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武道会【中編】
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S級ガチムチのハンマー使いの冒険者が闘技場に現れると、おおお、とどよめきが沸く。
強そうオーラ全開である。
ハルカは、ニヒルな表情を作りながらも、
(よっしゃーもらった!これなら負けられるぞー)
と心でガッツポーズをした。
『始め!!』
判定員のおっちゃんが言うがいなか、ハルカはスススっとハンマー使いのオッサンに近寄る。
一撃位は入れないと形的に不味かろう、と如意棒もどきを突き出す。
当然S級なので軽く避ける。避ける。
何回かは仕掛けないと流石にアレなんで上手いこと避けてくれて助かるけど。
2メートル位あるくせにフットワーク軽いオッサンである。
さあ、そちらも一撃はよ。
倒れる気満々ですよあてくし。
しかし、いくら待っても避けるだけで攻撃もしてこない。
何でだ。
「ちょ、ちょっと、何で攻撃して来ないんですか?」
打ち込みながら動き回ってるので、少し息が上がってきたハルカは、いい加減終わらないかしらと思い声をかける。
「………女性に攻撃は出来ん」
………常連客ではなかったが、オッサンはフェミニストだった。
ハルカは怒りのままに、手加減してた如意棒もどきを全力で叩きつけた。
「お前は石川●衛門かぁぁーーそれともヤサ●かーー!!極悪顔のト●ロみたいな見た目しやがってぇぇぇ!!フェミニストなんぞ闘いには不要なんじゃあぁぁぁ」
どうせ日本のマンガのキャラクターなど分かりゃしないので、荒ぶるままに言葉を溢れさせ、如意棒もどきを振り回す。
●トロ、もといハンマー使いは避けきれず吹っ飛んで、はっと気がつけばベスト4である。
「………何をやってんだお前は。わざと当たりに行って倒れる手もあったろうが」
控え室で正座するハルカにこんこんと説教をするプルに、えうえう泣きながらハルカが「違うんです違うんですあの腐れフェミニストが悪いんです私は悪くないんです」と訴えている。
「ちょっとぉ、準決勝よハルカ。こんなときまでチート運発揮しなくていいんだってば」
「私に言わないで女神様に言って下さい。
そもそも私は勝ちたくないのに、女神様も少し気を遣ってくれても良くないでしょうか。
でしょう?私も好きで荒ぶった訳ではないのです!むしろ被害者なのでぃーす」
「………開き直った………」
「結果的に己の首を真綿で絞めてるだけだがな。俺様達は痛くも痒くもないし。
………ほいじゃ帰るか」
「そうねぇ帰ってお茶でも。ラウール、ほらいつまでも寝てないで行くわよ」
始まった当初からほぼ置物と化していたラウールがのそりと立ち上がった。
《……お?もう終わったのか?じゃ帰って飯かのぅ?》
「わたくしが200%悪うございました。平に平にお許し下さいませ」
帰ろうとする三人と一匹に土下座、と言うかうつ伏せに寝ているので寝下座になるハルカ。
限界まで頭を下げた体勢である。
頭の前に合わせた手にぽふ、とプルが足を乗せた。
「心のなかでどっかにある負けたくないというプライドを捨てろ。優勝なんかしてみろ、A級なのにと有名になって転生者であることがバレる可能性があるだろうが」
「かしこまりましてございます」
「おいミリアン、次は普通のS級だよな?」
プルが問いかけると、首をかしげる。
「らしいんだけど、アタシ組んだことないから解らないのよねぇ………」
「客か?客じゃないよな?」
「見た覚えはないなぁ、ハルカはどう?」
「あのテイマーさん?知らない。ただ私は厨房にいることが多いから、絶対にお客さんでないとは言い切れないなぁ」
テイマーというのは、一言で言えば猛獣使いである。
自分の武器の代わりに動物を使って戦う訳だ。
大概は狼や豹的な四つ足の敏捷で攻撃力の高い生き物が多いが、あまり使いこなせる人が多くないのと、攻撃力高い動物ほど人に慣れにくいのか、テイマー自体は少ないらしい。
今回準決勝に勝ち進んだテイマーも見た目は若干ラウールに似た黒くてデカイ犬というか狼系の子を連れている。
「今度こそ負けろよ?」
「はいっ!!全力で負けに行きます!」
「俺様は腹が減ってきたのでさっさと終わらせて帰りたい。ちなみにヴェルサスのすき焼きが食いたいな」
「肉山盛りでございますね。かしこまりましてございます!」
《ワシもすき焼き食いたい》
「………ラウール寝てただけのクセに」
ミリアンが睨むと、
《あいわかった。応援するぞ》
