ。それも砂糖もハチミツも入れちゃいねえ。しょっぱくて食べられないでしょうよ。
あああ、なんで付け合わせのマッシュポテトみたいにミソを皿に盛ってるのよ。
だめだ。
不味いご飯も食べたくないが、それよりもプロの料理人さんにこんな使い方させてはいけない。舌がおかしくなる。
「すみませーん料理人の皆さま!
正しい調味料の使い方と言うのを実践しながらご説明しますので、是非ともご協力くださーい。
皇帝陛下も喜ぶ味つけで、私もハッピー皆さまもハッピー。ちゃちゃっと楽して美味しく見映えもよい料理を作りたい方ー」
「「「おーーーー!!お願い致します!!!」」」
良かった、話のわかる人たちで。
でも、結局自分が作って自分で食べるのかぁ、となんとなくガッカリしつつ、即席料理講習は開催されるのであった。
私は初めて来るゼノンの町にテンションが上がる。
『そうですね、でも買い物の前にギルドの方へ挨拶に行きませんか?』
トラちゃんがメモを見せて来る。
あー、そうでしたそうでした。
営業と、今回入るダンジョンの魔物の討伐情報も仕入れなくては。
オ仕事、トテモ大事ヨ。
商業ギルドのギルマスさんは、チェリーナさんと言う、40代位の肝っ玉母ちゃんみたいな豪快な人だった。
「あらやだよ。今話題の調味料を扱ってるマーミヤ商会のオーナーってこんな若くて綺麗なお嬢ちゃんだったのかい。
ゼノンにもようやくショーユとミソが入ってくるようになったけど、すぐに売れちまってさぁ。すまないけど在庫持ってたら少し譲って貰えないかい?」
「勿論大丈夫ですよ!携帯用アイテムボックスに沢山入れてきたので」
そう。マーミヤ商会の知名度が上がってきたお蔭で、お高い大容量の携帯用アイテムボックス持ってても、
「あーあのマーミヤ商会さんだもんねぇ」
で済むようになってきたので、最近は輸送も大変楽なのである。
このドラえ●んのポケットのようなアイテムが作れるなら、何故家電製品が作れないんだろう。世間様もかなり便利になるのだが。
頭にパソコン仕込んで異世界の商品とこの世界の商品が買えて、たちまちお手元に届く上、接客が出来る、腕もたつ、お茶を入れるのも上手い、大工職人でもプロ級、メイドとしても完璧なトラちゃんを普通に作り出せるプルちゃんのような妖精もいるのに疑問ではある。
ただ、自分がポックリ逝ってからここに来るまでの流れもシステム的には全く解らないので、何かよんどころない事情があるのだろうと思うばかりである。
私は科学的な事は正直苦手である。
そこにトラちゃんがいる、そこに精霊さんズがいる、そこにアイテムボックスがある、それでいいではないか。
世の中、深堀りしない方が良いこともある。
閑話休題。
チェリーナさんの息子さん(16才だって。若いねえ)がギルドでバイトをしてるようで、味噌や醤油、ケチャップや日本酒、メンツユなども出したのをどんどん運んで行ってくれた。
調理法を書いた冊子も200ほど取り出す。いきなり調味料だけあっても中々すぐ調理出来るものでもないからね。
「助かるわぁ本当に!お客さんから催促来てるし船で往復20日はかかるからねえ。参ってたのよ」
チェリーナさんは大喜びしてくれた。
(髪の毛が蛇女ゴーゴンみたいになる大暴風な空の旅なら五時間ですけども。
ただものすごく燃費が悪いのか運転手が往復ともよく食べますが。
定期運行は経費的にペイしない?私も同感です)
いつものように脳内お気軽トークをしてるうちに思い出した。
ついでのように、パウンドケーキとクッキーも差し入れ的な気持ちで渡しておく。
「あ!うちの子仕入れで1回リンダーベルに一緒に連れていった時に食べたよう。これ、息子がすごくお気に入りなのよ。嬉しいわぁ~」
