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ウナーギ祭り・増量中。

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 今夜の夕食はウナーギ祭りである。

 ただ、でかいのが10匹もいたし、小さい(といっても50センチはある)のも結構捕まえたので、食堂メニューに使うとしても向こう1年は困らないんじゃなかろうかという量である。
 それでも川にはまだ沢山うねうねしていた。よほど食用に適さないと思われてたのね。なんて勿体ない。


 マイホームと店舗のリフォームをして頂いてる職人さん達にも、モニタリングのつもりで「新商品の試食は如何ですかー?」とハルカがお誘いしたところ、まさかの全員参加という驚きの出席率になった。
 それにどこから聞きつけたのか、麺類をこよなく愛する商業ギルドのギルマスのチューナーさんや、冒険者ギルドの副ギルマスのマルコフさんも来るそうだ。
 いやまぁいいけども。麺はないぞ。

 総勢30人位はいるのでとても今暮らしている2LDKでは無理である。

 仕方がないので青空食堂の臨時開店として、いつもの馬車で通りすがりの市場で買い物もしながら、マイホーム予定地で試食会兼ねたディナーと相成りました。

 夏の季節のためか、日本と同じく夜になるまでが長い。夕方の6時を過ぎていてもとても明るい。8時頃までは夕方の感覚である。


 メニューは通常の蒲焼きに加え、天然モノの良さが分かるよう蒸さずに焼いたタレなしの白焼き、うざく(白焼きしたウナギを細かく切ったのと千切りにした胡瓜を三杯酢で合えた奴)、う巻き(我が家メニューでは厚焼き卵の真ん中にウナギの蒲焼きと青じそを入れたものである。自宅ではそれぞれ海苔を巻いたりするのとか個人差があるらしい)、そして食後はコーヒーゼリーでシンプルに口直ししてもらうことにした。
 
 一度研究所に戻ったケルヴィンがいそいそと持ってきた差し入れには、なんとワサビが入っていた。
 どうやら前に買い込んだものの栽培が成功したらしい。なんか巨大化してるけど、摺って味見したらちゃんとワサビであった。

 白焼きにつけると美味しいので2本ほどすりおろしてショーユと塩が入った器の横にスプーンをつけて置いといた。
 取りに来た人につーんとするから控え目につけてくださいねと注意する。
 でもやはり人の話を聞かない奴はいるので、直立不動で鼻を押さえ涙を流してるオッサンもいるので、付けすぎたのだろうと思われます。ええ。

 トラはプレゼントしたハッピを着て、何故か鉢巻きまでして黙々とウナーギを焼いている。

 焼き場が成人サイズの腰の位置にあるので、折り畳み式の高さのある踏み台みたいなものまで用意して座っている。確実に自家製である。

 階段を想像すると分かりやすいだろうか。高さに合わせて段を登ったり降りたりして丁度いい高さで接客が出来るのだ。
 あの子は大工のスキルまで身に付けたのか。
 でもハルカの腿くらいしか身長がないちびっこなので、あれは確かに便利である。
 プルも焼くの手伝うから座らせろと駄々をこねていた。
 ちなみにプルも似たような身長である。


 ウナーギだが、食べてる人には大好評である。
 ピーターさんは泣きながら妻と子供に持って帰りたいと懇願して来たので弁当にしてあげたら、見ていた周りの職人さん達もウチもウチもと土下座までされ、結構な数のお弁当を作るはめになった。
 いい宣伝だと思ってるのでこのくらいのサービスはなんと言う事もない。
 未来の常連さんは大切に。
 いくら高級食材とはいえ、原価はただみたいなもんだし。

 皆さんどちらもやたら食べてくれるが、飯派の人には味のしっかりついた蒲焼きが、お酒が好きな人は白焼きが人気である。
 うざくも最初は甘酸っぱいので驚かれるが、サッパリと食べられるので箸休めに丁度いいと言われた。
 箸休めという食べっぷりには見えないが。
 う巻きは、……まぁアレルギーでもない限り、割りと玉子焼きと言うのは受け入れやすいものらしい。食材が分かるというのも安心感に繋がるのではないかとハルカは考えていた。
 大体は味の予想がつくもんね。

 あらかた食い散らかした皆さまが帰った後に、接待していたハルカ達もようやく暮れてきた空を見ながらご飯である。

「あー……働いた後だから尚更美味しいなぁーっ!」

 ケルヴィンが蒲焼きでご飯をガツガツ食べつつ、う巻きにも手を伸ばす。

「これオッサン達もいってたけど、絶対メニューに加えるべきだな」

 クラインは白焼きを食べながら白ワインを飲んでいるようだ。
 ラウールも大皿に蒲焼きと白焼きを山積みにし、申し訳程度にご飯を添えてすごい勢いで食べていた。

《うむ。タレのはやはりご飯があった方が美味いな。味が濃いめじゃからな。
 しかし、肉好きのワシがここまで魚を食べるのも珍しいんだぞ?》

「まあでもあんまり魚には見えないわよね」

 ミリアンも気持ち悪がってた割りにはかなり食べているのでお気に召したようだ。

 プルがトラからお代わりの茶碗を受けとると、う巻きをつまみながら、

「しかしさ、討伐とかいって全部食用に捌いちゃ依頼の達成にならないんじゃないか?頭も骨もハルカが焼いて粉々にしてるし」

 もちろん、タレや調味料に使えないか研究する為である。

「いや、魔石あるので大丈夫ですよ。ウナーギしかあの真っ赤な色合いの石は出ないんで」

 ケルヴィンが満足そうにコーヒーゼリーに生クリームをかけながらプルに応えた。

「ほいじゃこの調子でとっとと引退興行終わらせようぜハルカ」

「そうだねぇ。日が落ちると涼しくて気持ちいいねぇ」


 のんびり返したハルカであったが、これから数日後に魔物どころではない大騒動が起きることは、ここにいる誰一人予想もしていなかった。





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