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オープンまで5日。
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レストランとパティスリーのオープンまであと5日。
昨日の時点でマイホームにはクライン達の荷物が運び込まれ、私やプルちゃん達のベッドや箪笥、テーブルなんかの家財道具もネット通販で購入して配置すると、大分【我が家】らしくなった。
引っ越し後の片付けの後は、労働に疲れた体へのご褒美でお風呂は男女の湯ともに温泉の素を豪勢に使い、ハルカもゆっくり浸かった。
みんなも最初は色がついてるのに驚いていたが、
「いい匂いするし気持ちいいな~疲れが取れたわー」
とかなり気に入ってくれたので、定期的に入浴剤は入れることに決まった。
シャンプーとトリートメント、ボディーソープもこちらで売ってるガラスの容器に入れ、利用する分だけスプーンで掬って使って貰う。
本当は日本で売ってるポンプ式の方が断然楽なのだが、見てわかるようなプラスチックなど異物感あるモノは、やはりこの国には持ち込んではいけない気がするので、出来る限り現代的な便利さは捨てることにしている。
まー、ケルヴィンにいずれプラスチック的なイレモノは開発してもらおうと思っているハルカではあるが。
こちらの素材で作れるモノは作って、結果的に町の人達も便利になるのならそれは万々歳である。
クラインには今まで借りていた部屋の掃除も済ませてカギは返した。
あの家にも大分お世話になりました。
でも、こちらは近所に民家もないし、広いし、料理も匂いとかにそれほど気を遣わなくてもいいのが嬉しい。
オーガキング様も2体も入手してきてくれたクライン達にも感謝をしつつ、お引っ越し記念で引っ越しそばならぬ、『引っ越しオーガキング様祭りアゲイン』を開催したが、ラウールが余りの美味しさに号泣し、この2000年で食った中でもベスト3に入るほどだと絶賛していた。
2000年もご飯食べててベスト3に入るんだ、まあ美味しいもんね確かに、とハルカも感心していたら、残りの2つもハルカが作ったバルバロスの焼き鳥とヴェルサスのすき焼きだった。
なんで3か月程度で全部書き換わっとんねんベスト3が、と突っ込みたくなったが、基本味なしの生肉ばかり食べていたのであれば致し方あるまい。
この調子だとランキングがほぼ自分が作った料理に入れ替わりそうである。
動物は内臓の機能的に塩気の強いのとか消化不良になりそうなので、人間が食べるような味のついたモノは身体に良くないんじゃないかとハルカはラウールに聞いたのだが、
《問題ないな。別に体調も悪くならんし絶好調じゃ。むしろまたあの味気ない肉の味だけの生活になる方がツラい》
と返された。
言質は取ったから良かろうと思い、結局ハルカ達と同じご飯を食べている。
大丈夫と本人が言うんだから大丈夫だろう。
万が一塩分過多で早死にしても本人の希望だから本望だろう。
《味のない2000年より味のついた100年を!ノーショーユノーライフ!》
とか変なスローガンみたいなの唱えてたし。
流石に100年も自分は生きてないだろうが、生きてる間はこの不憫な長老に美味しいご飯を振る舞ってあげようとハルカは決意するのだった。
〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰
商業ギルドのギルマス、麺類大好きチューナーさんが見つけてきてくれたバイト希望者さんは、皆さん働き者でいい人ばかりであったが、男女取り混ぜて20人も来られても困るんですよ。
まだ営業が軌道に乗るかも分からないのに、そんなに大勢の生活は抱えられない。
申し訳ないが、レストランで6人(こちらは全員男性)、パティスリーは4人(3人女性、1人だけ男性)の計10人を採用させて頂いた。
ここにミリアンの妹ニコルがパティスリーに加わる。新しい仕事仲間は計11人だ。
ただ、せっかくチューナーさんがお薦めの人を集めてくれたので、状況によって臨時でお手伝い頼んだり、辞めた人の穴埋めなどもあるかも知れないので、協力頂ける方には連絡先を聞いておいた。
泣く泣く断った10人のうち、8人が「是非何かあれば声をかけて下さい」と言ってくれた。
ありがたやありがたや。
心優しい人達ばかりでちょっと泣きそうだ。店が人手が足りなくなれば真っ先にお願いしたいものである。
ハルカはメニューを確定して、オープンまで料理とケーキを山のように作成しなくてはならないので、ミリアンにはバイトさんの教育を丸投げした。
といっても、レストランで料理の匂いというのは客を引き込む要素である。
その上、私が常時いるなら出来立てをそのまま保管できるが、マーミヤ商会の責任者でもあるのであちこち動き回る可能性が高い。基本無理である。
なので、完成した状態までは作らず、唐揚げもタレに漬け込んだまま、あとは揚げればいいようにするとか、しょうが焼きとかも専用のタレを作って肉を焼いてタレをかければ完成とか、一手間位はかけられるように一歩手前までの処理にすることにした。
