上 下
22 / 144
連載

戻るぜリンダーベルへ。

しおりを挟む
 ローリーの町での食堂の営業も大繁盛のうちに、何故か仲間が一人(一匹)増えたが無事に終了した。

 ローリーの商業ギルドのギルマス、フェイさん(男性)も40過ぎてるんですよ~と言う割りに10代にしか見えなかったり、冒険者ギルドのギルマス、カートさん(男性)も50過ぎてるのに20代にしか見えないけしからん人達だったが優しくて感じのいい人だった。

 ただ、ハルカが想像していた『エルフはみんなメチャメチャ綺麗で長生き』という刷り込みされた想像とはちょっと違っていた。

 確かに綺麗な人もいるが、そうでもない人もいる。
 ただ『時の流れがとっても緩やか』なのだ。血統がアンチエイジングである意味とても羨ましい。
 今のハルカは実際若いのでそれほどでもないが、年を取ってばーさまになった時に羨ましくなるだろうと思う。

 ただ、現時点でもうちにいる人外が時をだまくらかしてるので珍しくはない。

 しかし、エルフさん達は、びっくりするぐらいよく食べる。
 細いお姉さんでも普通に焼き肉丼にラーメンとか食べる。その上スイーツまで頼む。おいちゃんおばちゃん達(見た目は20代30代)はさらに倍である。

 なんでも新陳代謝が良すぎるせいで燃費が悪いようだ。お陰で太る事もないとのことで、ちょっとこれだけは羨ましかった。


 移動も含めてほぼ1か月近くサウザーリンの町をあちこち回ったら、ハルカ達は流石にホームシックというか、リンダーベルに戻りたくなったので、現在馬車でかぽかぽと戻り中である。


「早く戻って家を建てるぞー!」

 ハルカはみんなに貯金も貯まったので帰ったら家を建てる事を宣言した。

「それはいい。
 そんならハルカ、是非とも大スクリーンをつけたドラマ部屋を作ってくれ。俺様の貯金も使っていいから。いいソファも入れて疲れないようにすれば一気見とか出来るぞっ!」

 プルがハルカにきらきらした目でお願いをする。

「……僕のお金も使っていい……」

「プルちゃんもテンちゃんも貯金ないとDVDも好きなオヤツも買えないから持ってなさい。シアタールームは作ってあげるから」

 白い布だとやはりよれたりするので、そこはネット通販でちゃんと買うべきだね、せっかくのマイホームだし、とハルカはセレブ気分を味わった。

 きっとあっちの世界で仕事しててもこちらほどは稼げなかっただろうし、マイホームはほぼ夢の世界だったので、若くして死んだ自分へのご褒美だと思う事にした。
 いや、今はこちらの世界で生きてるんだけども。
 いっぺん死んでるから、こちらの生活はオマケみたいなもんであるとハルカはこの頃考えるようになった。
 
(オマケなら、マイホーム位作ってもいいよね?一応き、起業家(笑)だし?
 お金使わずにまたぽっくり死んだら稼いだ意味がないもんね)

 この若さでぽっくりとか考えるのもなんだが、何しろ1度若くして死んでるし、2度目も長生き出来るとは限らない。魔物とかいる世界だしね。
 その上また転生者になるかも解らない。なら悔いのないよう楽しめばいいのだ、と開き直る。

「プルちゃんもテンちゃんも個室も作ってあげるからね。トラちゃんも!」

「「『それは別にいらない』」」

「なんで即答?」

「一人で寝るより皆で寝たい」

 プルが言うとテンちゃんもトラちゃんも頷く。

「寝たい時は一緒でもいいし、一人で寝たい時もあるでしょ。それに自分達の荷物も増えてきたから、この機会にマイルームというのもあった方がいいよ」

《ワシにもあるか?マイルームとやらは》

「ラウールは野外とかで寝る方が好きなんじゃないの?建物の中より」

《虫とか魔物とか鬱陶しいから屋内がいい。それにファミリーっぽくないじゃろが。まあマイルームなくても別にハルカの部屋で眠るからいいけーー》

「「ハルカ、作ってあげて(ろ)!」」

 クラインとテンが食い気味にハルカにお願いしてきた。

「いや、屋内は窮屈かと思ってただけだからいいんだけどね。
 うーん、思ってたより大きな家になるかもなぁ」

 どのくらいかかるのかなぁ、まず戻ってから大工さんに見積り立ててもらうか、などとハルカがぶつぶつ言ってると、ミリアンがしなだれかかってきた。

「ねえハルカ~♪」

「……え、何よ?」

「アタシぃ、持ちなれないお金入ったしー、先々の事も考えると独り立ちしようと思ってたんだけどね、ハルカん家にマイルーム作って貰うのが一番かなぁって。お金は当然出すから。
 お ね が い?」

