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新年とお祭りと
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クリスマスなんて洒落たイベントはないが、モルダラ王国ではニューイヤー休暇として基本的に年始の三日間ぐらいは休みのところが多い。これは店や仕事によって異なる。
エドヤもホワイト企業を目指しているので、年末五日、年始五日の十日間はお休みにした。
完成披露パーティーは元から週末で休みなので、十一日の連続休みだ。
ナターリアはそんなに休みは要らないと言うし、ヒラリーもうちの子たちの食事や掃除も休みは関係ないだろうと逆に物言いが入った。
休みを増やして文句を言われるのは理不尽だが、休みにも理由があるのだ。
食い倒れフェスティバルの打ち合わせもあるし、モリーやジェイミーもホラールに滞在出来る日数が限られているので店にまで手が回らないんだよ。
仕事がなければ俺がうちの子たちの面倒は見ていたので、食事も掃除も困らない。
そしてジェイミーソースを届けるついでにパーティーに参加するだけの予定だったモリーとジェイミーは、食い倒れフェスティバルにとても興味を示した。
パーティー翌日、年末年始休みの初日のこと。
ジェイミーが朝食の丸パンにバターを塗って食べながら、
「ねえオンダさん、それって参加費を払えば僕らも参加出来るってことですか?」
と尋ねてきた。
「まあホラール町民のみじゃないので、参加するのは問題ないと思いますが」
あくまでもホラール町でやる祭りってだけの話だ。
初めての祭りだし、知名度がないからそもそも他の町からの参加を想定してないだけで。
「母さん、せっかくだし第一回の食い倒れフェスティバル、僕らも参加しない?」
「レストランエドヤとして、ってこと?」
「そう。一カ月近くあれば準備期間としては十分でしょう? まあサッペンスの店は祭りの二日間は閉めることになっちゃうけど、商売は順調過ぎるぐらいだし別にいいじゃない?」
かなりの人見知りで、イケメンのくせに身内や知り合い以外とはろくに会話も出来なかったジェイミーだったが、レストランエドヤを初めてから少しずつ外向的になっているようだ。
レストランの客で人馴れしたためか、パーティーの時もプール風呂の時も少し大人しい程度で、初対面のアーネストやベントス兄弟、ザックとも普通に話をしていたしな。
相変わらず若い女性には緊張気味で言葉少なだけど、身内にはナターリアとヒラリーしか今はいないし、二人ともお喋りな人じゃない。
ともかく最初から考えたらものすごい進歩なのである。
「ジェイミーがやる気になってくれてるのは嬉しいし、私も協力したいけど、一体何を出すつもりなの? アマンダのところだってテイクアウトやるんでしょう?」
モリーが驚きつつも笑顔で応える。
「考えたんだけどね、エドヤではジェイミーソースの宣伝で串揚げやるでしょう? それなら僕はショーユとモリーソースじゃないかって」
冬だから出来る、漬けマグロと漬けサーモンの寿司はどうかと思っているとのこと。
確かにジェイミーたちにもご馳走したっけ。あれ生より少しは保存効くし、めちゃくちゃ気に入ってたんだよなジェイミー。
「お祭りってことで、珍しいのを食べたいって人だっていると思うんだ。祭りの直前にルルガに仕入れに行って漬けにして、寿司を八個とか十個とかで容器に入れて売るの」
「ああ、漬けならいいかもしれませんね。握り方ぐらいは私が簡単に教えられますし」
「ですよね? オンダさんの国の寿司なんてこの辺の人はまず知らないだろうし、悪くないと思うんだ。それで母さんは野菜をたっぷり入れたミソスープを売る。どう?」
「寒い時期だから温かい飲み物はいいわね! ミソも宣伝出来るし、コーヒーとかのカップに入れたら飲みながら歩けるし」
うむうむ。ちょっと祭りの売り物とは異なる気がするけど、調味料の宣伝にもってこいだ。
んー、だけどジェイミーがルルガに行くとなると、ルルガのモーガンとフィルのバッカス兄弟に会うついでに俺も行くかな。
ルルガにも定期的に注文は受けて運んではいるが、ホラールほどは売れていない。
やはり調味料を使った料理を扱っているレストランエドヤの店がないのは痛い。
彼らのところもサッペンスよりはホラールに近いので、誘ったら気軽に参加してくれそうだ。
店の相談もしてみたいところだ。
善は急げと弟のバッカス商会に電話をすると、明日は兄も時間が取れるということで、ジェイミーと一緒にルルガへ向かうことにした。
モリーは祭りの参加手続きとうちの子たちの食事だけお願いした。
「任せて。アマンダとジルにホラールの町の案内もしてもらうことになってるし、そのついでに参加手続きもしておくわ。それで、午後からみんなでプール風呂に入ってもいいかしら? 友だちと広いお風呂って最高に気持ちいいわよね」
「どうぞどうぞ。私たちも日帰りの予定なので夜には戻りますから」
友人たちはお風呂の良さを実感してくれるので嬉しい限りだ。
女性は始めこそ裸を見られるなんて、と気恥ずかしかったみたいだけど、
「慣れたら何てことないね」
とジルも笑っていた。
ジェイミーと馴染みのレンタル馬車を借りに行き、プレゼンもするのでジェイミーソースを積んだりと忙しい。
モリーの家の馬車で行っても良かったが、重たい荷物で長時間走って疲れているだろうし、うちの庭の牧草を食べまくって欲しいので今回はお休みである。