レストランとパティスリーの冷蔵庫は魔石に水魔法を封印し、冷蔵状態を保てるようにしてあるので、1日2日位で消化できるなら肉なども傷むまい。
ただ、ケーキ関連はどうしても見映えが悪くなるので売り物として最後の一手間というのは下手に失敗できない。
パティスリーの子には接客と売り子メインで構わないので、くれぐれも持ち帰るお客様のためにケーキなどを潰さないで箱に入れる方法を学んで頂くようお願いした。
こちらの指導教官はトラちゃんである。
メイド業を極めているトラちゃんは、ちゃんと【お仕事のしおり】を作成しておりバイトさん達に配っていた。
店をやることにした辺りから地道に作っていたようだ。
それをマニュアル代わりに客席テーブルを使い、学校の先生のように黒板のようなものを使いながら教えている。
自分のそばに置いておくには勿体ないほどよく出来た子である。
プルちゃんも女神さまの仕事サボりながらもこちらでは真面目に働いてくれている。
クラインもよく説教はされるが、優しくてハルカをよく助けてくれている。
ケルヴィンさんやミリアン、テンちゃんやラウールも既になくてはならない存在である。
両親が亡くなって、ただ生きていくのに精一杯で、ろくに親しい友達も作れなかった自分が、あっちでポックリ死んでしまったものの、異世界に来たら一年もしないうちに家族的な仲間達が何人も出来て、みんなと一緒に暮らしたり旅をしたり討伐したり、そしてご飯を作ったり、更にはお店や家を建てたりと、既に一生分の運を使ってしまっているようなてんこ盛りの幸せがここにはあるのだ。
(女神さまのお蔭で、毎日楽しく暮らせてます。正直、転生していきなり森の中に放置プレイされた時には、女神さまツラ貸せやと文句の一つも言ってやりたかったですが、そのせいでクラインに拾ってもらえたし、みんなと知り合う事も出来たので結果オーライです)
ハルカはしみじみと心で女神さまに感謝を捧げていた。
「さあて。それではオープンに向けて、私も働きますかねぇ」
うーん、と伸びをしてメニュー確定と足りない食材の買い出しをするべく、ケルヴィンさん達と打ち合わせするため自宅に戻ることにした。
これからハルカはオープンまで地獄のような怒涛のスイーツ作成ラッシュとフード作成ラッシュが訪れるが、予備も含めて作るので、その後1週間位は楽が出来ると呑気に考えていた。
だが、マーミヤ商会のレストランとパティスリーがリンダーベルにオープンするというニュースは、国内のハルカ達が訪れた町々に商人や冒険者などを通じて思った以上のスピードで駆け巡り、何としてもまたハルカの料理を食べたいと思う人々がゾンビのようにリンダーベルに集結しつつあることは、まったく予想していなかった。
昨日の時点でマイホームにはクライン達の荷物が運び込まれ、私やプルちゃん達のベッドや箪笥、テーブルなんかの家財道具もネット通販で購入して配置すると、大分【我が家】らしくなった。
引っ越し後の片付けの後は、労働に疲れた体へのご褒美でお風呂は男女の湯ともに温泉の素を豪勢に使い、ハルカもゆっくり浸かった。
みんなも最初は色がついてるのに驚いていたが、
「いい匂いするし気持ちいいな~疲れが取れたわー」
とかなり気に入ってくれたので、定期的に入浴剤は入れることに決まった。
シャンプーとトリートメント、ボディーソープもこちらで売ってるガラスの容器に入れ、利用する分だけスプーンで掬って使って貰う。
本当は日本で売ってるポンプ式の方が断然楽なのだが、見てわかるようなプラスチックなど異物感あるモノは、やはりこの国には持ち込んではいけない気がするので、出来る限り現代的な便利さは捨てることにしている。
まー、ケルヴィンにいずれプラスチック的なイレモノは開発してもらおうと思っているハルカではあるが。
こちらの素材で作れるモノは作って、結果的に町の人達も便利になるのならそれは万々歳である。
クラインには今まで借りていた部屋の掃除も済ませてカギは返した。
あの家にも大分お世話になりました。
でも、こちらは近所に民家もないし、広いし、料理も匂いとかにそれほど気を遣わなくてもいいのが嬉しい。
オーガキング様も2体も入手してきてくれたクライン達にも感謝をしつつ、お引っ越し記念で引っ越しそばならぬ、『引っ越しオーガキング様祭りアゲイン』を開催したが、ラウールが余りの美味しさに号泣し、この2000年で食った中でもベスト3に入るほどだと絶賛していた。
2000年もご飯食べててベスト3に入るんだ、まあ美味しいもんね確かに、とハルカも感心していたら、残りの2つもハルカが作ったバルバロスの焼き鳥とヴェルサスのすき焼きだった。
なんで3か月程度で全部書き換わっとんねんベスト3が、と突っ込みたくなったが、基本味なしの生肉ばかり食べていたのであれば致し方あるまい。
この調子だとランキングがほぼ自分が作った料理に入れ替わりそうである。
動物は内臓の機能的に塩気の強いのとか消化不良になりそうなので、人間が食べるような味のついたモノは身体に良くないんじゃないかとハルカはラウールに聞いたのだが、
《問題ないな。別に体調も悪くならんし絶好調じゃ。むしろまたあの味気ない肉の味だけの生活になる方がツラい》
と返された。