よし、今度こそ。もう後がない。
いざ負けゆかん自宅の道を。
円陣を組んだハルカ達は、既に悲壮感すら漂っていた。
強そうオーラ全開である。
ハルカは、ニヒルな表情を作りながらも、
(よっしゃーもらった!これなら負けられるぞー)
と心でガッツポーズをした。
『始め!!』
判定員のおっちゃんが言うがいなか、ハルカはスススっとハンマー使いのオッサンに近寄る。
一撃位は入れないと形的に不味かろう、と如意棒もどきを突き出す。
当然S級なので軽く避ける。避ける。
何回かは仕掛けないと流石にアレなんで上手いこと避けてくれて助かるけど。
2メートル位あるくせにフットワーク軽いオッサンである。
さあ、そちらも一撃はよ。
倒れる気満々ですよあてくし。
しかし、いくら待っても避けるだけで攻撃もしてこない。
何でだ。
「ちょ、ちょっと、何で攻撃して来ないんですか?」
打ち込みながら動き回ってるので、少し息が上がってきたハルカは、いい加減終わらないかしらと思い声をかける。
「………女性に攻撃は出来ん」
………常連客ではなかったが、オッサンはフェミニストだった。
ハルカは怒りのままに、手加減してた如意棒もどきを全力で叩きつけた。
「お前は石川●衛門かぁぁーーそれともヤサ●かーー!!極悪顔のト●ロみたいな見た目しやがってぇぇぇ!!フェミニストなんぞ闘いには不要なんじゃあぁぁぁ」
どうせ日本のマンガのキャラクターなど分かりゃしないので、荒ぶるままに言葉を溢れさせ、如意棒もどきを振り回す。
●トロ、もといハンマー使いは避けきれず吹っ飛んで、はっと気がつけばベスト4である。
「………何をやってんだお前は。わざと当たりに行って倒れる手もあったろうが」
控え室で正座するハルカにこんこんと説教をするプルに、えうえう泣きながらハルカが「違うんです違うんですあの腐れフェミニストが悪いんです私は悪くないんです」と訴えている。
「ちょっとぉ、準決勝よハルカ。こんなときまでチート運発揮しなくていいんだってば」
「私に言わないで女神様に言って下さい。
そもそも私は勝ちたくないのに、女神様も少し気を遣ってくれても良くないでしょうか。
でしょう?私も好きで荒ぶった訳ではないのです!むしろ被害者なのでぃーす」
「………開き直った………」
「結果的に己の首を真綿で絞めてるだけだがな。俺様達は痛くも痒くもないし。
………ほいじゃ帰るか」
「そうねぇ帰ってお茶でも。ラウール、ほらいつまでも寝てないで行くわよ」
始まった当初からほぼ置物と化していたラウールがのそりと立ち上がった。
《……お?もう終わったのか?じゃ帰って飯かのぅ?》
「わたくしが200%悪うございました。平に平にお許し下さいませ」
帰ろうとする三人と一匹に土下座、と言うかうつ伏せに寝ているので寝下座になるハルカ。
限界まで頭を下げた体勢である。
頭の前に合わせた手にぽふ、とプルが足を乗せた。
「心のなかでどっかにある負けたくないというプライドを捨てろ。優勝なんかしてみろ、A級なのにと有名になって転生者であることがバレる可能性があるだろうが」
「かしこまりましてございます」
「おいミリアン、次は普通のS級だよな?」
プルが問いかけると、首をかしげる。
「らしいんだけど、アタシ組んだことないから解らないのよねぇ………」
「客か?客じゃないよな?」
「見た覚えはないなぁ、ハルカはどう?」
「あのテイマーさん?知らない。ただ私は厨房にいることが多いから、絶対にお客さんでないとは言い切れないなぁ」
テイマーというのは、一言で言えば猛獣使いである。
自分の武器の代わりに動物を使って戦う訳だ。
大概は狼や豹的な四つ足の敏捷で攻撃力の高い生き物が多いが、あまり使いこなせる人が多くないのと、攻撃力高い動物ほど人に慣れにくいのか、テイマー自体は少ないらしい。
今回準決勝に勝ち進んだテイマーも見た目は若干ラウールに似た黒くてデカイ犬というか狼系の子を連れている。
「今度こそ負けろよ?」
「はいっ!!全力で負けに行きます!」
「俺様は腹が減ってきたのでさっさと終わらせて帰りたい。ちなみにヴェルサスのすき焼きが食いたいな」
「肉山盛りでございますね。かしこまりましてございます!」
《ワシもすき焼き食いたい》
「………ラウール寝てただけのクセに」
ミリアンが睨むと、
《あいわかった。応援するぞ》
よし、今度こそ。もう後がない。
いざ負けゆかん自宅の道を。
円陣を組んだハルカ達は、既に悲壮感すら漂っていた。
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