ホクホクのチェリーナさんに別れを告げ、すぐ近くの冒険者ギルドにも立ち寄った。
ムーアさんというギルマスさんも40代位だろうか。山男のような髭をたくわえたガチムチのオッサンである。
「おー、マーミヤ商会のハルカさんか。まあ入った入った」
マスター部屋に案内される。
忘れないうちに差し入れのパウンドケーキとクッキーを渡す。
「お?済まねえな気ぃ使わせちまって。
ところでどうしたんだいこんな遠くの町まで。確か引退届出てたよな?」
「いや、調味料を使った料理の講習の講師で呼ばれたんですけどね、なんだかダンジョンの魔物が多いとかで、ヘルプで潜る予定なんですよ」
「あー、エクストリームドライブの話か?そうなんだよなぁ、ここ数ヵ月大ケガして上に転送されてくる冒険者が多くてなぁ」
それは聞き捨てならないじゃないですか。
50階まではそれほど変化はないようだが、51階から下の強敵エリアの辺りから、クロルやダーククロル、クロロニアンの多数の目撃情報が入っているらしい。
「Sランク5人6人のパーティーでも70階から下は全滅しそうでとても行けないらしくて、そんなんじゃ稼ぎにならないと冒険者が減ってきてなぁ、ダンジョン周りの冒険者相手の宿屋や飯屋、アイテム屋なんかが商売上がったりみたいなんだよな。
うちの討伐依頼も達成率がだだ下がりよ。はははは………」
力なく溜め息をついて、クッキー食べていい?という顔をしたのでどうぞと目で合図すると早速開けて食べ出す。
「やっぱり疲れたときには甘いもんだよな、………ってうわぁ、何だようめぇなこのクッキー。うちの国のクッキーとえらい違いだ」
ノンストップで食べ出したので、速攻で袋からクッキーが無くなった。
「あぁ、………あの個性的な水分高回収高糖度の歯応えのある」
私は誉めようとしたが、上手い誉め言葉が見つからなかった。
「ぶははっ、そうだそれそれ。まあうちの国は甘いもんも、飯も、最近少しミソとかショーユとかでましにはなってきたけど不味いんだよなぁ、申し訳ない」
髭についたクッキーくずまで摘まんで残さず食べながら、ムーアさんは申し訳なさそうな顔をする。
パウンドケーキもすぐ食べようか悩んでる顔だったので、あと3袋ばかりクッキーを出して「ギルドの職員の皆さまと………」と笑顔で渡した。討伐後の買い取りや情報料と思えば安いもんだ。
「いや、悪いなぁ。そんじゃ有り難く」
いきなり1つの袋を開けてまた食べ出した。
オッサン今の私の話を聞いてたか?ギルドの皆さんと食えと言っただろうが。
まあいい。それより情報が欲しい。
「確か五階ごとに地上へ戻る転送用の魔法陣があるんですよね?」
「ああそう……ぐほっっぐほっ」
クッキーを詰まらせて咳き込むムーアさんにタイミングよく職員のお姉さんがお茶を持ってきてくれた。
「マスター、またこそこそと何を食べて………あああっ!それはまさかマーミヤ商会のアーモンドクッキーっ!!」
お盆ごとテーブルにダンっと放り出すように乗せると、慌ててムーアさんからクッキーの数枚残った袋を取り上げる。
手つかずのクッキー2袋とパウンドケーキも取り上げると、
「ハルカさん、これはうちのギルド職員宛の差し入れということで宜しいんですよね?」
「いやパウンドケーキは俺に……」
ムーアさんが慌てて立ち上がる。
「宜しいんですよね?!」
「え、ええまあ」
「ありがとうございます!本当にマーミヤ商会のスイーツは美味しくて、こないだ武道会観に行った同僚が買ってきたココアとかのパウンドケーキとフィナンシェというのが、もう泣けるほど美味しかったです!こちらに支店は出さないんでしょうか?」
ぐいぐい来ますねお姉さま。
