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「今日から皆さんにやって頂きたいことは【ネーム】になります」
私は黒板に大きく「ネームとは?」とチョークで書き込んだ。
「ここに学びに来ている生徒さんの中に、マンガを読んだことがない、という人はいないと思います。で、皆さんはマンガを読んで何が面白かったですか? 恐らくまずはストーリーですよね。ワクワクしたり、ハラハラしたり、スカッとしたり、理由は様々ですが、その物語に何かしら引き込まれるものを各自が感じたからです」
壇上から眺めると四十人ほどの生徒が思い思いに頷くのが見える。半年もやっていると、私も先生という仕事が楽しめるほどには余裕が出て来たようだ。以前は人に教えるなど考えたことすらないけれど。
──が、未だに同じ種族の人を完璧に見分けられてはいない。私もまだまだ修行中の身である。
「マンガにに大切なことは大きく三つです。絵とストーリーとキャラクター。細かく言えば他にもありますが、逆に言えばこの三つがあれば、皆さんが読んでいるようなマンガが描けます。そして、そのストーリーの下地になるのがネームというものになります。要はその物語のあらすじですね。どういう人物が出てきて、どういう展開になって、最後こうなる、という大まかな流れ、骨組みを示すものになります」
メモをしていた犬種の獣人であるリーガルが手を挙げた。
彼はビーグル犬のような珍しいたれ耳をした凛々しい男の子である。まあ見た目が少年、というだけで年齢は正直全く分からないのだが。
だってこっちの人みんな寿命長くて、未成年に思えても平気で百歳越えだったりするんだもん。怖くてもう年齢が聞けないっつうの。ひい爺さん以上の世代に偉そうに先生として教えていかないといけない、というのは教える側に遠慮が出てしまいがちなので、もう年齢とか全部無視することに決めた。踏み込みたい謎があってもなあなあにしておく、というのも案外大事なことなのである。
「リリコ先生、それじゃあ模写とペン入れはいったんお休みですか? 僕、自分の描いた絵が綺麗になる作業が大好きなんですが」
「そうですね。これからほんっとうに、それこそ嫌になるほど描けますのでいったんお休みです。模写はマンガの描き方の基本を学んで欲しかっただけで、これからはあなた自身の絵で描いていくことになりますからね」
私は紙を配った。
「それでは、これから皆さんには、配った紙に二十ページ程度に収まるようなお話を一つ考えて貰います。これは全て文章で書いて下さいね。恋愛もの、冒険もの、日常話、何でもいいです。自分もですが、出来ればほかの人が読んでも面白いだろう、楽しめるだろうと思うものを考えて提出して下さい。私が確認して、気になる部分を修正して貰ったり、辻褄が合わないところなんかを直してOKが出たらキャラクターを考え、それを元にざっくりとマンガのコマ割りなどの大まかな流れを決めて行きます。そして下描きしてペン入れし完成です。出来た作品はそれぞれ発表して、クラスで読み合うことにします。自分が考えた話を読まれるのは恥ずかしい、という気持ちは捨てて下さい。マンガというのは沢山の人が読むものです。そして、面白いかそうでないかは、自分一人が決めるものではありません。それぞれの意見を参考にこれからの作品作りに役立てましょうね。今後、皆さんも沢山の作品を読んで、どういう作品が自分には面白いと思うのか、自分が描きたいのか。作品の方向性を絞って行くのには、とにかく沢山の作品に触れる、というのが重要なんです」
はい、ではスタートして下さい、名前も書くの忘れないで下さいねー、と手を叩く。紙を手にすぐ書き始める人、悩む人。長身のため一番後ろの席に座っているクレイドを見ると、少し考えてカリカリと鉛筆を走らせていた。
私は隣の教室に向かい、ペン入れをしていた生徒たちの手を止めて同様に説明し、また紙を配る。
こちらも手を叩いてスタートさせると、集中の邪魔にならないように教員室兼資料室に向かい、紅茶を淹れる。教員室といっても私しかいないんだけど。慣れて来たとはいえ、先生業もプライベートな空間がないと緊張がほぐれないのだ。
