35 / 144
連載
やっぱな。
しおりを挟む
ーーーーーーーーーーーー
「ありがとうございます、本当に助かりました……」
ザイーネさんは珍しい水色の髪をした小柄な可愛い女性だが、ヌーリエの冒険者ギルドのギルマスだそうだ。水魔法が使えるそうな。簡単な回復魔法とか攻撃魔法だけだそうで、それでも魔法を使える人が少ないのでかなりレアである。
冒険者の人達も程度が軽かったのか、すっかり体調も良くなったようで、良かった良かった。
私達がここまで来た理由を説明し、何か村の人達が同じとこに行ったり、同じものを食べたりとか何か思い当たる事がないかを確認する。
リンダーベルの3人は、鍾乳洞入った事ぐらいしかないと言っていた。
卵は別に破壊しなければ猛毒の問題もない。ただ相当固そうなので破壊するのも大変な気がする。
赤ん坊がよくこの硬い殻を破って出られるもんだ。小さくてもドラゴンだからかしら。
「伝染病だとこれから封鎖とかしたり色々大変だと思うんですけど……ただ伝染病だとしたら、普通に元気な人もいるし、症状に差が有りすぎるような気がするんですよねぇ」
私は自分の考えを告げた。
「個人的な考えですが、食中毒的なものも視野に入れた方がいいと思います」
「食中毒……」
ザイーネさんとギルドの人達も一緒に頭を捻る。
「……エウルの肉かしら?」
「あー、可能性ありますね!あれ元から臭みが少しあるからちょっと傷んでたとしても分かりにくいかも」
「エウル?」
聞いたことないな。
少なくともリンダーベルには売ってない。
確認すると、エウルというのは見た目は黒い羊みたいな動物で、ロンディール島か船で30分ほどのところにある無人島に生息しているそうだ。
ヌーリエの人達の貴重なたんぱく源だらしい。
味は臭みがあると言ってるので猪とか鹿肉みたいな感じだろうか。
ギルドの倉庫で保管しているエウルの肉を持ってきてもらう。
元々一頭か二頭捕まえて捌いたら村で分けてなくなったらまた捕獲に行く、といった感じだそうな。
「……結構な臭みで……て言うか絶対傷んでるよね?」
臭みとかより確実に匂いがヤバいよ。なんか目がしぱしぱするし。
暑さがここ数日キツかったらしいけど、冷蔵庫もない国では厳しいでしょ。
「超捨てて下さい。これ確実に危険なので」
色んなウィルス培養されてそうだ。
ギルドの兄さんが、商業ギルドの方でも肉を保管してるから伝えてくると走って出ていった。
「魚も肉も食中毒は命に関わるので、夏場は獲ったその日か遅くても翌日には消費しないとダメです。むしろ生の状態で保管は寄生虫とかいる場合あるし、煮るか焼くかで火を通さないとすぐに傷みますから!食材も勿体ないし皆さんの体にも悪いです」
「はっ、はいすみません!」
いかん。つい食べ物についてアツく語ってしまった。
「とりあえず、体力つけないと。皆さん夏で体力も落ちてますからね」
うーん、キノコと卵の雑炊と、肉食べる元気がある人用にバルバロスの唐揚げでも用意するか。
一応冒険者ではあるけど引退間近で、その前から食堂もやってる事を説明して、食べやすいものを作りたい事を伝える。
キッチンを借りれるというので、この村唯一のレストランに向かう事にした。
いや、ぶっちゃけキッチンがあってもなくてもほぼ魔法でやっちゃうからいいんだけどね。一応体裁はととのえないと。あまり人に知られてもいけないし。
「食堂って、まさかあのマーミヤ食堂ですか?」
「……?はい、マーミヤ食堂ご存知でしたか?」
この村には来たことないが、冒険者とかの話であったのかしら。
「やだわ、話題じゃないですか!今マーミヤ食堂の話題が一番ホットなんですよ。とっても美味しいご飯とスイーツがあるって。今度お店出されるんですって?
私も今度リンダーベルに会合で行く予定だったので、是非行こうと思ってたんです!