「あははは。いやまあとても有り難いお言葉ですが、まだ初めての店を開いてからもそんな経ってませんし。
ある程度落ち着いてから前向きに検討したいと思う所存でございます」
などと国会答弁みたいな曖昧な返答をして逃げました。
でも多分出さないかな。管理するには遠すぎる。
残念そうに戻って行くお姉さまは、暫くダンジョンの話を聞いている間に一度お茶の入れ替えで戻ってきて、私とムーアさんに、スライスチーズみたいに薄く切られたパウンドケーキを2切れ置いていった。
ムーアさん涙目ですけど。
なんかダークフォースに飲み込まれそうなアナキン・スカイウォーカーみたいになってたので、「内緒ですよ」とこっそりマドレーヌとココアのパウンドケーキもそっと渡す。
ムーアよ、フォースの力を信じるのじゃ、と心で●ーダ様になり応援しておいた。
しかし、この国のオッサン連中も甘いもんとか好きなのね。シュルツさんも全商品食べたとか言ってたし。
ともかくご機嫌を直したムーアさんにダンジョンあるあるなどを教えてもらい、市場に向かう前に口座カードの更新をしたら2000万ドラン(2億円)を超えていた。
必死に平静を装ったが、私の方がダークサイドに飲まれてしまいそうである。
どんな営業してんのよケルヴィンさん。ほどほどでいいとあれほど言ってるのに。
ギルドを出て1つ息をつくと、気を取り直して市場の方へ歩いて行った。
ダンジョンが80階層より下は前人未踏でどこまであるか分からないけど、ある程度は討伐しておかないとまずいよね。
というよりも、美味しいお肉が取り放題ならそこはパラダイス。
大事なものは食である。
調味料は腐るほど持ってきてるので、野菜や魚介類を中心に購入。
水も大量に買う。
洞窟内で川が流れてる訳もないし。
地下水が飲めるかも分からないし、水もとても大事である。
しかし、市場を歩いていると、肉や魚を焼いているが、まだ味つけはほぼ塩オンリーである。
店で使えるほどには出回ってなかったらしい。今回大量に卸したので少しはましにはなると良いのだが………。
ふと思う。
「今夜の晩餐会、まさか味つけ塩と砂糖とハチミツとかだけじゃないよね?あ、唐辛子もあったか」
不安をトラちゃんに話すと、
『シュルツさんがやたら買い込んでおられたので、まさかそれはないかと』
「だよねぇ?」
だが、晩餐会なんて堅苦しいところで緊張するのに、ご飯が不味いとかは反則である。拷問に近い。
早足で城に戻ると、メイドさんに厨房を仕事の参考のため見せて欲しいとお願いする。
厨房の料理人さん達は親切で(まあ客人対応だろう)、料理の下ごしらえ中でも案内をしてくれた。
………。おうふ。
醤油と味噌も一応置いてあるけど、よくわかってないのか使い方が無茶苦茶である。
そんなにショーユだばだば入れたら肉の味しなくなるよ。それも砂糖もハチミツも入れちゃいねえ。しょっぱくて食べられないでしょうよ。
あああ、なんで付け合わせのマッシュポテトみたいにミソを皿に盛ってるのよ。
だめだ。
不味いご飯も食べたくないが、それよりもプロの料理人さんにこんな使い方させてはいけない。舌がおかしくなる。
「すみませーん料理人の皆さま!
正しい調味料の使い方と言うのを実践しながらご説明しますので、是非ともご協力くださーい。
皇帝陛下も喜ぶ味つけで、私もハッピー皆さまもハッピー。ちゃちゃっと楽して美味しく見映えもよい料理を作りたい方ー」
「「「おーーーー!!お願い致します!!!」」」
良かった、話のわかる人たちで。
でも、結局自分が作って自分で食べるのかぁ、となんとなくガッカリしつつ、即席料理講習は開催されるのであった。
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