紅茶をテーブルに置いたついでに、城下町で買ってからお気に入りになったボーロ風のふわふわした焼き菓子を引き出しから取り出して椅子に座る。ふう、と息をつくと紅茶を飲みシャクシャクとお菓子を食べながら、(どんな話が出て来るのか楽しみだなー)とウキウキしていた。
絵が上手いとか技術があるに越したことはないが、絵が上手いだけではマンガは描けない。
個人的主観だが、仕事をする前から感じていたのは、絵が綺麗でも話が面白くも何ともないマンガ家もいれば、絵はお世辞にも上手とは言い難いが、話が面白くて引き込まれるマンガ家もいる。勿論、絵も話も上手いマンガ家の方が多いしその方がいいに決まっているだろうが、どうあれ結局は『キャラクターが魅力的で話が面白い』のならば、技術は二の次なのだと思っている。描き続ければ黙ってても上達するのだ技術など。
キャラでも話でも、それを読者に伝えられる表現力さえあれば、極論だが例え棒人間のような絵しか描けなくても、そのマンガは名作になり得る。
イラストという一枚絵ならば、美麗であることは強力な武器だ。だが、ストーリーのあるマンガとして、登場するキャラクターが生き生きと動いてなければ作品としては二流三流なのである。魅力のあるキャラだからこそ共感もするし、愛着を持って応援したくなる。アニメやマンガ、特撮などキャラクターグッズなどが発売されるのも、愛着や共感がなければ成り立たない商売なのだから。
……まあ初心者にいきなりそんな高みを目指せというのは無理があるし、私とてそこそこの人気はあったが、アニメ展開までされるほどの人気作品が描けていたのかと言えばそうではない。あと五年十年先にはどうなっていたかは分からないが、死んだ時点で求めていた高みには程遠かったのは事実である。
しかしクレイドを含め、生徒たちが最低限ストーリーで起承転結を考えられるようになれば、マンガとして描くことによってコマ割りや話の進め方など表現力も向上し、個人の絵の個性も少しずつ出て来るだろう。模写はあくまで描くためのベースを作るためだけのもの。料理の基本を教えたようなもので、そこから先美味しく作れるかどうかは本人次第なのだ。
私には、なるべく無駄なルートを辿らずに、マンガを描けるようにする道筋を示唆することぐらいしか出来ない。絵の個性なんかは教えるものではないので、自身で感じて貰うしかないけれど。
さてここから何人ぐらいが大物になるかなあ。
私は教室に戻り、全員が書いたネームを回収すると、城に戻って早速一枚ずついそいそチェックを始める。
七人の竜の獣人から一枚ずつ鱗を集めると願いが叶うとか、コックとして料理を極めるために対決をしていくとか、世界最強になるため地下闘技場で試合をする、みたいな明らかに有名どころからパクッて来たようなネタも散見されたが、中にはおっ、と思うほのぼの日常系の話やバディーものなどオリジナル要素の強いネームもある。最初は読んだマンガと似たような話が多くなるのはしょうがない。面白いと思った作品に全く影響を受けない方が少ないものだ。
一枚一枚にメモ帳で気になるところや褒める点など書いて、修正案のアドバイスを書き込んでいると、クレイドのネームが出て来た。
どれどれ、と読んでみると、異世界にやってきた男が特殊な力を得て、国の平和に尽力することになるという、最近のファンタジーの王道路線だった。縛りのあるチートで無尽蔵に使えない、というのも万能主人公感がなくて私の好みである。話も粗いが引き込まれるものがある。
(だてにマンガを読み耽っていた訳じゃないんだねえ)
正直、魔王の仕事というのもいつやっているのかと思うほど、クレイドは週五日欠かすことなく授業に現れるし、帰ってからも机に向かって模写してたり、「リリコ、こんな話はどうだろうか」と紙にびっしり書き込まれたネームを持って説明しに来る。この国にマンガを広めようとしていることがひしひしと伝わって来て、私も頑張らねばと気持ちを新たにさせられる。
ただ時々、机に突っ伏して力尽きたように寝ている姿も目撃していた。
そりゃあ睡眠時間を削らねばあの処理量は保てまい。
頑張るのはいいが、無理を重ねて私のようにポックリ逝かれても困るからと訴え、睡眠時間はちゃんと取ること、栄養も摂ることを約束させた。
さて、ネームの修正が終わったらいよいよキャラ設定だ。
これについては私が出来ることはほぼない。
生徒たちよ、一番大変だと思うが、気合入れて魅力的なキャラを作ってくれたまえ。