言質は取ったから良かろうと思い、結局ハルカ達と同じご飯を食べている。
大丈夫と本人が言うんだから大丈夫だろう。
万が一塩分過多で早死にしても本人の希望だから本望だろう。
《味のない2000年より味のついた100年を!ノーショーユノーライフ!》
とか変なスローガンみたいなの唱えてたし。
流石に100年も自分は生きてないだろうが、生きてる間はこの不憫な長老に美味しいご飯を振る舞ってあげようとハルカは決意するのだった。
〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰
商業ギルドのギルマス、麺類大好きチューナーさんが見つけてきてくれたバイト希望者さんは、皆さん働き者でいい人ばかりであったが、男女取り混ぜて20人も来られても困るんですよ。
まだ営業が軌道に乗るかも分からないのに、そんなに大勢の生活は抱えられない。
申し訳ないが、レストランで6人(こちらは全員男性)、パティスリーは4人(3人女性、1人だけ男性)の計10人を採用させて頂いた。
ここにミリアンの妹ニコルがパティスリーに加わる。新しい仕事仲間は計11人だ。
ただ、せっかくチューナーさんがお薦めの人を集めてくれたので、状況によって臨時でお手伝い頼んだり、辞めた人の穴埋めなどもあるかも知れないので、協力頂ける方には連絡先を聞いておいた。
泣く泣く断った10人のうち、8人が「是非何かあれば声をかけて下さい」と言ってくれた。
ありがたやありがたや。
心優しい人達ばかりでちょっと泣きそうだ。店が人手が足りなくなれば真っ先にお願いしたいものである。
ハルカはメニューを確定して、オープンまで料理とケーキを山のように作成しなくてはならないので、ミリアンにはバイトさんの教育を丸投げした。
といっても、レストランで料理の匂いというのは客を引き込む要素である。
その上、私が常時いるなら出来立てをそのまま保管できるが、マーミヤ商会の責任者でもあるのであちこち動き回る可能性が高い。基本無理である。
なので、完成した状態までは作らず、唐揚げもタレに漬け込んだまま、あとは揚げればいいようにするとか、しょうが焼きとかも専用のタレを作って肉を焼いてタレをかければ完成とか、一手間位はかけられるように一歩手前までの処理にすることにした。
レストランとパティスリーの冷蔵庫は魔石に水魔法を封印し、冷蔵状態を保てるようにしてあるので、1日2日位で消化できるなら肉なども傷むまい。
ただ、ケーキ関連はどうしても見映えが悪くなるので売り物として最後の一手間というのは下手に失敗できない。
パティスリーの子には接客と売り子メインで構わないので、くれぐれも持ち帰るお客様のためにケーキなどを潰さないで箱に入れる方法を学んで頂くようお願いした。
こちらの指導教官はトラちゃんである。
メイド業を極めているトラちゃんは、ちゃんと【お仕事のしおり】を作成しておりバイトさん達に配っていた。
店をやることにした辺りから地道に作っていたようだ。
それをマニュアル代わりに客席テーブルを使い、学校の先生のように黒板のようなものを使いながら教えている。
自分のそばに置いておくには勿体ないほどよく出来た子である。
プルちゃんも女神さまの仕事サボりながらもこちらでは真面目に働いてくれている。
クラインもよく説教はされるが、優しくてハルカをよく助けてくれている。
ケルヴィンさんやミリアン、テンちゃんやラウールも既になくてはならない存在である。
両親が亡くなって、ただ生きていくのに精一杯で、ろくに親しい友達も作れなかった自分が、あっちでポックリ死んでしまったものの、異世界に来たら一年もしないうちに家族的な仲間達が何人も出来て、みんなと一緒に暮らしたり旅をしたり討伐したり、そしてご飯を作ったり、更にはお店や家を建てたりと、既に一生分の運を使ってしまっているようなてんこ盛りの幸せがここにはあるのだ。
(女神さまのお蔭で、毎日楽しく暮らせてます。正直、転生していきなり森の中に放置プレイされた時には、女神さまツラ貸せやと文句の一つも言ってやりたかったですが、そのせいでクラインに拾ってもらえたし、みんなと知り合う事も出来たので結果オーライです)
ハルカはしみじみと心で女神さまに感謝を捧げていた。
「さあて。それではオープンに向けて、私も働きますかねぇ」
うーん、と伸びをしてメニュー確定と足りない食材の買い出しをするべく、ケルヴィンさん達と打ち合わせするため自宅に戻ることにした。
これからハルカはオープンまで地獄のような怒涛のスイーツ作成ラッシュとフード作成ラッシュが訪れるが、予備も含めて作るので、その後1週間位は楽が出来ると呑気に考えていた。
だが、マーミヤ商会のレストランとパティスリーがリンダーベルにオープンするというニュースは、国内のハルカ達が訪れた町々に商人や冒険者などを通じて思った以上のスピードで駆け巡り、何としてもまたハルカの料理を食べたいと思う人々がゾンビのようにリンダーベルに集結しつつあることは、まったく予想していなかった。
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