「……いや、でも恋人とか出来たら一人暮らしの方がいいんじゃないのかしら?
 ほら、そのー、イチャイチャしたりとか?」

「今は仕事が楽しいから男とかどうでもいいわ。万が一何年かして結婚とかで出る羽目になっても部屋は好きに使っていいし。それに毎日ハルカのご飯食べられるし」

「本音はそこか。
 でもいいよ。一部屋増えても大して変わらないし私もミリアンと一緒に住めるの嬉しいし」

「ハルカー大好き~♪」

「私も大好きだよ~お風呂も大きいの作って一緒に入ろうね~♪」

「いいけどチチは揉まさないわよ~♪」

「……ちぇっ」

 ろくでもないことを言いながら抱き合うハルカとミリアンを見ながら、クラインはちょいちょいとハルカをつついた。

「ん?何?クラインはチチ揉んだらダメよ?」

「チチはいいからっ!
 ……俺にも一部屋欲しいなと」

「え?なんで」

「旅に出るとか討伐行く時に荷物置いてある部屋があると便利だし。
 遅くなった時に家に帰るの面倒だしご飯食べられるし」

「クラインもご飯なのねポイントは。
 でも家が出来たら今借りてる家も出られるよ?
 クラインそこで暮らせばいいんじゃないの?」

「俺だけぼっちは……寂しいじゃないか。勿論金は出すから。
 飯も大人数で食べる方がより美味いし……その、俺の部屋も……」

 珍しくしおらしいクラインにハルカは苦笑し、

「分かった分かった!みんなの寝泊まり出来る部屋を作るわ。ったくどんだけ大豪邸作らせる気よ。
 いや、高級老人介護施設かしらね?何しろ平均年齢が400歳越えるものねぇ……」

《ジジイ扱いするな!まだぴちぴちの中年期だぞワシは!》

「中年期はぴちぴちとは言わんがなぁ~」

「……プルの意見に賛成。2000歳はじー様。
 僕らまだ500歳と300歳のひよっこ。正真正銘ぴっちぴち………」

《ぐぬぬぬぬぬぬ》

「大人げないからやめろ年寄り軍団。100年越えてりゃ人間界ではあり得ないほど長生きなんだよ。
 既にお前らは歴史的建造物とか絵画とかそのレベルなんだよ長生きっぷりが」

「……クラインが生き物扱いをしてくれないよハルカ……」

 テンがメソメソ泣く振りをしてハルカにしがみつく。

「クライン、種族で寿命みたいなもんが違うんだから苛めない。むしろ長く生きてるから色々知ってるし、知恵袋みたいで助かってるじゃない」

 よしよし、とテンの頭を撫でながらハルカはクラインをたしなめる。

「……ハルカ……」

 テンがうるうるした目で見上げ、

「それなら僕とけっ、ぶふぉっっ」

 いきなりプルがテンに飛び蹴りをかましてきた。
 わき腹強打され吹っ飛ぶテン。

「なっ、プルちゃんも何してんのよいきなりっ!」

「クライン……オメェさんの怨み、晴らしてやったぜ?」

 聞いたことある台詞を吐きながらプルがニヒルな笑みを湛えた。

「ありがとー、仕事人さーん」

 やや棒読みながらもクラインも応える。

「だからなんでここでそれなの」

「理由は、テンが解ってるぜ?」

 プルがニヒルモードのままテンを見た。

「……つい理性のストッパーが外れましたごめんなさい……」

「分かりゃいいんだよ分かりゃ、なぁクラインの?」

「そうだな、プルの。理性のたがは外れちゃいけねぇや。でえじょうぶだ、お前さんはやり直せる」

「……お役人さま……」

 テンの肩を叩きながら頷くクラインを見ると小芝居は続いてるようなので、ハルカはミリアンとラウールに振り返った。

「あのドラマバカ達は放置でいいわ。晩御飯でも作りましょ。ラウール、馬車を適当なとこで止めてくれるようトラちゃんに伝えてくれる?ついでにヤシチたちにもご飯あげてくれるよう伝えて」

 最初は1号2号とか呼んでた馬さん達だったのだが、いつのまにかドラマヲタク達からヤシチ、スケサン、カクサン、ハチベエと名付けられてしまっていた。

《あいわかった》

 ラウールは立ち上がると身軽に出ていった。

「ミリアンはご飯の手伝いね」

「了解~」

 ハルカはアイテムボックスから食材を出しつつ、早く戻って家を建てる楽しみでミリアンとあれこれ間取りについて話しながら、リンダーベルへ帰るのを楽しみにしていた。


 すっかり王国主催の武道大会だの舞踏会だのは記憶の彼方であった。



しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?

gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。 みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。 黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。 十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。 家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。 奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。