異世界の皆さんが優しすぎる。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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やっぱな。

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「ありがとうございます、本当に助かりました……」

 ザイーネさんは珍しい水色の髪をした小柄な可愛い女性だが、ヌーリエの冒険者ギルドのギルマスだそうだ。水魔法が使えるそうな。簡単な回復魔法とか攻撃魔法だけだそうで、それでも魔法を使える人が少ないのでかなりレアである。

 冒険者の人達も程度が軽かったのか、すっかり体調も良くなったようで、良かった良かった。

 私達がここまで来た理由を説明し、何か村の人達が同じとこに行ったり、同じものを食べたりとか何か思い当たる事がないかを確認する。
 リンダーベルの3人は、鍾乳洞入った事ぐらいしかないと言っていた。
 卵は別に破壊しなければ猛毒の問題もない。ただ相当固そうなので破壊するのも大変な気がする。
 赤ん坊がよくこの硬い殻を破って出られるもんだ。小さくてもドラゴンだからかしら。

「伝染病だとこれから封鎖とかしたり色々大変だと思うんですけど……ただ伝染病だとしたら、普通に元気な人もいるし、症状に差が有りすぎるような気がするんですよねぇ」

 私は自分の考えを告げた。

「個人的な考えですが、食中毒的なものも視野に入れた方がいいと思います」

「食中毒……」

 ザイーネさんとギルドの人達も一緒に頭を捻る。

「……エウルの肉かしら?」

「あー、可能性ありますね!あれ元から臭みが少しあるからちょっと傷んでたとしても分かりにくいかも」

「エウル?」

 聞いたことないな。
 少なくともリンダーベルには売ってない。

 確認すると、エウルというのは見た目は黒い羊みたいな動物で、ロンディール島か船で30分ほどのところにある無人島に生息しているそうだ。
 ヌーリエの人達の貴重なたんぱく源だらしい。
 味は臭みがあると言ってるので猪とか鹿肉みたいな感じだろうか。

 ギルドの倉庫で保管しているエウルの肉を持ってきてもらう。
 元々一頭か二頭捕まえて捌いたら村で分けてなくなったらまた捕獲に行く、といった感じだそうな。

「……結構な臭みで……て言うか絶対傷んでるよね?」

 臭みとかより確実に匂いがヤバいよ。なんか目がしぱしぱするし。
 暑さがここ数日キツかったらしいけど、冷蔵庫もない国では厳しいでしょ。

「超捨てて下さい。これ確実に危険なので」

 色んなウィルス培養されてそうだ。

 ギルドの兄さんが、商業ギルドの方でも肉を保管してるから伝えてくると走って出ていった。

「魚も肉も食中毒は命に関わるので、夏場は獲ったその日か遅くても翌日には消費しないとダメです。むしろ生の状態で保管は寄生虫とかいる場合あるし、煮るか焼くかで火を通さないとすぐに傷みますから!食材も勿体ないし皆さんの体にも悪いです」

「はっ、はいすみません!」

 いかん。つい食べ物についてアツく語ってしまった。

「とりあえず、体力つけないと。皆さん夏で体力も落ちてますからね」

 うーん、キノコと卵の雑炊と、肉食べる元気がある人用にバルバロスの唐揚げでも用意するか。

 一応冒険者ではあるけど引退間近で、その前から食堂もやってる事を説明して、食べやすいものを作りたい事を伝える。
 キッチンを借りれるというので、この村唯一のレストランに向かう事にした。

 いや、ぶっちゃけキッチンがあってもなくてもほぼ魔法でやっちゃうからいいんだけどね。一応体裁はととのえないと。あまり人に知られてもいけないし。

「食堂って、まさかあのマーミヤ食堂ですか?」

「……?はい、マーミヤ食堂ご存知でしたか?」

 この村には来たことないが、冒険者とかの話であったのかしら。

「やだわ、話題じゃないですか!今マーミヤ食堂の話題が一番ホットなんですよ。とっても美味しいご飯とスイーツがあるって。今度お店出されるんですって?
 私も今度リンダーベルに会合で行く予定だったので、是非行こうと思ってたんです!
 あとミソとショーユもお願いして先週からようやく商業ギルドで売り出せる手筈が整いまして、本当にお世話になってます」

 店だす事は誰が言ってるんだ。職人さんか。心待ちにしてたもんね。
 というかそんな噂が流れてるのも本人達が知らないってどうなんだろ。

「……あー、そういえばヌーリエに卸す話しましたわ僕」

 ケルヴィンさんがのほほんと答えた。
 営業は大事。ケルヴィンさんありがとうちゃんと仕事してくれて。
 おかげでマーミヤ商会の知名度あるせいか話がスムーズでえらい楽だわ。

 レストランは村の中央にあった。

 途中戻って来るラウールとも会い、皆でレストランに歩きながら、ラウールに様子を聞いた。

《うむ。結構元気な奴が何人もいたから、元気な奴もエリクサーは一口ずつ飲んどけと言っといたぞ。思ったより具合悪いのは少なかったな》

「あの……先ほどから気になってたんですが、もしやラウール様はナイトウルフでは……?」

《おお。人間で知ってる奴に会うのは何百年ぶりかの。如何にもナイトウルフじゃ》

「はっ、ハルカさんっ、なんで聖獣がいるんですかっっ!私も本でしか知らないのに!!」

「うーん、と言われても」

 なんか憧れの眼差しをラウールに注いでるザイーネさんに、いや油断して勝手に呪(しゅ)かけられて魔力も使えなくなってたのを助けたら人寂しいし飯が美味いからと一緒に生活する事になりました、とかはなんか言いづらい。

《ハルカといるとうまい飯が食えるのと、なんか色々と面白い事が多くての》

「聖獣も魅了するご飯……」

 イメージ気を使ったのに自爆してるし。
 やめろ勝手にハードル上げまくるのは。料理が好きなだけの素人やっちゅうねん。

 糸目でラウールを睨むと、ちょっとアワアワした。

《まっ、まあ食というのは千差万別だしな。ほれ誰でも好き嫌いはあるじゃろう?単にワシの好みの味だったっちゅう事だな。他の人間の好みまでは分からんからの》

 ラウールはこちらを窺うようにチラチラ見てくる。
 私はよくやったと親指をそっと立てといた。


                                   
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