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とりあえずということで
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『おい何だよ、トウコ結婚すんのか? すげーじゃん。俺より先にツガイ見つけるなんてよ』
「ちょ、やだ違うよ! 結婚を見据えたお付き合いをしないかって言われただけだってば」
『ん? ……何が違うんだ? 付き合うなら結婚するってことだろ?』
私はナイトが戻って来るのを待ち、夕食を済ませるのを待ってから今日の出来事を相談した。
「いやいや、私まだ一八歳だよ? こっちにも来てそんなに経ってないし」
コンウェイ王国に来て数カ月で、年上のイケメンから結婚前提に付き合おうと言われるなんて誰が思うのよ。迷い人だろうと何だろうと、私はごくごく平凡な女なんだってば。しかも男性と付き合った経験なんてないのに。
『ふーん。俺らはそろそろサカリの時期とか来たりするけどさ、人間はないんだなサカリの時期って?』
「……まあ決まったサカリの時期がある訳でもないんだけどね。……え? ナイトってそろそろサカリの時期なの? 良い子がいるの?」
『んー、良い子っつうか、気の合う合わない関係なしにメスが寄ってくる時期だからなあ』
「ちょっとダメよ、やり逃げみたいなことをしたら! あちこちにナイトの子がいたりしたら困るわよ私。あんたの奥さんと子供たちは責任持って一緒に暮らすつもりだけど、そんなに愛人がいたら面倒見切れないってば」
『俺だって好みはあんだよ。……まあそれに仲間うちでは大体お相手が決まってっからさ、俺みたいな新参者はまだ見知らぬ誰かだと思うぜ?』
「そうか……新入りってのはどの世界も大変なのね」
『人のツガイに手を出すなんて出来ねえじゃんか。その辺の常識ぐらいはあんだよウチらも。……いや、それよりトウコどうすんだ?』
「どうするって?」
『いや、付き合うのかって話だよ』
「うーん……」
確かにケヴィンはイケメンだし真面目で優しい。仕事だって定職についてるし、良い人だと思う。ただお兄さん的立場みたいなもので、私自身もまだ恋愛や結婚とかそういうのを考えたことがないのだ。だってまだ一八歳だし、日本じゃ結婚してる人の方が少ないんだもの。正直現実味がない。
「……まあしばらく良く考えて答えを出すよ」
『いずれは自分の家族が欲しいとか結婚したいって言ってたから、てっきり喜ぶもんかと思ってたけどなあ。ケヴィンは良い奴だと思うけど』
「それは分かってるつもりだけど……でも条件が良いから結婚したいって、何か違う気がするんだよね。こう、ドキドキしたり胸が苦しくなったり……みたいな?」
『何だ病気か?』
「そうじゃなくて! 好きだあああ、みたいな熱い気持ちが大事だと思うのよ」
『……なるほど。俺たちが燻製をもらう時みたいな感じか』
「違う気がするけど。まあ気持ちが高揚する感じは一緒かな」
『ケヴィンはトウコにとって燻製ではない、ということなんだな』
「だから食べ物に例えるなっつーの」
『でも、いずれは燻製になるかもだしよ、付き合うってのやったら変わるかも知れねえぜ?』
「そうかも知れないけど……」
『まあそんなに深く考えないでさ、結婚するかどうかは別にして、一緒に遊んでみたりすりゃいいじゃん。ケヴィンだってまだトウコのこと良く分からないだろうし、トウコだってそうだろ? こっちで仲良し増やすのも大事じゃん』
「そうだねえ……いきなり先に結婚があると思うと尻込みしちゃうけど、友人以上恋人未満って感じならまだ何とか……」
『なら、そう正直に伝えりゃいいんだよ。手紙でも直接でもさ。俺たちの世界でも仲良くなれない奴はいるし、ケンカした後に妙に仲良くなる奴もいるしよ。色々知ることで変わることもあんだろ』
「──ナイトはやっぱり大人だねえ」
『大人だからな。けけけっ』
「そっか。大人ならおやつ要らないよね?」
『それはそれ、これはこれだろうが。ん? もしや何かくれる気になったか? 久々にマタタビクッキーくれても良いぞ?』
「……一枚あげるわ。相談料で」
『おー、言ってみるもんだな! またいつでも相談してくれよな』
尻尾を振りながらベッドから下りて、燻製やクッキーのしまってある棚の前で座るナイトに苦笑しながら、私もベッドを下りる。
私もこれから男性との付き合い方も学ばねばならないし、友人的な感じで接するのも良いのかも知れないなあ。