年末年始は忙しくなるけど、商人なので致し方ない。
皆様が休んでいる時にもしっかり働かねば。
エドヤもホワイト企業を目指しているので、年末五日、年始五日の十日間はお休みにした。
完成披露パーティーは元から週末で休みなので、十一日の連続休みだ。
ナターリアはそんなに休みは要らないと言うし、ヒラリーもうちの子たちの食事や掃除も休みは関係ないだろうと逆に物言いが入った。
休みを増やして文句を言われるのは理不尽だが、休みにも理由があるのだ。
食い倒れフェスティバルの打ち合わせもあるし、モリーやジェイミーもホラールに滞在出来る日数が限られているので店にまで手が回らないんだよ。
仕事がなければ俺がうちの子たちの面倒は見ていたので、食事も掃除も困らない。
そしてジェイミーソースを届けるついでにパーティーに参加するだけの予定だったモリーとジェイミーは、食い倒れフェスティバルにとても興味を示した。
パーティー翌日、年末年始休みの初日のこと。
ジェイミーが朝食の丸パンにバターを塗って食べながら、
「ねえオンダさん、それって参加費を払えば僕らも参加出来るってことですか?」
と尋ねてきた。
「まあホラール町民のみじゃないので、参加するのは問題ないと思いますが」
あくまでもホラール町でやる祭りってだけの話だ。
初めての祭りだし、知名度がないからそもそも他の町からの参加を想定してないだけで。
「母さん、せっかくだし第一回の食い倒れフェスティバル、僕らも参加しない?」
「レストランエドヤとして、ってこと?」
「そう。一カ月近くあれば準備期間としては十分でしょう? まあサッペンスの店は祭りの二日間は閉めることになっちゃうけど、商売は順調過ぎるぐらいだし別にいいじゃない?」
かなりの人見知りで、イケメンのくせに身内や知り合い以外とはろくに会話も出来なかったジェイミーだったが、レストランエドヤを初めてから少しずつ外向的になっているようだ。
レストランの客で人馴れしたためか、パーティーの時もプール風呂の時も少し大人しい程度で、初対面のアーネストやベントス兄弟、ザックとも普通に話をしていたしな。
相変わらず若い女性には緊張気味で言葉少なだけど、身内にはナターリアとヒラリーしか今はいないし、二人ともお喋りな人じゃない。
ともかく最初から考えたらものすごい進歩なのである。
「ジェイミーがやる気になってくれてるのは嬉しいし、私も協力したいけど、一体何を出すつもりなの? アマンダのところだってテイクアウトやるんでしょう?」
モリーが驚きつつも笑顔で応える。
「考えたんだけどね、エドヤではジェイミーソースの宣伝で串揚げやるでしょう? それなら僕はショーユとモリーソースじゃないかって」
冬だから出来る、漬けマグロと漬けサーモンの寿司はどうかと思っているとのこと。
確かにジェイミーたちにもご馳走したっけ。あれ生より少しは保存効くし、めちゃくちゃ気に入ってたんだよなジェイミー。
「お祭りってことで、珍しいのを食べたいって人だっていると思うんだ。祭りの直前にルルガに仕入れに行って漬けにして、寿司を八個とか十個とかで容器に入れて売るの」
「ああ、漬けならいいかもしれませんね。握り方ぐらいは私が簡単に教えられますし」
「ですよね? オンダさんの国の寿司なんてこの辺の人はまず知らないだろうし、悪くないと思うんだ。それで母さんは野菜をたっぷり入れたミソスープを売る。どう?」
「寒い時期だから温かい飲み物はいいわね! ミソも宣伝出来るし、コーヒーとかのカップに入れたら飲みながら歩けるし」
うむうむ。ちょっと祭りの売り物とは異なる気がするけど、調味料の宣伝にもってこいだ。
んー、だけどジェイミーがルルガに行くとなると、ルルガのモーガンとフィルのバッカス兄弟に会うついでに俺も行くかな。
ルルガにも定期的に注文は受けて運んではいるが、ホラールほどは売れていない。
やはり調味料を使った料理を扱っているレストランエドヤの店がないのは痛い。
彼らのところもサッペンスよりはホラールに近いので、誘ったら気軽に参加してくれそうだ。
店の相談もしてみたいところだ。
善は急げと弟のバッカス商会に電話をすると、明日は兄も時間が取れるということで、ジェイミーと一緒にルルガへ向かうことにした。
モリーは祭りの参加手続きとうちの子たちの食事だけお願いした。
「任せて。アマンダとジルにホラールの町の案内もしてもらうことになってるし、そのついでに参加手続きもしておくわ。それで、午後からみんなでプール風呂に入ってもいいかしら? 友だちと広いお風呂って最高に気持ちいいわよね」
「どうぞどうぞ。私たちも日帰りの予定なので夜には戻りますから」
友人たちはお風呂の良さを実感してくれるので嬉しい限りだ。
女性は始めこそ裸を見られるなんて、と気恥ずかしかったみたいだけど、
「慣れたら何てことないね」
とジルも笑っていた。
ジェイミーと馴染みのレンタル馬車を借りに行き、プレゼンもするのでジェイミーソースを積んだりと忙しい。
モリーの家の馬車で行っても良かったが、重たい荷物で長時間走って疲れているだろうし、うちの庭の牧草を食べまくって欲しいので今回はお休みである。
年末年始は忙しくなるけど、商人なので致し方ない。
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