あとミソとショーユもお願いして先週からようやく商業ギルドで売り出せる手筈が整いまして、本当にお世話になってます」
店だす事は誰が言ってるんだ。職人さんか。心待ちにしてたもんね。
というかそんな噂が流れてるのも本人達が知らないってどうなんだろ。
「……あー、そういえばヌーリエに卸す話しましたわ僕」
ケルヴィンさんがのほほんと答えた。
営業は大事。ケルヴィンさんありがとうちゃんと仕事してくれて。
おかげでマーミヤ商会の知名度あるせいか話がスムーズでえらい楽だわ。
レストランは村の中央にあった。
途中戻って来るラウールとも会い、皆でレストランに歩きながら、ラウールに様子を聞いた。
《うむ。結構元気な奴が何人もいたから、元気な奴もエリクサーは一口ずつ飲んどけと言っといたぞ。思ったより具合悪いのは少なかったな》
「あの……先ほどから気になってたんですが、もしやラウール様はナイトウルフでは……?」
《おお。人間で知ってる奴に会うのは何百年ぶりかの。如何にもナイトウルフじゃ》
「はっ、ハルカさんっ、なんで聖獣がいるんですかっっ!私も本でしか知らないのに!!」
「うーん、と言われても」
なんか憧れの眼差しをラウールに注いでるザイーネさんに、いや油断して勝手に呪(しゅ)かけられて魔力も使えなくなってたのを助けたら人寂しいし飯が美味いからと一緒に生活する事になりました、とかはなんか言いづらい。
《ハルカといるとうまい飯が食えるのと、なんか色々と面白い事が多くての》
「聖獣も魅了するご飯……」
イメージ気を使ったのに自爆してるし。
やめろ勝手にハードル上げまくるのは。料理が好きなだけの素人やっちゅうねん。
糸目でラウールを睨むと、ちょっとアワアワした。
《まっ、まあ食というのは千差万別だしな。ほれ誰でも好き嫌いはあるじゃろう?単にワシの好みの味だったっちゅう事だな。他の人間の好みまでは分からんからの》
ラウールはこちらを窺うようにチラチラ見てくる。
私はよくやったと親指をそっと立てといた。
「ありがとうございます、本当に助かりました……」
ザイーネさんは珍しい水色の髪をした小柄な可愛い女性だが、ヌーリエの冒険者ギルドのギルマスだそうだ。水魔法が使えるそうな。簡単な回復魔法とか攻撃魔法だけだそうで、それでも魔法を使える人が少ないのでかなりレアである。
冒険者の人達も程度が軽かったのか、すっかり体調も良くなったようで、良かった良かった。
私達がここまで来た理由を説明し、何か村の人達が同じとこに行ったり、同じものを食べたりとか何か思い当たる事がないかを確認する。
リンダーベルの3人は、鍾乳洞入った事ぐらいしかないと言っていた。
卵は別に破壊しなければ猛毒の問題もない。ただ相当固そうなので破壊するのも大変な気がする。
赤ん坊がよくこの硬い殻を破って出られるもんだ。小さくてもドラゴンだからかしら。
「伝染病だとこれから封鎖とかしたり色々大変だと思うんですけど……ただ伝染病だとしたら、普通に元気な人もいるし、症状に差が有りすぎるような気がするんですよねぇ」
私は自分の考えを告げた。
「個人的な考えですが、食中毒的なものも視野に入れた方がいいと思います」
「食中毒……」
ザイーネさんとギルドの人達も一緒に頭を捻る。
「……エウルの肉かしら?」
「あー、可能性ありますね!あれ元から臭みが少しあるからちょっと傷んでたとしても分かりにくいかも」
「エウル?」
聞いたことないな。
少なくともリンダーベルには売ってない。
確認すると、エウルというのは見た目は黒い羊みたいな動物で、ロンディール島か船で30分ほどのところにある無人島に生息しているそうだ。
ヌーリエの人達の貴重なたんぱく源だらしい。
味は臭みがあると言ってるので猪とか鹿肉みたいな感じだろうか。
ギルドの倉庫で保管しているエウルの肉を持ってきてもらう。
元々一頭か二頭捕まえて捌いたら村で分けてなくなったらまた捕獲に行く、といった感じだそうな。
「……結構な臭みで……て言うか絶対傷んでるよね?」