私はケヴィンさんに手紙で「結婚云々は抜きにして、まずはお友だちからということでお願いします」と返事をすることにした。
「ちょ、やだ違うよ! 結婚を見据えたお付き合いをしないかって言われただけだってば」
『ん? ……何が違うんだ? 付き合うなら結婚するってことだろ?』
私はナイトが戻って来るのを待ち、夕食を済ませるのを待ってから今日の出来事を相談した。
「いやいや、私まだ一八歳だよ? こっちにも来てそんなに経ってないし」
コンウェイ王国に来て数カ月で、年上のイケメンから結婚前提に付き合おうと言われるなんて誰が思うのよ。迷い人だろうと何だろうと、私はごくごく平凡な女なんだってば。しかも男性と付き合った経験なんてないのに。
『ふーん。俺らはそろそろサカリの時期とか来たりするけどさ、人間はないんだなサカリの時期って?』
「……まあ決まったサカリの時期がある訳でもないんだけどね。……え? ナイトってそろそろサカリの時期なの? 良い子がいるの?」
『んー、良い子っつうか、気の合う合わない関係なしにメスが寄ってくる時期だからなあ』
「ちょっとダメよ、やり逃げみたいなことをしたら! あちこちにナイトの子がいたりしたら困るわよ私。あんたの奥さんと子供たちは責任持って一緒に暮らすつもりだけど、そんなに愛人がいたら面倒見切れないってば」
『俺だって好みはあんだよ。……まあそれに仲間うちでは大体お相手が決まってっからさ、俺みたいな新参者はまだ見知らぬ誰かだと思うぜ?』
「そうか……新入りってのはどの世界も大変なのね」
『人のツガイに手を出すなんて出来ねえじゃんか。その辺の常識ぐらいはあんだよウチらも。……いや、それよりトウコどうすんだ?』
「どうするって?」
『いや、付き合うのかって話だよ』
「うーん……」
確かにケヴィンはイケメンだし真面目で優しい。仕事だって定職についてるし、良い人だと思う。ただお兄さん的立場みたいなもので、私自身もまだ恋愛や結婚とかそういうのを考えたことがないのだ。だってまだ一八歳だし、日本じゃ結婚してる人の方が少ないんだもの。正直現実味がない。
「……まあしばらく良く考えて答えを出すよ」
『いずれは自分の家族が欲しいとか結婚したいって言ってたから、てっきり喜ぶもんかと思ってたけどなあ。ケヴィンは良い奴だと思うけど』
「それは分かってるつもりだけど……でも条件が良いから結婚したいって、何か違う気がするんだよね。こう、ドキドキしたり胸が苦しくなったり……みたいな?」
『何だ病気か?』
「そうじゃなくて! 好きだあああ、みたいな熱い気持ちが大事だと思うのよ」
『……なるほど。俺たちが燻製をもらう時みたいな感じか』
「違う気がするけど。まあ気持ちが高揚する感じは一緒かな」
『ケヴィンはトウコにとって燻製ではない、ということなんだな』
「だから食べ物に例えるなっつーの」
『でも、いずれは燻製になるかもだしよ、付き合うってのやったら変わるかも知れねえぜ?』
「そうかも知れないけど……」
『まあそんなに深く考えないでさ、結婚するかどうかは別にして、一緒に遊んでみたりすりゃいいじゃん。ケヴィンだってまだトウコのこと良く分からないだろうし、トウコだってそうだろ? こっちで仲良し増やすのも大事じゃん』
「そうだねえ……いきなり先に結婚があると思うと尻込みしちゃうけど、友人以上恋人未満って感じならまだ何とか……」
『なら、そう正直に伝えりゃいいんだよ。手紙でも直接でもさ。俺たちの世界でも仲良くなれない奴はいるし、ケンカした後に妙に仲良くなる奴もいるしよ。色々知ることで変わることもあんだろ』
「──ナイトはやっぱり大人だねえ」
『大人だからな。けけけっ』
「そっか。大人ならおやつ要らないよね?」
『それはそれ、これはこれだろうが。ん? もしや何かくれる気になったか? 久々にマタタビクッキーくれても良いぞ?』
「……一枚あげるわ。相談料で」
『おー、言ってみるもんだな! またいつでも相談してくれよな』
尻尾を振りながらベッドから下りて、燻製やクッキーのしまってある棚の前で座るナイトに苦笑しながら、私もベッドを下りる。
私もこれから男性との付き合い方も学ばねばならないし、友人的な感じで接するのも良いのかも知れないなあ。
私はケヴィンさんに手紙で「結婚云々は抜きにして、まずはお友だちからということでお願いします」と返事をすることにした。
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