ワシが育てた、とか偉そうに言ってみたいものですねえ、うん。……ああいけない、これもマンガの影響だわ。私も毒素が大分回っているようだ。
私は黒板に大きく「ネームとは?」とチョークで書き込んだ。
「ここに学びに来ている生徒さんの中に、マンガを読んだことがない、という人はいないと思います。で、皆さんはマンガを読んで何が面白かったですか? 恐らくまずはストーリーですよね。ワクワクしたり、ハラハラしたり、スカッとしたり、理由は様々ですが、その物語に何かしら引き込まれるものを各自が感じたからです」
壇上から眺めると四十人ほどの生徒が思い思いに頷くのが見える。半年もやっていると、私も先生という仕事が楽しめるほどには余裕が出て来たようだ。以前は人に教えるなど考えたことすらないけれど。
──が、未だに同じ種族の人を完璧に見分けられてはいない。私もまだまだ修行中の身である。
「マンガにに大切なことは大きく三つです。絵とストーリーとキャラクター。細かく言えば他にもありますが、逆に言えばこの三つがあれば、皆さんが読んでいるようなマンガが描けます。そして、そのストーリーの下地になるのがネームというものになります。要はその物語のあらすじですね。どういう人物が出てきて、どういう展開になって、最後こうなる、という大まかな流れ、骨組みを示すものになります」
メモをしていた犬種の獣人であるリーガルが手を挙げた。
彼はビーグル犬のような珍しいたれ耳をした凛々しい男の子である。まあ見た目が少年、というだけで年齢は正直全く分からないのだが。
だってこっちの人みんな寿命長くて、未成年に思えても平気で百歳越えだったりするんだもん。怖くてもう年齢が聞けないっつうの。ひい爺さん以上の世代に偉そうに先生として教えていかないといけない、というのは教える側に遠慮が出てしまいがちなので、もう年齢とか全部無視することに決めた。踏み込みたい謎があってもなあなあにしておく、というのも案外大事なことなのである。
「リリコ先生、それじゃあ模写とペン入れはいったんお休みですか? 僕、自分の描いた絵が綺麗になる作業が大好きなんですが」
「そうですね。これからほんっとうに、それこそ嫌になるほど描けますのでいったんお休みです。模写はマンガの描き方の基本を学んで欲しかっただけで、これからはあなた自身の絵で描いていくことになりますからね」
私は紙を配った。
「それでは、これから皆さんには、配った紙に二十ページ程度に収まるようなお話を一つ考えて貰います。これは全て文章で書いて下さいね。恋愛もの、冒険もの、日常話、何でもいいです。自分もですが、出来ればほかの人が読んでも面白いだろう、楽しめるだろうと思うものを考えて提出して下さい。私が確認して、気になる部分を修正して貰ったり、辻褄が合わないところなんかを直してOKが出たらキャラクターを考え、それを元にざっくりとマンガのコマ割りなどの大まかな流れを決めて行きます。そして下描きしてペン入れし完成です。出来た作品はそれぞれ発表して、クラスで読み合うことにします。自分が考えた話を読まれるのは恥ずかしい、という気持ちは捨てて下さい。マンガというのは沢山の人が読むものです。そして、面白いかそうでないかは、自分一人が決めるものではありません。それぞれの意見を参考にこれからの作品作りに役立てましょうね。今後、皆さんも沢山の作品を読んで、どういう作品が自分には面白いと思うのか、自分が描きたいのか。作品の方向性を絞って行くのには、とにかく沢山の作品に触れる、というのが重要なんです」
はい、ではスタートして下さい、名前も書くの忘れないで下さいねー、と手を叩く。紙を手にすぐ書き始める人、悩む人。長身のため一番後ろの席に座っているクレイドを見ると、少し考えてカリカリと鉛筆を走らせていた。
私は隣の教室に向かい、ペン入れをしていた生徒たちの手を止めて同様に説明し、また紙を配る。
こちらも手を叩いてスタートさせると、集中の邪魔にならないように教員室兼資料室に向かい、紅茶を淹れる。教員室といっても私しかいないんだけど。慣れて来たとはいえ、先生業もプライベートな空間がないと緊張がほぐれないのだ。
紅茶をテーブルに置いたついでに、城下町で買ってからお気に入りになったボーロ風のふわふわした焼き菓子を引き出しから取り出して椅子に座る。ふう、と息をつくと紅茶を飲みシャクシャクとお菓子を食べながら、(どんな話が出て来るのか楽しみだなー)とウキウキしていた。