臭みとかより確実に匂いがヤバいよ。なんか目がしぱしぱするし。
暑さがここ数日キツかったらしいけど、冷蔵庫もない国では厳しいでしょ。
「超捨てて下さい。これ確実に危険なので」
色んなウィルス培養されてそうだ。
ギルドの兄さんが、商業ギルドの方でも肉を保管してるから伝えてくると走って出ていった。
「魚も肉も食中毒は命に関わるので、夏場は獲ったその日か遅くても翌日には消費しないとダメです。むしろ生の状態で保管は寄生虫とかいる場合あるし、煮るか焼くかで火を通さないとすぐに傷みますから!食材も勿体ないし皆さんの体にも悪いです」
「はっ、はいすみません!」
いかん。つい食べ物についてアツく語ってしまった。
「とりあえず、体力つけないと。皆さん夏で体力も落ちてますからね」
うーん、キノコと卵の雑炊と、肉食べる元気がある人用にバルバロスの唐揚げでも用意するか。
一応冒険者ではあるけど引退間近で、その前から食堂もやってる事を説明して、食べやすいものを作りたい事を伝える。
キッチンを借りれるというので、この村唯一のレストランに向かう事にした。
いや、ぶっちゃけキッチンがあってもなくてもほぼ魔法でやっちゃうからいいんだけどね。一応体裁はととのえないと。あまり人に知られてもいけないし。
「食堂って、まさかあのマーミヤ食堂ですか?」
「……?はい、マーミヤ食堂ご存知でしたか?」
この村には来たことないが、冒険者とかの話であったのかしら。
「やだわ、話題じゃないですか!今マーミヤ食堂の話題が一番ホットなんですよ。とっても美味しいご飯とスイーツがあるって。今度お店出されるんですって?
私も今度リンダーベルに会合で行く予定だったので、是非行こうと思ってたんです!
あとミソとショーユもお願いして先週からようやく商業ギルドで売り出せる手筈が整いまして、本当にお世話になってます」
店だす事は誰が言ってるんだ。職人さんか。心待ちにしてたもんね。
というかそんな噂が流れてるのも本人達が知らないってどうなんだろ。
「……あー、そういえばヌーリエに卸す話しましたわ僕」
ケルヴィンさんがのほほんと答えた。
営業は大事。ケルヴィンさんありがとうちゃんと仕事してくれて。
おかげでマーミヤ商会の知名度あるせいか話がスムーズでえらい楽だわ。
レストランは村の中央にあった。
途中戻って来るラウールとも会い、皆でレストランに歩きながら、ラウールに様子を聞いた。
《うむ。結構元気な奴が何人もいたから、元気な奴もエリクサーは一口ずつ飲んどけと言っといたぞ。思ったより具合悪いのは少なかったな》
「あの……先ほどから気になってたんですが、もしやラウール様はナイトウルフでは……?」
《おお。人間で知ってる奴に会うのは何百年ぶりかの。如何にもナイトウルフじゃ》
「はっ、ハルカさんっ、なんで聖獣がいるんですかっっ!私も本でしか知らないのに!!」
「うーん、と言われても」
なんか憧れの眼差しをラウールに注いでるザイーネさんに、いや油断して勝手に呪(しゅ)かけられて魔力も使えなくなってたのを助けたら人寂しいし飯が美味いからと一緒に生活する事になりました、とかはなんか言いづらい。
《ハルカといるとうまい飯が食えるのと、なんか色々と面白い事が多くての》
「聖獣も魅了するご飯……」
イメージ気を使ったのに自爆してるし。
やめろ勝手にハードル上げまくるのは。料理が好きなだけの素人やっちゅうねん。
糸目でラウールを睨むと、ちょっとアワアワした。
《まっ、まあ食というのは千差万別だしな。ほれ誰でも好き嫌いはあるじゃろう?単にワシの好みの味だったっちゅう事だな。他の人間の好みまでは分からんからの》
ラウールはこちらを窺うようにチラチラ見てくる。
私はよくやったと親指をそっと立てといた。
25
お気に入りに追加
6,095
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました


魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。