絵が上手いとか技術があるに越したことはないが、絵が上手いだけではマンガは描けない。
個人的主観だが、仕事をする前から感じていたのは、絵が綺麗でも話が面白くも何ともないマンガ家もいれば、絵はお世辞にも上手とは言い難いが、話が面白くて引き込まれるマンガ家もいる。勿論、絵も話も上手いマンガ家の方が多いしその方がいいに決まっているだろうが、どうあれ結局は『キャラクターが魅力的で話が面白い』のならば、技術は二の次なのだと思っている。描き続ければ黙ってても上達するのだ技術など。
キャラでも話でも、それを読者に伝えられる表現力さえあれば、極論だが例え棒人間のような絵しか描けなくても、そのマンガは名作になり得る。
イラストという一枚絵ならば、美麗であることは強力な武器だ。だが、ストーリーのあるマンガとして、登場するキャラクターが生き生きと動いてなければ作品としては二流三流なのである。魅力のあるキャラだからこそ共感もするし、愛着を持って応援したくなる。アニメやマンガ、特撮などキャラクターグッズなどが発売されるのも、愛着や共感がなければ成り立たない商売なのだから。
……まあ初心者にいきなりそんな高みを目指せというのは無理があるし、私とてそこそこの人気はあったが、アニメ展開までされるほどの人気作品が描けていたのかと言えばそうではない。あと五年十年先にはどうなっていたかは分からないが、死んだ時点で求めていた高みには程遠かったのは事実である。
しかしクレイドを含め、生徒たちが最低限ストーリーで起承転結を考えられるようになれば、マンガとして描くことによってコマ割りや話の進め方など表現力も向上し、個人の絵の個性も少しずつ出て来るだろう。模写はあくまで描くためのベースを作るためだけのもの。料理の基本を教えたようなもので、そこから先美味しく作れるかどうかは本人次第なのだ。
私には、なるべく無駄なルートを辿らずに、マンガを描けるようにする道筋を示唆することぐらいしか出来ない。絵の個性なんかは教えるものではないので、自身で感じて貰うしかないけれど。
さてここから何人ぐらいが大物になるかなあ。
私は教室に戻り、全員が書いたネームを回収すると、城に戻って早速一枚ずついそいそチェックを始める。
七人の竜の獣人から一枚ずつ鱗を集めると願いが叶うとか、コックとして料理を極めるために対決をしていくとか、世界最強になるため地下闘技場で試合をする、みたいな明らかに有名どころからパクッて来たようなネタも散見されたが、中にはおっ、と思うほのぼの日常系の話やバディーものなどオリジナル要素の強いネームもある。最初は読んだマンガと似たような話が多くなるのはしょうがない。面白いと思った作品に全く影響を受けない方が少ないものだ。
一枚一枚にメモ帳で気になるところや褒める点など書いて、修正案のアドバイスを書き込んでいると、クレイドのネームが出て来た。
どれどれ、と読んでみると、異世界にやってきた男が特殊な力を得て、国の平和に尽力することになるという、最近のファンタジーの王道路線だった。縛りのあるチートで無尽蔵に使えない、というのも万能主人公感がなくて私の好みである。話も粗いが引き込まれるものがある。
(だてにマンガを読み耽っていた訳じゃないんだねえ)
正直、魔王の仕事というのもいつやっているのかと思うほど、クレイドは週五日欠かすことなく授業に現れるし、帰ってからも机に向かって模写してたり、「リリコ、こんな話はどうだろうか」と紙にびっしり書き込まれたネームを持って説明しに来る。この国にマンガを広めようとしていることがひしひしと伝わって来て、私も頑張らねばと気持ちを新たにさせられる。
ただ時々、机に突っ伏して力尽きたように寝ている姿も目撃していた。
そりゃあ睡眠時間を削らねばあの処理量は保てまい。
頑張るのはいいが、無理を重ねて私のようにポックリ逝かれても困るからと訴え、睡眠時間はちゃんと取ること、栄養も摂ることを約束させた。
さて、ネームの修正が終わったらいよいよキャラ設定だ。
これについては私が出来ることはほぼない。
生徒たちよ、一番大変だと思うが、気合入れて魅力的なキャラを作ってくれたまえ。
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